第五十八話「ホームを取り戻せ!」
「よし、上手い具合にいってるな!」
ミーシャ以下、脱出組は軍港に向かっていた。
今回の騒動は
ミーシャ達、戦艦乗員組+α
軍港に拿捕されている帆船奪還組
船を撃沈され弔い合戦を希望した特攻組
の3組に分かれている。
今、ミーシャ達は帆船奪還に動いていた。
「な、なんですかアレぇ!?」
妖怪を見るのが始めてなラビーは涙目になりながら走っている。
「ミーシャ! 魔力は大丈夫か!?」
マシリーは妖怪達の召喚で常に魔力を消費し続けるミーシャを気遣う。
帆船を奪還したとしてもかなりの人数が船に乗り切らない。
ゆえにミーシャは、このウェンズレイポートで新たに一隻の軍艦と操艦するヨモツイクサ達を召喚しなければならない。
幸いに大和型の召喚で魔力を消費した為、魔力の総量がかなり増えている。
「まだ、大丈夫だ。脱出を考えると持って、あと一時間だが……」
「一時間あれば十分じゃ!」
「軍港の入り口が見えたぞ!」
「なんだありゃあ!?」
何人かの叫び声にミーシャは軍港を見た。
「あーあー、えらいこっちゃー」
軍港は……。
『がしゃどくろ』が大暴れでした。
「なんだこいつは!?」
「スケルトンの上位種か!?」
「ダンジョンのボスクラスが可愛く見えるぞ!?」
「アンデッドだ! 気をつけろ!」
軍港の兵隊がなんとか応戦しているが、こちらまで相手をしている余裕はなさそうだ。
「皆、好機だ! 船まで走れェ!!」
ミーシャが指示を出す。
「おい! 侵入者だ!!」
「それどころじゃねーぞ!?」
「応戦しろ!」
「艦隊を出せぇ!」
軍港は阿鼻叫喚の地獄絵図であった。
「ええい! 退けぇ! 叩き潰されたいかぁ!!」
先頭を一騎掛けするマシリーが吸血鬼の速度と腕力で軍港入り口のバリケードを粉砕する。
まさに『粉砕』である。
数十人の兵士が宙を舞い、海に落ちた。
「俺は魔力を使えない! 各々頼む!」
「任しな! 全員続けぇ!」
メアリは威勢よく軍港に突撃する。
「くそ! 行かせるか!」
「邪魔だぁ! 飲み込め! 『ウォータークラッシュ』!」
メアリが短く呪文を唱えると、海から巨大な水の塊が飛来し、行く手を阻む兵士達を飲み込んだ。
「おお! 戦闘魔法!!」
ミーシャが1人テンションを上げていると。
「唸れェ! 『ソニックブーム』!」
他の船の船長が拳を振り抜く、すると衝撃波が発生し数人の兵士を吹き飛ばした。
「わわっ!? こ、こっち来ないで下さい! 『ウォーターボール』!」
ラビーもウォーターボールで応戦している。
つか、魔法使えたのか、おまえ。
「このガキぃ!」
すると1人の兵士がミーシャに斬りかかった。
ミーシャはそれを難なく回避する。
「なら、俺もかっこいいとこ見せましょう!?」
ミーシャはそう言うと。
「ソニッブーム! ソニッブーム! サマソッ!(サマーソルトキック)」
ボゴっ! ボゴっ! バキィッ!
「……か、っぺっ!?」
ミーシャの反撃を予想だにしなかった兵士はもんどり打って転がった。
「とっとと くにへ かえるんだな! (ドヤッ!」
なんて事をやってるうちに幾つかの船は奪還出来たようだ。
「風はあるが……風魔法使いは手伝ってくれ! 帆に風を送るんだ! 湾を出て逃げ切るまで頑張ってくれ!」
「よし! もやいを解け! 急いで出航準備をしろ!」
「怪我人と非戦闘員から早く乗せろ!」
「ミーシャ! 我らも!」
「よし! 出ろォ! 揚陸艦『神州丸』ゥ!」
ミーシャが叫ぶと湾の中心に大日本帝国陸軍所属の揚陸艦『神州丸』が出現した。
その煙突からは黒煙が上がりいつでも出航できることがわかる。
揚陸艦兼空母『神州丸』
大日本帝国陸軍所属
排水量:7100トン
全長:144メートル
全幅:22メートル
いきなり7000トン級の船舶が出現し出航準備にかかった船員達も軍港の兵隊達も驚いている。
「皆、早くボートに乗り込め! 頼むぞ『ヨモツイクサ』!」
ミーシャはそう叫ぶと何隻かの大発動機艇と動機艇を操縦するヨモツイクサが出現した。
ヨモツイクサ達はミーシャの言葉に頷き、船員達を乗せて神州丸に出発する。
「あの小船を行かせるな!」
「沈めろ!」
既に出航していた軍艦が動機艇を狙って魔法を放とうとする。
すると。
「な、なんだ!?」
「海の中から何か来るぞ!」
いきなり海面が盛り上がる。
そこには、人型の何かが居た。
海坊主という妖怪だ。
「今度は海から化け物が出たぞ!」
「回避ー!」
「うわぁー!」
海坊主は何をするでもなくそこに立って居たが、軍艦は回避しきれず衝突、あっさりと転覆した。
拿捕されていた帆船もほとんど出航し湾の入り口に向かっている。
ウェンズレイポートの街も特攻組の活躍と妖怪達のおかげで今だ混乱の中にある。
しかし、各所では憲兵達も冷静さを取り戻し、冒険者ギルドも解決に乗り出したのか妖怪達が少しずつ減っていた。
急いで脱出しなければまだまだ危険である。




