第四十四話「水兵はあの世から」
超大和型戦艦とは。
第二次世界大戦時に大日本帝国海軍が計画していた戦艦大和の強化型戦艦の名称。
大和型、改大和型、超大和型が計画されていたが大和型は大和、武蔵、信濃の3隻で建造が終了。大和型111号艦、改大和型797号艦、超大和型798号艦、799号艦は戦況の悪化、対艦戦闘から対空戦闘への移り変わりなどの要因によって中止され日の目を見ることなく闇へと消えた。
計画通りに進めば1946年に改大和型が1947年に超大和型が竣工されていたと言われる。
ちなみにミーシャがヴィーナへの対抗心で計画段階で消滅した戦艦を魔力と想像力で強制召喚したため所々バグが発生している。
「ほんまに、どないなっとんねん……」
ヴィーナ達魔王軍とゴットン・ニャル・ニッキーそしてミーシャは超大和型戦艦の甲板上に立っていた。
千人を超える魔王軍の全員を整列させてもまだ有り余るその甲板の広さに全員が口をポカンと開けて唖然としている。
「これ、ほんまに船かいな……」
その問いに答える者はいない。
召喚した本人であるミーシャはゴットンの背中で今だ気を失っている。
「ふはっはっはっは! 流石は魔王であるな、これほどの物とは」
「いや、わろてる場合ちゃうで! これが船やったらどないして動かすんや!? 帆もなければオールでなんてとても動かせたもんやないんやで?」
「魔導機関が推進力だとしても、このクラスを動かそうとすれば数千人、いや、数万人の魔導士が居るわよ〜」
ニッキーもあちこちキョロキョロと落ち着かない様子だ。
「いやはや、まったくもってお見事で御座いますな。 しかしこの筒は一体何なのでしょうか」
そう言ってゴーザスは45口径51cm砲を指差している。
「ガッハッハ! なにやら大砲の様に見えるが?」
「その通り、そいつは砲塔だよ」
「お嬢? もう少し休んでいても……」
「大丈夫だ、ゴットン下ろしてくれ。 ふぅ、まだクラクラする」
ミーシャは目を覚ましゴットンの背中から甲板に降り立った。
「お? 話題の魔王様が復活か? さて、色々と説明してもらおやないか」
「……であるな、この『超大和型戦艦』とやらはなんなのか、これを召喚した能力は一体なんなのか」
ヴィーナとマシリーが詰め寄ってくる。
「ま、まぁ待て、落ち着け。……師匠やゴットンにも言ってなかったんだが、俺は魔力を使って幻想を具現化する能力がある」
「幻想? 何だソレは?」
「まぁ、イメージとか空想とかを形にする力だと思ってくれればいいさ」
首をかしげるマシリーにそう声をかけてからミーシャは続ける。
「そして、この『超大和型戦艦』についてなんだが……」
そこでミーシャは言葉を詰まらせる。
まさか「この戦艦は前世で忘れ去られた兵器です」などとは言えない、言ったとしても理解してもらえない。
「つまり、コレはお嬢が考えたわけか!!」
何故かゴットンは一人で勝手に納得していた。
「ふっはっはっはっは! 流石は魔王様であるな! それほどの能力の持ち主だったとは!」
それに釣られてマシリーも納得しだす。
ざわ……ざわ……
マシリーが納得してしまったが為に配下の魔族達もとりあえず納得し出す。
「ちょ!? マシリン!? 魔王って、コイツの事認めるんか!?」
マシリーの言葉に驚愕の声を挙げたのはヴィーナであった。
ざわ……ざわ……
ざわ……ざわ……
その言葉にざわめきがさらに広がる。
「うむ! これほどの魔力、そして能力。認めざるを得まい!」
マシリーは小さな胸を張ってそう宣言した。
「おーい、なんか盛り上がってる所悪いんだが。続けていいか?」
「うぬ? そうであったな」
ミーシャの一言にざわめきは一時的に収束を見せた。
「ゴホン! で、この戦艦の説明なんだが。まずこの船を動かすのに最低でも千五百人くらいの人数が欲しい」
「千五百人!? たったの!?」
ニッキーが驚きの声をあげた。
それもそのはずで、この世界には帆船しか存在しない。
そして、その帆船でも一般的なキャラック船(コレは前世での名称と同じである)は全長41m・全幅7.1m・排水量1124tで大体600名前後の乗組員が必要になる(ただし、船員と兵員を合わせた数である)。
ちなみに、この『超大和型戦艦』のスペックとキャラック船の比較は以下の通り。
超大和型/キャラック
全長263m/41m 全幅38.9m/7.1 排水量64000t/1124t
全長は約6.5倍、全幅は約5.5倍、排水量に至っては約57倍にもなる。(超大和型戦艦は搭載兵器などに違いがありますが大きさ自体は大和と同じです)
その化け物の様な船がキャラック三隻分位の人数で運用できるのである、ニッキーが驚きの声を上げるのも無理はない。
「言っておくけど、最低でもだからな? 航行だけに限っての話で戦闘員は含めてないからな? 戦闘員を含めるなら二千、いや三千人は欲しい」
「それでも少ないわよ」
「せやけどうちら航海のコの字も知らん素人ばっかり千人足らずやで?」
「それについては俺が使い魔を使って代用する。『ヨモツイクサ』!!」
ミーシャが手を振り上げると黒いモヤが集まり人型の何かを形成しだした。
前世で言うところの黄泉軍、ヨモツイクサである。
「こいつらには操艦、戦闘技術などをインプットしてある。ただ、召喚中は魔力を消費し続けるから千五百人連続召喚で八時間程度、俺が意識を失ったり、寝ているときは消えてしまうから日中だけの航海になっちまう」
「ふむ、まさか使い魔の召喚までできるとは……」
マシリーはさらに希望に満ちた眼差しでこちらを見ていた。
「どっちにしても外洋に出るなら海を知ってる人物を雇う必要がある、どっかの街で何人かヘットハンティングする必要があるな」
ミーシャがそう言った時だった。
海面を眺めていた双子がきゃいきゃい言いながら走り寄ってくる。
「「ねーねー、なんか人みたいなのが浮かんでるよ〜?」」
「「「「は?」」」」
ヨモツイクサとは。
日本神話において、黄泉から逃げたイザナギにイザナミが放った1500体の追っ手達。
黄泉に住む鬼たちで黄泉軍、又は黄泉戦と書かれる。
部隊長クラスにヨモツシコメ(黄泉醜女)が居るとか。




