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勇者、魔族の町へ行く2

 朝食の準備は既になされていた。食事も朝食だというのにテールが旅をして寄った街や宿屋とは比べ物にならないほど豪華でテールは唾を飲み込み椅子に座った。


テールが部屋に入った時にはすでに魔王は上座に居り、テールが意識せずとも目に入った。


 朝食に舌鼓をしたテールだが、気持ちとしてまだ布団で寝て居たい。その為、魔王に起こされたテールは機嫌がよくない。魔王に皮肉を込めた言葉をかける。


「それで、こんなに朝早くに起こすって事は、既に何を撮るか決まってるってことだろう?」


 しかしその言葉に魔王は表情を明るくさせた。そのテールの言葉を皮肉ではなく、魔王の行動に対する期待から出てきた言葉だと感じたのだ。


「うん!テール、君に言われて僕は考えたんだよ!エリザベスより異世界の紹介に向いた、異世界にしかないものは何かってね!」


「ほう。じゃあその異世界にしかないものの答えは出たのか?」


「もちろん!」


 魔王は大きく頷きテールの顔を見据えた。少しの静寂、テールは恥ずかしくなり視線をずらそうとした時、魔王の口から言葉が出てくる。


「異世界の街の紹介をしようと思うんだ!」


 目を輝かせ自信満々に言う。その言葉にテールが自身を持ち直した。


「ほう、街の紹介か」


「それもただの街の紹介じゃないよ!異世界の魔族の街を紹介するんだよ!」


 魔族の街だ。胸を張っていう魔王は見た目相応の幼さを感じさせる。


「あぁ、魔族の街か。俺もよく知らないな」


「君達人族や、異世界ではドワーフやエルフと呼ばれる土族や長耳族の街よりも珍しいと思うよ!」


「魔王様、お行儀が悪いですよ?」


 体を机に乗り出しテールに力説する魔王をマリアが戒める。魔王はマリアの言葉を素直に聞き、椅子に座りなおした。


「へぇ、異世界だとエルフやドワーフっていうんだな。そっちの方が響きが綺麗だな」


「うん!僕もそう思うんだ!ただ、僕達魔族とエルフやドワーフとは敵対していて、このことを伝えることは出来ないんだけどね」


 魔王は肩を落とす。テールはすぐに話題を変えるべく言葉を模索した。


「あーっと、異世界では人族や魔族はなんて呼び方があるんだ」


「うーん、人族や魔族の呼び方かー」


 魔王は異世界での二種族の呼び方があったかを考える。ただ魔王の頭の中に答えがあるわけではないんだろう。少しの間唸っていた。


「マリア、知ってたりしない?」

 魔王が考え抜いた結果はマリアに頼ることだった。


「そうですね。人族の場合はヒューマンやホモ・サピエンスと、魔族はデューマンやアスラなどと呼ばれているそうですね。」


「へぇ、などってことは他の呼び方もあるってことか」


 テールはマリアに聞く。


「えぇ、異世界人による複数の国家が形成されており、国家によって言語が違いますからね」


「それは凄いことだ。そんなに種族が居たら異世界ってのも大変だろうな」


「いえ、どうも肌の色や目の色などの違いがあるだけで、異世界に住む人はホモ・サピエンスと呼ばれる種族で統一されているそうです」


 魔王が驚いた顔をしてマリアに聞いた。


「同じ種族なのに別の言語で話すんだ。他の種族は居ないのかな?」


「えぇ、そうですね。別の言語で話して、人の形をした種族はホモ・サピエンスだけだそうです。それに異世界には翻訳魔法がある訳ではないので、相手方の言語を仕える人は重宝されるそうですよ」


「なんだか面倒くさい世界だな。」


 テールは肩を竦めて言う。魔王も同じことを思ったんだろう。腕を組む首を縦に振っている。


「私もそう思います。しかし魔王様もテール様も、その異世界の人々に向けて動画を出すのですよ。しっかりと覚えておいてくださいね」


「はーい、わかったよー」


 魔王が手をひらひらと振りながらマリアの言葉を肯定した。


 テールは朝食を食べ終えたのだろう。席を立ち背伸びをすると魔王に声を掛けた


「じゃあ魔王様、そろそろ行くか?」


「行くって何処に?」


 魔王が首をかしげ聞き返す。


「決まっているだろ?その異世界の人たちに向けた動画を撮りにだよ。しっかりと考えたんだろ?」


 テールはそういって魔王の顔を見る。魔王はテールの言葉を理解すると目を輝かせ嬉しそうな顔でテールに言葉を返した。


「うん!じゃあ行こうか!異世界の街へ!」


 魔王も朝食を食べ終えていたのだろう。飛び跳ねるように席を立った。


「魔王様、挨拶を忘れていますよ?」


「あぁ、そうだった。」


 マリアは魔王に挨拶を忘れているといった。魔王はマリアの言葉で思い出し、両手を合わせて言う。


「ご馳走様でした!」

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