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勇者、魔王と対峙する7

 女性は見るものを魅了する蠱惑的な笑みを浮かべる。三人はその笑みに吸い込まれるような感覚に囚われる。ニコニコと笑う女性に空間が静かになる。真っ先に帰ってきたのはクズだ。

「……っは!お前は誰だ!」

「誰も何も私は普通の女性だよ」

 クスクスと笑う女性。クズがその発言を聞き鼻で笑う。

「はんっ!普通の女性がそんな立派な角と尻尾をこさえてるかよ!」

「うん、そうだね」

 女性は楽しそうに笑う。クズの発言にキリとモチも現実に帰ってくる。

「……そうだな。普通の女性にはないもんな」

「お、お前は誰だ!」

 キリとモチの発言。女性が言う。

「誰も何も、君達が探していた人だと思うよ?」

「……魔王か」

 クズが呟くように言う。キリとモチはハッと振り返りクズの顔を眺める。女性はクズの発言に嬉しそうに頷いた。

「そう、僕は魔王だ」

「そうか、ようやく見つけたか」

 クズキリモチの三人組は魔王を見据えると武器を構える。

「よく来た勇者達。紅茶でも飲んでいくかい?」

「はっ!魔王の出す紅茶を勇者が飲むとは思えないんだがね!」

 クズの発言に魔王は苦笑いを返し、ぼそりと呟いた。

「それがいるんだけどね……」

 魔王の発言が三人の勇者には届いていない。ただ警戒の色を強めた。

「俺は、魔王に会ったら聞きたい事があってな」

 キリが言う。魔王はそのキリの反応に興味を示し聞き返した。

「ほう。答えられる質問なら僕が答えよう」

 キリが持っていた長剣の刃先を魔王に向け言う。

「なら教えてくれ。魔族はどうして俺達を襲う!」

 キリの質問に魔王が面白い言葉を聞いたという感じで笑う。

「はははっ!よく言ったものだよ!」

 瞬間、魔王の雰囲気が変わる。

「自分達から仕掛けてきた癖に何が襲うかだよ!逆に聞くけどどうしてお前らは私達を迫害する!」

 突然の魔王の雰囲気の変化に勇者三人組は戸惑いの色を見せる。しかしすぐに持ち為すとモチが魔王の顔を見据えて言う。

「武力に武力を返しただけだ!」

「ふーん、君達はそう考えるんだ」

 ぼそり、また魔王が顔を俯けて呟く。勇者三人組は魔王の反応に疑問を浮かべたが次に魔王が顔を上げた時に見えた顔で、そんな疑問も消えた。いや、考える暇がなくなったといったほうが正しいのだろうか。

「言っとくけど、僕は君達が町を滅ぼしたことを許す気はない。覚悟して掛かってくるがいい」

 魔王は先ほどの蠱惑的な笑みではなく、獰猛な肉食獣のような笑みを浮かべていたのだから。

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