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勇者、動画の勉強をする4

 あれからテールはマリアに動画の見方を習った。テールはすぐにやってみようという精神でパソコンの前に座った。パソコンの使い方も完璧。テールは心の中でそう考えていた。アプリケーションの一つをクリックする。


「ふむ、ここに言葉を入れると見たいものが見れる……と」


 マリアの説明通りに検索したい言葉を入れる。何も難しいことはなく、マリアが異世界の言語に対応をさせてくれている。


「いずれは異世界の言葉を覚えてもらうことになると思います、か。マリアさんも難しいことを要求してくることで」


 テールはそう愚痴をいいながらエンターキーを押した。




「やべぇよ……まさか猫にあんな出来事があったなんて……」


 目元を押さえ涙がこぼれないように上を向いているテールが居る。


 あれから数時間の間、テールは様々な動画を見て回った。最初の方は異世界の知識を取り入れるための勉強が目的だったが、次に、そのまた次にと動画をみ進めて行くうちに、動画を見るという手段が勉強から娯楽に変わっていった。


 コンコン、扉をノックする音が聞こえる。


「どう?勉強は出来た?」


 扉を開けて入ってきたのは魔王。魔王は勉強が進んでいるかと聞きに来た。


 そんな魔王にテールが答えた。


「あぁ、順調だ」


 テールの言葉は半分だけ本当だ。今の今まで動画を見ていたのだから。そしてもう半分に来る嘘は、動画を見る目的が楽しむ事に変わった事だ。


「うん!それはよかった!僕なんか動画を見るのが楽しくてついつい脱線したりするのに、テールは凄いね!」


 魔王が純粋にテールを褒めた。テールは視線を逸らしたい衝動に駆られるがここで逸らすわけには行かないと堪えた。


「あ、あぁ、動画の作成を手伝うって決めたからな」


 嬉しそうな顔でテールを見つめる魔王にテールはしどろもどろに答えた。魔王はそんなテールに一瞬暗い顔をするがテールが勘違いかと首を捻るくらい一瞬だった。


「……うん、ありがとう!じゃあ僕もテールの期待にこたえられるくらいには頑張らないとね!」


 魔王が笑いながら言う。テールもつられるように笑った。


「あぁ、頑張ってくれ」


「任せといて!早速だけどテールの勉強の成果、見せてもらおうかな?」


 魔王が張った胸を叩くとテールを指差しながら言う。


「お、任せておけ!ここに座ってな」


 テールはそういいながら魔王を手招きすると隣に座るように言う。魔王もテールの言葉に素直に従いテールの隣に座った。




「まさか猫があんなことになるなんて……」


 魔王はテールの隣で泣いている。テールが紹介した動画を見て感動しているみたいだ。


「はっはっは、次はこの動画、この動画はびっくりするぞ!」


 そういいながらテールが魔王に見せる次の動画も猫。テールはこの数時間を猫の動画を見ることに費やしていたようで、どんどんと猫の動画のラインナップが出てくる。


「いやぁ、可愛いねぇ。僕のエリザベスも可愛いけどまた違った可愛さがあるよ」


「あー、エリザベスはもっと活発に動けば可愛い……のかなぁ?」


 魔王の一言にテールは反応に困った。自分の飼っているペットが可愛いという気持ちはテールにも理解ができるからテールは可愛くないと否定しづらい。しかしエリザベスもワニだ。活発に動いたら可愛いよりも先に恐怖が勝ること間違いないだろう。あの大きな口に挟まれたくはない。テールはそう考えた。


「ふふん、そうでしょうそうでしょう!」


 魔王は魔王でテールの可愛いという部分だけを抜き出し得意げに胸を張っていた。ペットが褒められて嬉しいのは分かるがワニだ。


「あー、これなんてどうだ!猫の寝ている動画だ!」


「お?どれどれ?」


 テールはエリザベスの話題を広げない為に話を逸らすことを選んだ。魔王が上手いこと逸らされてくれてテールはホッと胸を撫でた。


「いやぁ、にしてもテールはちゃんと勉強をしていたんだね!」


「ん?」


 魔王がテールのことを褒める。


「私のペットの動画が上手くいかなかったからこうやってペットの動画を見て勉強してくれてたんでしょ?凄く助かるよ!」


「お、おう!せっかくの可愛いペットなんだから可愛く映った方がいいもんな!」


 テールはしどろもどろになりながらも魔王に空元気で返事を返した。魔王はそんなテールの反応を見て嬉しそうに頷いた。


「そうだよね!可愛く映った方がいいもんね!ありがとうテール!」


 魔王はテールの手を嬉しそうに両手で掴んだ。そして上下に振り回す。


「じゃあ!これ以上邪魔しちゃいけないと思うから僕そろそろ戻るね!」


 魔王はテールの手を話すと元気よくいい、扉から出て行った。


「あぁ……気をつけるんだぞ」


 テールはそんな魔王を見送ったのだった。

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