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第九話「空の魔王?いえ、漆黒の大魔王です」


翌日、王立の教育機関『ヘンベルボック学園都市』の教師『ガーデルマン』

彼はフィリス村の空家ででキノコの研究をしていた。

彼は数ヶ月に一度学院を飛び出し、自らキノコを採取し研究を行っていた。

キノコの持つ可能性を信じ、国中を飛び回って採取を繰り返していた。


研究の手を一旦止め、次の実験に取り掛かろうとしている時だった。

その小さな暴君が現れたのは。


ダァンッ!


入口のドアが力強く開け放たれる。


「休んでいる暇はないぞガーデルマン、特訓だ!!」


ガッ!


あまりの出来事に頭の回転が追いつかない。

呆然としていると襟首を引っ掴まれそのまま引きずって行かれた。

五歳児とは思えない力である。


〜切り株広場〜


ガーデルマンはミーシャに引きずられ切り株の広場まで運ばれていた。


「なんじゃまったく、慌ただしいいのぉ・・・」

「無属性魔法の件、忘れたわけじゃないだろう?」

「・・・ミーシャ、村からここまで引きずって来るのはやりすぎだと思う」

「エミー嬢、構わんよ。儂もミーシャ嬢の力に興味がある、どんな生活をすればそんな力が手に入るのか」

「私は何も?『朝起きて朝練して朝飯食って牛乳飲んで特訓して、昼飯食って牛乳飲んで特訓して、

 晩飯食って牛乳飲んでイメトレして体洗って寝る』を2歳の時から毎日してただけだ」

「その時点でかなり異常だと思うなぁ・・・」

「キースも同じことすれば良いんじゃないか?」

「頑張ってみるよ、強くなれるならなんだってするさ」


ガーデルマンの他に広場に集まっていたエミーとキースも含め今日の特訓を始める事にした。

お待ちかね無属性魔法の特訓である。


「ウォッホン!では無属性魔法の伝授であるが。

 まずこの魔法は体内の魔力をそのまま波動・衝撃波として体外へ放出する魔術の事じゃ」

「要するに魔力版『かめ○め波』と?」

「うん?その『なんとか波』とやらはよくわからんが・・・

 例えば手のひらに力を蓄え、目の前に力の弾を打ち出すような感じで発動してみるのじゃ。

 良いか?あくまで魔力を力と考えよ、水や火などをイメージするとその属性の魔法でしかないからの。

 また、消費魔力はとてつもない量になる。お前さん程の魔力の持ち主でなければ、

 まともな力を集める前に魔力切れを起こすじゃろう。

 発動すると魔力は拡散しようとする、魔力をイメージの様に制御するように心がけろ」

「しつもーん!ガーデルマン先生はどのくらい使えるんですか?」

「あぁ、儂か・・・

 儂は拳大の魔弾を飛ばすので精一杯じゃ。

 木に向かって放った時、当たった箇所はえぐれてから弾け飛んでおったぞ。

 しかし、ミーシャ程の魔力の量ならどれだけの力が放たれるかはわからん。

 最初は加減して使ってみよ」

「そんな事言われたってなぁ、まぁやってみるけど」


そういうわけで、周りのみんなが見守る中集中を開始する。

やはり波動と言って思い浮かぶのは、某ハチャメチャが押し寄せてくる漫画か、ハートヘアのモノクルの紳士か。

ここは手のひらを上下に向かい合わせ魔力を弾状に制御し打ち出してみよう。


「〜〜〜〜〜〜〜」


気合を込めて手のひらに力を送る、すると手と手のあいだに何か膨張する力が出来ていくのがわかった。

それを適度に溜め込み前方に向かって一気に放出する。


「〜〜ッ!波あぁぁぁッ!!」

ズドオオオオオォォォォォォン・・・・


すると手の中に収まっていた魔力の塊は前方に向かって凄まじい勢いで突っ込んでいった。

一瞬視界が真っ白になり、凄まじい轟音と共に土煙が巻き起こる、波動が突っ込んでいった箇所は何も見えない。

一瞬のできごとであったが、周りの誰もが唖然として土煙の向こう側を見ていた。

心地よい風と共に煙は流されていく、そのにあったのは・・・


いや、訂正しよう。

そこには『何も無かった』のである。

そこに存在していた木々が、地面が、草花が、削られ、消滅し、消えて無くなっていた。

あとには綺麗に削り取られた地面とエネルギーがカスったせいで少し消滅した木々がある。

遠くの方では自重を支えられなくなったのか何本かの木が倒れだしていた。

射線上に森しか無かったのが幸いした様だ、これで射線上に自宅か村があったら大問題である。

恐る恐る後方の全員を眺めてみる、まさに『( ゚Д゚)ポカーン』と言う表現がぴったりの顔をしていた。

大蛇であるオロチまでもが口をだらしなく開けてこちらを見ていた。

俺は頬を引き釣らせながらガーデルマンの方を向き、ただ一言を絞り出していた。


「・・・いや、コレ・・・ナイワー・・・」


すると唖然としていたガーデルマンは我にかえったのかこちらに走ってきて俺の体に異常がないか聞いてくる。

そして、あることに気が付いた。


「おぬし、あれほどの量の魔力を消費したのに大丈夫なのか?

 普通なら無属性魔法をあんな放ち方をすれば魔力切れで命に関わるぞ?」

「いや、大丈夫だが?」

「なんと・・・」


確かにあの威力の魔法を発動したのだ、集めた魔力は空気中に流れ出しエネルギー波として効果があったのは、

使用した魔力の60%程度だったと思う。

しかし、だからと言って一度放っただけで再起不能という訳でもなく、あと2発程度なら発射が可能だ。

今の一発目で制御方法のコツと大体の発射プロセスのイメージは出来た。

同じ消費魔力ならもっと威力が上がるだろう。


「「・・・・・・」」


未だ後ろの二人(正確には二人と一匹)の意識は戻っておらず、只々消えた森の一部を眺めるだけである。


しかし、不思議である。

あれだけのエネルギーを前方に向けて発射したのだ。

普通であれば作用反作用の法則に従って、前方に発射した分だけ体は後方に吹き飛ぶ。

それが全くと言っていい程の無反動で発射をしたのだ。

そこで、ガーデルマンから距離を取り、先ほどのエネルギーの10分の1の力を両足の裏側に集める。

そしてそのイメージを対象物を消滅させるエネルギー波ではなく、ブースターとして噴射するイメージを意識する。

足の裏から魔力を噴射し少しずつ増やしていくと体が浮いた。

すぐに着地したが、まだ慣れていないせいか空中でのバランスや推進力が安定しないのでジェット飛行はまだできないようだ。

これから少しずつ鍛えていくほか無い様だ。


すると家の方からヘンリーが大慌てで走ってくるのが見えた。

あれだけの爆音が鳴り響けばそう離れていないラダッド家からはすぐに人が飛んでくる。

とりあえずその場は全部ガーデルマンのせいにしておいた。

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