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第百二十七話「世界は回る」

特別編はまだ書き上げれてないので本編投下。

そっちは出来次第捻りこみます。




 大和帝国軍中央司令部中央電報処理局。


 ここでは各地から寄せられる電報を職員達がタイプライターで紙へと入力していく。

 ミーシャがいくらパソコンやネット回線を敷いて回ろうとパソコンが使えるのは軍中央部の職員しかいないために電報、電話、電信が未だに主流であった。

 人手がいるしタイムロスも多いが各支部の電信部または電報担当官に伝えれば比較的誰でも利用できるのだ、勿論電報料金が必要だが。

 ミーシャ的には勝手に匿名掲示板を作って書き込みしている中央司令部の士官、職員達が問題なのだ。


 部屋にはガシャガシャチーンとタイプライター独特の作動音が無数に鳴り響いていた。


 局長机から部屋を見渡していた士官が補佐官に話しかける。


「今頃パーティ会場じゃ初戦圧勝の祝賀会の前準備で大忙しだろうなぁ」


「他にも元老院……いや、国会の方でも大忙しでしょうね。あまりに圧勝してしまったので一部からは虐殺だと非難がでてますから」


「勝ったなら良いんじゃねーのか? 偉い人はわからねぇなぁ。つーことは閣下は帰って来たら祝賀会もそこそこに即国会召集か」


「超緊急の特殊任務、でしたか? 閣下の行動力の高さは相変わらずですね」


海象(ヴァロス)作戦の陸上部隊と機械化騎兵隊、さらには武装親衛隊まで付いて行きてるんだ。あっと言う間に囚われのヒロインを助けて凱旋するだろうさ」


 ヒロインではなく老人では?


 そう補佐官が発言する前にタイプライターに入力していた担当職員が手を挙げた。

 電報の書き写しが完了した合図である。


「ほら来た。どこ宛だろうな? 国会? 広報部? 外務省? パーティ会場か?」


 局長は職員の方に近づき、補佐官にニヤニヤと話しかけながらタイプライターから紙を切り取った。


 しかし、文面を読んだ瞬間に彼の顔から笑みは消え、血の気は引いた。


「どこです? まさか兵器開発局じゃないでしょうね?」


 あんな変態の巣窟に。

 補佐官は暗にそう言っていた。

 しかし、帰って来たのは上官の慌てふためいた声だった。


「ぐ、軍令部! いや、副総統閣下へ! 今すぐだ!!」


 局長の握った紙には。


『発:要人救出部隊特務第一大隊

 宛:大和帝国中央司令部


 緊急


 目標地点にて害獣の襲撃をうける。

 大規模な地盤沈下を認む。

 目標の救出に成功。

 襲撃により総統閣下が行方不明。

 地盤沈下により捜索困難、安否不明』





******




「はははははっはっはっ!! 見ろ! また一つ絶望が生まれたぞ!」


「ふん」


 薄暗い部屋の中で水晶に映し出された光景を眺めるのは、おそらく少女と青年。


「いいなぁ、西の大陸は。いいなぁ、羨ましいなぁ。

 人が、街が、国が栄え、消えてゆく。なんと美しいのだろう、なんと興奮する光景だろう。

 戦争、戦乱だ、繁栄と衰退の終わりなきサイクルだ」


「ふん、どうせ滅びる奴らだ。栄えるだけ無駄だろ」


 楽しそうに笑う少女に対して忌々しそうに吐き捨てる青年。


「否。咲いて散るからこそ美しいのだ。

 何十年もかけて作り上げた道路が、街が。数百年、数千年の時をかけ洗練された文化が。

 ただ一瞬に破壊され、奪われ、消えてゆく。

 敬い崇められていた王族が、無様にも泣きわめき、怒号と嘲笑のなかで処刑されたときなど快感すら覚える。

 すべての繁栄は衰退の奈落にこそ輝きを発する」


「理解に苦しむな」


「構わんさ。もとり理解して貰おうなどと、いや、理解されるなどとは思ってはいない」


「それで? 紛い物は消えたのか?」


 青年の言葉に少女は少しだけ不機嫌さを表しながら返答する。

「紛い物などと、よしたまへ。アレは正しく本物だ。しかし、同時に偽者でもある。その時がまだ来ていないだけだ」


「お前の言うことは良く分からん」


 少女は肩をすくめた。


「アレはあの女に目をつけられたのだ。例え死んでいようが、必ず何者かが介入するだろう。すべてのイベントが消化されるまで。世界が有るべき様になるまで。

 決して世界は彼を、彼女を手放さない。真実に」


「では蘇るとでも?」


「私には解るのだ。簡単な話だ。なぜこんな事になった? 本来、魔王の種があの冬の日に死んでいるならばそれまで。

 しかし、あの冬の日、種は拾われた。ならばなぜ、あの女は種に介入したのだ? あの女の介入で種は三つに別けられた。

 魔王の器、少女の身体は東の地に。少女の魂は別の器を見つけて西の地に。では魔王の狂気は何処に消えた?

 私はここだ、狂気はここだ。東の果てで、器を手に入れココにいる。我らは等しく我らなのだ。

 我らは等しく偽者で、我らがそろった時こそ本物なのだから。Hier bin ich」


「どうだっていい。俺は俺の目的を果たせればそれでいい」


「現状で我らの目的は一緒だ。

 すべて肉なるものは草に等しく、人の世の栄光は草の花の如し。何となれば、草は枯れ、花は散るもの。

 否、我々が肉ならざるものすら滅ぼして見せよう。やつらの主の言葉もとこしえではないことを教えてやろう。

 それこそが我らが大願であるのだから」


「地はあなたのためにのろわれ、あなたは一生、苦しんで地から食物を取る。

 地はあなたのために、いばらとあざみとを生じ、あなたは野の草を食べるであろう。

 あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、あなたは土から取られたのだから。

 あなたは、ちりだから、ちりに帰る。


 冗談じゃない!

 俺は望んでココにいる訳じゃない。

 俺の居場所はこの世界じゃない。

 すべてはあの女のせいだ。すべての不幸はこの世界のせいだ。すべての絶望は人間のせいだ

 ちりなのはアイツだ、ちりに帰るべきはこの世界の人間だ」


「ふふふふふっ。では、出し物の鑑賞もこの辺にしておこう。『勇者殿』いや、『元・勇者殿』。喉が渇いた。

 ココアを持って来てはくれないか? よぉく練って、砂糖とミルクはたっぷりの物がいい」


「随分と勇者使いが荒いじゃないか。『魔王様』」


「次の出し物の準備をせねばならないからな。リンドヴェウグは失ったが。なぁに、大成のためには些細なものだ。

 西に習い、東でも起こそうじゃないか。戦乱を、心躍る狂乱を。

 王国の奴らに思い出させてやらねばな。魔界は貴様らのすぐ隣にあるという事を」


 少女の笑い声は薄暗い部屋の中に響き渡った。





******





「ミーシャや……起きなさい」


 また、声が聞こえる。

 せっかく気持ちよく眠っているのに。


「起きなさいミーシャや」


 またあのダ女神だろうか。

 私はゆっくりと目を開けた。


 するとそこには。


「は、ハイル・ヒッ○ラー!」


 すごく教科書とか歴史資料とかで見たことのあるちょび髭の人がいた。


「ちがーうっ! 私は某ナチの総統ではなーい!」


「え? どう見たって総統閣下では?」


「違うのだアドルフ。私はただのメッセンジャーなのでっトラー!」


 ものすごく怪しい語尾だ。


「いいかい? 良く聞くのだミーシャよ。君の魂は見えざる者にもてあそばれているのでアドルフ。

 正しい君の魂の管理者は非常にお困りなのでアドルフ。

 だから君があの世界で死んだ時を見計らって神の使いとしてコンタクトをとったのだアドルフ」


「え? て言うことは私は死んだんですか?」


 私がそう聞くと自称神の使いは耳の穴をほじくりながら。


「ミンチよりひでー有様だったねー」


「ふおぉぉぉっ!!」


「待って! 待つんだミーシャ! 落ち着いて!

 いいかい? こんなところでくたばっている場合じゃないのよ?

 君の魂はすでにあちらの世界に組み込まれてしまったのでアドルフ。

 しかし、一時的にあるべき場所へ送ることができるのでアドルフ。

 再びあの者に見つかる前に呪縛を解き放ちあの世界へ帰るのだアドルフ。

 それこそが運命を変える為の必要な行動なのでアドルフ!」


 ちょび髭がぐいぐいと近づいてくる。


「もし、呪縛が解かれなかった場合。

 私たちの手で君の魂を幽閉せねばならないんだアドルフ。

 幽閉された君はそこで一生、趣味全開の、わかる人しかわからないくっだらない小説に出続けるハメになるんでアドルフ。

 妖怪小説書こうとして二話でエターなったり。

 食堂してたと思ったら戦車乗って暴れだしたり。

 いきなり戦艦でどんぱちやり出したり。

 ナチの改造少年兵が異世界にぶっ飛ばされて悪役令嬢と戦車乗り回して大暴れする小説のプロット書いたり。

 元帝国軍人のジジイ共が異世界でコマンドーな小説のプロット書いたり。

 休みつぶしてH○I2でソヴィエトにボコボコにされたりするんでアドルフ」


「あ、あんなところにヒム○ー親衛隊指導者が」


「裏切り者死すべし!!」


「どうも、牟田○廉○です。ジンギスカン作ります」


「え?」


「どうも、通称辻○ンです。ビルマに襲われるの怖いです」


「え?」


「どうも、ヘル○ン・ゲー○ングです。モルヒネとおいしいご飯が好きです」


「え?」


「どうも、フ○ードリヒ・パウ○スです。ソ連行って反ナチになりました」


「え?」


「どうも、セミ○ーン・ブ○ョンヌイです。戦車とかクソです。騎兵隊こそ最強です」


「え?」



「ぇ?」



「?」



「」







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― 新着の感想 ―
[一言] HELLSINGやっぱ最高やな、この話読んで再確認したわ
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