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魔王、煉瓦を作る1

 明くる日、テールが慣れた雰囲気で朝食を取る為にテーブルに座った。テールが座る頃にはマリアが朝食の用意が終わらせており、テールの前には既に朝食が用意されている。どれも彩がよく食欲を誘う。


 バンッ!魔王が興奮した様子でテーブルを叩いた。テーブルの上に乗っていたものは宙を舞い綺麗にもとのおかれていた位置とは違うが、盛り付けられた皿からこぼれる事無く綺麗に落ちた。


「テール!今日はね!」


「魔王様、お行儀が悪いです」


 興奮した様子の魔王をマリアが嗜める。


「はーい、ごめんなさい」


 魔王は拗ねた表情で間延びのした返事を返した。マリアはそんな態度の魔王に対して、分かればいいと嬉しそうに頷いていた。テールが魔王に話を振る。


「それで、今日はどうしたんだ?」


 魔王がテールの言葉でマリアから意識を逸らすとすぐに話を始めた。


「僕は今日、やってみたい事があるんだよ!」


 魔王が楽しげに言う。テールは魔王のやってみたい事に思い当たる節がない為、首を傾げる。すぐにマリアがテールに近づき耳元で補足をしてくれる。


「魔王様は昨日見ていた動画に深く感銘を受けまして、同じ事をしてみたいそうです」


「あぁ、なるほど」


 テールが頷いた。要するに魔王は真似事をして見たいのだろうとテールは考えた。事実その通りなのだから訂正も何も要らないことだろう。マリアの説明が終わったのを確認すると、魔王は咳払いを一つして話を続けた。


「こほんっ。今日は土レンガを作ってみたいと思ってね?」


「土レンガ?それって、暑い砂漠とかで使われているあの土レンガ?」


 テールは予想外の答えに思わず魔王に聞いた。魔王は満足そうに頷いた。


「砂漠のレンガは焼かないで干して固めたレンガで、日干しレンガというらしいよ。僕がやりたいのはレンガを焼いて作るんだよ!」


 魔王は興奮した様子だ。テールは魔王の反応に付いていくことが出来ず、ただ困惑の表情を見せるだけだ。マリアは長い付き合いで魔王の突拍子のない行動は分かっているのだろう。普段通りの雰囲気を纏っている。


「うん、まぁやりたいという気持ちは分かった。じゃあ、どこでそのレンガを焼くんだ?」


 テールは魔王に聞いた。魔王は待ってましたと言わんばかりの表情で窓の外を指差した。


「そこの森でだよ!」

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