魔王、勇者と対峙する1
「魔王様、こちらに居ましたか」
マリアが扉を開け部屋に入る。魔王は部屋のテラスで星を眺めていたが、マリアの入室に気がつくとマリアに視線を合わせる。
「いらっしゃいマリア。用件は?」
入室してきたマリアに魔王は用件を聞く。マリアはお辞儀をすると用件を話す。
「この大陸に勇者の一行が上陸しました」
「そう、来たのね」
「いかがいたしましょう」
マリアは魔王の指示を聞く。魔王は少し考えるとマリアに状況を聞いた。
「マリア、その一行の様子と状況は?」
「現在魔王城に向かい進行している模様。幸い死者は出ていませんが怪我をした兵士が多数確認されています」
「そう。じゃあ出切る限り被害が少なくなるようにこの城まで誘導して」
「かしこまりました」
「到着予定は?」
「そうですね。このペースだと3日後ではないでしょうか?」
「3日後ね……」
魔王はマリアの回答に頷くと、口を閉じる。少しの静寂の後、魔王はマリアに声を掛ける。
「はぁ……どうしてテールの時は報告に来なかったの」
「報告する必要がないと判断したので」
「それはテールに力がないという意味でかな?」
魔王の質問にマリアが首を横に振る。
「いえ、テール様と争うことはまずないだろうと判断したからです」
魔王が意外そうな表情をする。マリアが言葉を続けた。
「確かに兵士との争いもありましたが、彼は一度として兵士以外の住人を狙いませんでした」
「あぁ、なるほど」
魔王が納得した様子で頷いた。
「つまり今回の勇者達は酷いと」
「はい、死者が出なかったというだけで港の町が一つ滅んでいます」
魔王が苦虫を潰したような表情を見せる。町が一つ滅びる、それだけで魔王の想像よりも被害が酷かった。
「これは僕も覚悟しないとかな」
「そうかもしれませんね」
二人の重い空気が部屋を包んだ。




