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第十六話「旅立ちの朝に」


「・・・家を出る・・・と?」


 ミーシャの育ての親であるクリフ・ラダッドは目を閉じただ一言呟いた。

 ラダッド家の食卓には父であるクリフ、母であるトリシャ、メイドのジュリーと雑用のヘンリーが座っている。

 ミラー家から帰宅し食事を済ませたミーシャは今後の事について話し合いを行っているのだ。


「はい、来るべきヘンベルボック入学までに家を離れ、師を見つけ準備をしたいと思います」


 二年前にヘンベルボックの教師「ガーデルマン」から入学に関する手紙は届いている。


「師を取るなら家庭教師でも良いのではないか?」


 ラダッド家は孤児院を私設する程に財産がある、ミーシャの為に家庭教師を取ることなど造作もない事だ。

 しかし、ミーシャは首を横に振り提案を拒否する。


「父様、それではダメです。私は世間を知らなすぎる。世界はこの目で見て、耳で聞いて、手で触れてこそ真に意味がある、意味が見いだせると言うものです。例え師を招こうとも私は井の中の蛙になってしまいます」


 ミーシャにとって家を出る事は予定通りの事である。

 もとより入学までに準備をする事も魔力制御のために弟子入りする事も全てガーデルマンの手紙に書かれていた指示でもある。


 ミーシャの魔力は異常値を示している。

 本来空気中の魔力を吸収して育つグリーンスネークが今のオロチの全長50メートルに成長するまでかかる年数は約100年は掛かると言われている。オロチはミーシャの莫大な魔力を吸収する事によってたったの数年で100年分の成長を遂げたと言える。


 もしミーシャの魔力が何らかの原因で爆発した場合、最悪王国が消滅しかねない。

 その最悪の状態を回避するためには、ミーシャに魔力の適切な制御・管理の方法を学ばせる事、さらに精神を鍛え上げる事が必要になる。

 その為のヘンベルボック入学であり、入学前の準備段階としての弟子入りなのである。


「ガーデルマン先生からのお手紙は見ていただけたと思います。私は明日にでもアーコードへと向かい先生のご紹介してくだっさた方の下で修行に励みたいと思います」


 ライシス伯爵領最大の中継都市「アーコード」はフィリス村からやや東北東よりに位置する都市である。

 かなり距離は離れているが極端に通行に不便な道ではないので馬で1週間もあれば到達できる位置にある、ただし歩いていくとなると2週間以上の長い道のりとなる。


「・・・口で言っても聞きはすまい・・・随分と頑固に育ったものだ」


「フフフ、貴方に似たのではありませんか?」


 トリシャはクリフの言葉に静かに微笑む。

 クリフは少し楽しそうに小さく笑った。


「ガーデルマンからは聞いている、お前が日々鍛錬を積んでいた事も、魔力の事も・・・。ちょうどいい機会だ、一部ではあるがこの国を見てくるがいい」


「旦那様!?」


 今まで沈黙を保っていたジュリーが口を開ける。

 7歳の娘を一人で旅立たせるなぞ危険極まりない行為だ。


「よい!・・・ミーシャは儂の子じゃ、この程度試練の内には含まれんわ!儂からは一切の助けは出さんぞ?良いなミーシャ」


 その覚悟を試す様な言葉にミーシャは力強く頷いた。

 そしてもう一つの目的を果たすために口を開く。


「ちょうどいい機会です・・・父様、母様、私の出生について本当の事を話して頂けませんか?」


「「・・・・・・」」


 ミーシャの問いかけにクリフは静かに目をつぶり、トリシャは顔を伏せる。ジュリーは驚きで顔が引きつっているし、ヘンリーはそわそわして落ち着きがない。


「やはり、気づいておったか・・・・・・トリシャ」


 呼ばれたトリシャはゆっくりと席を立ち上座であるクリフの後ろに飾られている壷をどかす。

 そこには小さな箱が隠されていた。


「これはね、あなたを拾った時にあなたが身につけていた物なの」


 トリシャはその小さな箱を開ける。

 中には穴の空いたメダルの様な物がしまわれてた、蛇を掴む鷲の様な生物が描かれている。


「どこかの家の証の様じゃがかなり古い物のようでな・・・どこかで見たことがある気がするが思い出せん・・・」


「もし、本当に、生んだ人間の事を知りたいのなら相当辛い事を覚悟しなさい」


「いえ、顔でも拝んでやろうかと思いましたが・・・わからないのなら無理に探す必要はありませんね」


「まぁ、一応持っていくといい」


 ミーシャはメダルを受け取り席を立つ。


「では、明日にでも出発します」


「いいのか?仲の良い友達がおった様じゃが・・・」


「大丈夫です・・・ジュリー、エミーと、あとキースもよろしく頼む」


「お待ちください、お嬢様」


 部屋に戻ろうとしたミーシャをジュリーが呼び止める。


「アーコードに行かれるならこれを」


 そう言うとジュリーは手紙を差し出してくる。


「アーコードには私の妹が居ます、この手紙を渡してください必ずやお役に立ちます」


「・・・ありがとう」


 なぜかとても優しい目つきで接してくるジュリーに少しドキドキしながら部屋に戻るのであった。



―――翌日「フィリス村入口付近」―――



「エミーもキースも怒るだろうなぁ・・・」


 旅立ちの朝、ミーシャは村から離れつつ独りごちていた。

 結局、早朝に家を飛び出し、誰に言葉を交わすでもなく村から出てきてしまった。たぶん声を掛けたら立ち止まってしまいそうで。


「編笠の手入れもばっちりだし、こんな怪しい格好の奴によってくるようなのは居ないな」


 今のミーシャの格好はミラー家にドッキリを仕掛けた時と同じ物、網代笠をかぶり、黒いマントで体を覆い、口元は布で隠し、肩掛けの袋を担いで歩いている。

 本日快晴、旅立ちには最高の日和である。


 鼻歌でもと思いつつ次の街まで歩いている時だった。

 左手には林が有り、右手には草原がある。林の中から男が一人舞い出てきた。


(盗賊の類か!?)


 とっさにミーシャは臨戦態勢に入る。


「ま、待ってくれ!俺だゴットンだ!」


 林から飛び出てきたのは村を襲った野盗の頭「ゴットン」であった。


「なんだ?仕返しかい?」


「ち、ちがう!あんた旅をしてるんだろう?」


 旅をしているというよりついさっき旅に出たところなのだが・・・。


「・・・で、なんの様だぃ?」


 ミーシャはゴットンを睨みつけながら問いかける、すると。


「旦那みたいな強い奴と一緒なら心強い!俺も一緒に連れて行っちゃくれないか?このとおりだ!頼む!」


(旦那って、私女だっつーの・・・あ、顔見えねーか・・・)


 ゴットンはその場にひれ伏してテコでも動かなそうである。


「メンドくさ・・・・・・勝手にしろ・・・・・」


「さすが旦那!ちなみにどちらまで?」


「お前行き先も知らずに付いてくる気!?」


 こうして旅のお供にハゲで傷だらけで筋肉モリモリマッチョマンのヒゲが付いてくる事になった。

やっと旅立ちまで到達。


ではこの時点でのミーシャのステータスをば

各魔術の適正度は5段階評価です。


ミーシャ・ラダッド ヒューマン 女


魔力容量:S 潜在魔力:Error(測定不能)

火:Lv1

水:Lv1

土:Lv1

風:Lv1

氷:Lv1


回復魔法:Lv2

身体強化:Lv3


空間魔法:Lv5

時間魔法:Lv4

無属性魔法:Lv3

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