侯国の斜陽
ハージェス侯爵公子ジェロームはジエラを妃とするべく暗躍していた。
叔母であるナキア伯爵夫人スザンナに対して、ジエラとの婚姻のための協力を依頼する。
グスタフにはヘルマンをナキア伯国に登用するよう仕向けた。ヘルマンがいる限りジエラは「ボクは戦場で戦うんだ」などという馬鹿げた幻想に囚われ続けるからである。
更にジエラの従者であるベルフィを壊せば完璧だ。
きっとジエラはジェロームに泣き縋ってくるに違いない、と彼は考えていた。
「ふん。従者であるエルフが娼婦だと? 亜人が従者というだけで貴族としてあるまじき失点だというのに、更に娼婦とはな。ジエラ殿の目を覚ますためには荒療治が必要だ」
ジェロームが屋敷勤めの下男を娼館『海辺の歌姫』に向かわせてベルフィの予定を確認させたところ、どうやらかのエルフは非常に人気嬢であるという。
だがやる気がないのだろうか。客を取る日も数日に一度程度であるから、しばらく先まで予約で埋まっていた。
そのため営業日における空き時間はともかくとして、ビィの一日を借りきるにはしばらく先の話となりそうだ。
それはジェロームはビィを一日中拘束し、彼女を壊すが目的であるからだ。
出張奉仕を依頼して、屈強な兵士100人で待ち構えてやろう。
「…エルフの小娘が。一日中輪姦されて無事でいられるものか」
ジェロームはビィを壊すのを楽しみに、その予約日を待つ。
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ジェロームも暇ではない。
侯爵公子として他の家々との交流も大切な仕事だ。
自らが、又は他家が主催する交流会を通じて、社交で優位な立場を模索する必要がある。
もっともジェロームのハージェス侯爵領は連邦最大規模の穀倉地帯である故に、食料輸出国として他邦としては軽視できない存在であった。
よって黙っていてもハージェス侯爵家へのご機嫌伺いに様々な人間がすり寄ってくる。
ジェロームは父である侯爵の名代として、彼らの饗応を受けていた。
「ジェローム殿、ご機嫌麗しゅう。…ところで我が一族に年頃の娘がおりましてな。一度お会いになっていただけませんか」
「聞きましたぞ。先だって魔物の大群を前に、見事な指揮官ぶりを発揮なさったとか。…ところで私の娘の器量は中々でしてな。…いやいや、親の欲目ではございませんぞ!」
「無作法とは思いますが、この場に娘を呼んでおります。どうか側室として召し上げて頂けませんか? ほれ、オマエからも挨拶せんか!」
「…初めまして。カタリナと申します。子爵家の身の上では不釣り合いかと存じますが、ジェローム様のご寵愛を頂ける事を切望しております」
ジェロームは未だ独身であるため、娘を近づけようとする貴族が引きを切らない。
しかし彼はジエラに出会ってしまった。
美の女神を差し置いてまで側に置きたい女など存在しない。
ジェロームは失礼に当たらないよう、「父上にお伺いしてみませんと…」などと父親をダシにしながら、それでいてはっきりと縁談話を断りつつ日々の宴を消化していった。
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とある日。
ジェロームはこの日も交流会に忙殺されている。
そんな彼に、顔馴染みの貴族が声をかけた。
「ジェローム殿、先日の魔物退治の話をお聞かせ頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「…なんです?」
ジェロームはほんの僅か気色ばむ。
魔物の暴動…オーク共の事など思い出したくもない。しかし、社交の場では不快だからと言ってそれを態度に表す訳にはいかない。
「ジェローム殿と共にコーリエ伯爵家のテオドール公子が活躍したと聞き及んでおりますが…真でしょうか?」
「…テオドール?」
ジェロームは交流のない一見の子弟の名を直ぐに思い出せないでいた。
それを察したのか、貴族は「魔術師の少年です」と補足する。
「…ああ! テオドール殿ですか。彼の炎の魔術は見事でした。まるで豪雨のように炎の礫が降り注ぐ様は、魔導侯爵であるマレフィキウム卿をも彷彿とさせる素晴らしきもの。あの若さであの練達となれば、ゆくゆくは連邦に名を残す魔術師となるでしょう」
貴族は基本的に他者の陰口は言わない。
迂闊な一言が身の破滅に繋がりかねないからだ。
「この者ならば大丈夫だろう」と気を抜いたら最後、実は両者が裏で懇意にしていたなどで、手痛いしっぺ返しを食らうなど間抜けの極みである。
よってジェロームもテオドールの魔術の腕前を褒めちぎった。
すると貴族は満面の笑みを浮かべる。
「おお、やはりそうでしたか!」
「…何かありましたか?」
「ご存知ない? いや、そのテオドールという若者がナキアの海に巣食う悪名高きドラゴンを討伐したとの専らの噂ですぞ!」
「……ほう?」
「ナキア伯はドラゴン討伐に箝口令を強いておりますが、人の口に戸は立てられぬもの。ヒトの身でドラゴン討伐など信じられぬ思いでしたが、ジェローム殿と魔物討伐にも活躍されたとの噂もありましたので、貴殿に確認してしまった次第」
どうやらこの貴族はテオドールと関係を紡ぎたいようである。
「それにしても、以前から父君のコーリエ伯爵の息子自慢は何度となく聞かされておりましたが、まさかそれが事実だとは…」
「ははは。機会があれば私もテオドール殿に挨拶させていただきましょう。…それにしても驚きです。ドラゴン討伐が成されたとあってはナキア伯の寄親たる我が家にも関係がある話。明日にでも伯爵閣下に確認させて頂きましょう」
ジェロームたちがそのように話していると、その話に乗ってきた別の貴族がいた。
「おお! それ程までの魔術師がおるとは!」
ゴヴァルク侯爵アラガン・イラールである。
グラオザーム帝国との国境を守護する家で、先の大戦後でも帝国から領土を切り取るなど活躍した武闘派侯爵家だ。
なお、代々軍人の家系であり、現当主であるアラガンはアリアンサ連邦の元帥でもある。
既に初老の域に達してはいるが、若い頃は前線で剣を振るった事もあり、その覇気は些かも衰えていない。
現在であっても後方で指揮する元帥というよりは、豪腕で鳴らした将軍との呼称が似つかわしいだろう。
しかし、そんな彼も帝国との停戦中である今は余暇を持て余しているようだ。
国境の守りを部下に任せ、こうして避暑を楽しんでいる。
「テオドール殿か! よぉぉっく覚えておこう。我が魔術師部隊で大いに活躍してもらおうぞ!」
「「「……」」」
ジェロームがアラガンに応じる。
「…閣下に目を付けられてしまってはテオドール殿も苦労しますな。彼は学生とも言うべき少年です」
「ふははは! 机上の学問や練兵場での訓練など意味がないわ。若いうちに我が国境守備軍の猛者共から指南を受ければ、魔導侯爵のジジィなどより練達が適うというもの!」
「ははは!」と声高らかに嗤うアラガンに、周囲の貴族も乾いた笑いで応える。
「それはそうとジェローム殿。今年は気候も良く、貴公の領内でも収穫は十二分であるだろう。帝国との国境である我が領内は兵士の数が多いでな。今年も十分な糧秣の輸送を期待しておるぞ!」
「はい。ご安心ください。『連邦の盾』たる方々を飢えさせることがあっては、ハージェス侯爵家の名に傷がつきましょう」
アラガンは人材獲得と糧秣の件で心地いいのか、「ふはは!」と哄笑しつつ機嫌よく去っていった。
「…ふん。侯爵家とは名ばかりの成り上がりめ」
「戦争で出世した家では貴族の品格すら理解できんのでしょうなぁ」
人混みからはアラガンに対する陰口が聞こえる。
おそらく前線から遠く離れた内地の貴族だろう。
彼らはアラガンからの要望で、少なくない軍需物資を提供する義務を課せられているので、彼をよく思っていない。
戦争時は「我らの代わりに帝国の侵入を防いでくれている」と理解は示すが、今は停戦状態である。
それでも軍を維持するには莫大なカネとモノが必要であるから、内地貴族が国境貴族を「無駄飯食い」と陰口を叩くのは仕方のない事だろう。
しかもアラガンのゴヴァルク侯爵家は長く前線にいるため社交から離れている。また、かの家の派閥は国境の伯爵家、子爵家、男爵家に集中しているので、内地貴族との間では全く繋がりがないのである。
更に国境の貴族は先祖の戦功武功の栄誉で貴族に任ぜられたために、現在でも武闘派が目立ち宮廷作法にも疎い。
その為、ゴヴァルク侯爵家一門と内地貴族は険悪とはいかないまでも深い溝があった。
それは社交の場で堂々と陰口が叩かれる程に。
すると、ジェロームにとある貴族がこっそりと話しかける。
「…ジェローム殿。よろしいのですか、安請け合いなされて?」
「…はて? 安請け合いとは?」
ジェロームがピンとこないでいると、その貴族は「しばし物陰へ」と、彼を連れて人気のない場所に移動する。
「出入りの商人からハージェス侯爵領で異常が起こっているとの情報を聞かされましてな。噂に名高い『精霊遣い農奴』を動員すれば立て直しが可能かも知れませんが、来季は広範囲で凶作との噂ですぞ。しかし国境への糧秣輸送も例年通りとは…大丈夫なのですか? 父上殿から聞かされておられないのですか?」
「ッッ!?」
ジェロームはそのような話は初耳だった。
しかし目の前の貴族は商人から聞かされて知っているという。
突然の話に驚いたものの、若いジェロームは商人の情報網とやらを軽視してしまう。
「そうなのですか。しかし父上が何も言ってこないのですから、単なる噂話の域を出ないのか、十分に対応可能という事でしょう。それに貴殿のおっしゃる通り我が侯国には精霊遣いの農奴がおります故に、他国では凶作となる条件でも豊作に変えることもできますので」
貴族は「いやはや頼もしい。さすが、長きにわたり連邦を潤してきた歴史は伊達ではありませんな」と彼を褒め称えるのみであった。
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しかし日々を追うごとに『ハージェス侯爵領で大凶作』という噂が大きくなっていった。
同じく国許からジェロームにも「領国にて凶作の見通し」という連絡が届いた。
晩餐に席でジェロームの元にくる貴族たちの話も、「我が娘を嫁に!」との声よりも、食料輸入国からの「我が領への食料輸出は例年通りなのですか?」との質問が目立つようになってきていた。
連邦を構成する各国は自給自足が成り立ってはいるが、農地が少ない地域では食料を他国(主にハージェス侯国)からの輸入に頼っている。
そうした国々は、今回の凶作話を捨ておける立場ではない。
「…貴国の事ですから大事ないとは思いますが…」
「…ははは。ご心配なく。本国からの連絡では色々と大変なようですが、我らも愚かではありません。対処は順調です」
「おお! さすがはハージェス侯ですな!」
「……」
ジェロームは内心焦っていた。
本国からの連絡によると、「備蓄食料を含めれば今期の出荷分はなんとか賄える」「来季の輸出要請は全て断ることなるが、ハージェス侯国の悪評にならないよう対応せよ」「耕作地の精霊力がことごとく失われている。耕作地よりも道端の精霊力の方が豊かな程である」「精霊遣い農奴が失踪が相次いでいる。緊急で補充を要する」「農民共が村を放棄して他国に逃げ始めている。その数は止まるところを知らない」と、どれも緊急事態を告げていた。
無論、早馬による連絡には時間差がある。
ジェロームには連絡が届いていないが、この時点でハージェス侯国における農地の精霊はサギニ、ヴェクストリアス両名によって大部分が奪われていたのだ。
『数年間は凶作の見通し』どころの話ではない。『永続的に耕作とは無縁』となっているのだ。
「…備蓄分は今年の出荷分で終わる。精霊遣いが不足した状態では立て直しどころか来年以降の収穫は危うい。そうなれば…」
ハージェス侯爵家は食料が不足がちな連邦構成国に対し、円滑な食料出荷があってこその家である。
出荷どころか自国の消費分も工面できないようなら…、発言力低下どころか降格もあり得る。
それを回避するためにも、精霊遣いの拡充は喫緊の課題だ。
そのためにジェロームはナキア伯国の冒険者ギルドに対して『精霊遣いの仕官』依頼を出しているのだが、一向に仕官話がない状況だ。
「…精霊遣いはエルフかハーフエルフだ。下等な亜人風情を奴隷ではなく農民として待遇してやろうと言うのに…何故誰も名乗り出てこないのだ…!?」
ジェロームは現状を理解できない。
ハージェス侯爵家は亜人を虐げてきた国家でるため、ナキア冒険者ギルドのエルフたちが手を回し、精霊遣いが受注しないように工作しているためだ。
そして彼はふと思いつく。
ジエラの従卒であるベルフィをジエラと共に手に入れれば良いのだ、と。
「おお! そう言えばエルフは下位精霊とやらを使役できるのであったな。ハーフエルフの数人分の働きは見込めるだろう。おお、そうだ。かのエルフを人質として血族を誘い出し、芋づる式に農奴に堕とす手もある。女ならハーフエルフの母体となるだろう。ククク。卑しいエルフが我が国の糧となるのだから彼奴等も本望だろう!」
生まれたときからハーフエルフを虐げてきた家で育ったジェロームである。
エルフを有効利用する事を正義として、正当な権利として疑う事はなかった。
「それにしてもジエラ殿は本当に我が女神だ。家の危機に際してエルフを提供してくれるのだからな…!」
◇
同じ頃。
ナキア伯爵アロルドは宰相と密談を交わしていた。
「……して、我が寄親たるハージェス侯国の様子はどのようであるのだ?」
「はっ。密偵の報告によりますと、侯国におきましては数年先までかつての隆盛は見込めず、食いつなぐのがやっとの有様だとのことです」
アロルドは「ふむ」と椅子に深く坐り直す。
ハージェス侯国の凶作話は軽々に扱って良い話題ではない。
おそらく連邦に属する国々が侯国に密偵を送り込んでおり、かの国の貧苦は最早連邦に知れ渡っている事だろう。
彼は傍のチェス台にある手紙の一つを摘まみ上げる。
「…機を見るに敏、と言うべきか。ハージェス侯爵家の寄子共が親を見限ろうと、こうして書簡を送ってきおった」
旗頭たるハージェス侯国は既に落ち目であると言って良い。
しかし安易に寄親を代える事は出来ない。
寄親を見捨てるに妥当な理由でもなければ。
そんな状況下で侯国の寄子の中でも筆頭たるナキア伯爵の動きは重要なところだ。
他の寄子たちがナキア伯国の動きを注視しているので、ナキア伯国がどう動くのか探りを入れてきているのだ。
「…して、如何なさいます?」
宰相が問いかけると、アロルドもそれに応じる。
「ふ。決まっておろう。我が国は泰然自若と事の成り行きを見守るのみ、だ」
「しかし閣下。そうなりますと厄介なのは隣国コーリエでございます」
コーリエ伯国。
それはナキアの隆盛を目の敵とする困った隣国である。
この度も魔物の群衆暴動討伐に際してコーリエ伯爵第二公子テオドールの活躍を褒め称えた書簡と贈り物を送ったところ、「我が息子を危険に晒すとは! 息子を害そうとするとは何事だ!」という返答があった。
更に今回のドラゴン討伐に関しても、ドラゴン討伐の感謝と、ヘルマンと共に討伐式典の主役にと声を掛けたのだが、「テオドールを危険に晒した謝罪と賠償としてドラゴンの全素材を提供せよ。海上交易によって生じる関税利権を全て差し出せ」との回答だった。
更には「荒野を開拓するから資金を提供せよ。資金を拠出しないのなら荒地を提供せよ」などと文書を送ってよこすなど、相変わらず常軌を逸している。
「閣下、ドラゴンの素材に関しましては…?」
「うむ。魔術師ギルドからの鑑定によると、かのドラゴンの素材からは何の魔力も確認できなかったという。つまり素材として全く使い途がないという事だ。連中はドラゴンが死した時に魔力が霧散してしまったのではないかと申しておったが、私も専門的な事はわからん」
「…つまりドラゴンの死骸は、…『置き物』、という事でしょうな。ならばコーリエ伯へ全て譲渡してしまっても問題ありますまい。逆に交易関連の要求に関しましては譲るつもりはございません。もっとも伯の性格上、宮殿にドラゴンの首を掲げられるとしたら大喜びでしょうな。案外簡単に交渉が進むと思いますぞ」
アロルドは力強く頷く。
「うむ。それとドラゴン討伐の立役者だがな、テオドールとかいう公子の単独功績としても構わん。その代わり、コーリエ伯国には今後永年に我が国の権益に一切に関わらせんようにせよ。これは厳命だ」
「? ヘルマン殿を英雄として祭り上げるのではなかったのですかな?」
「ハージェス侯国が安定していたならば…な」
アロルドは考える。
龍殺しの英雄・ヘルマンを重用するとなるとヘルマンを軍の要職に就ける必要がある。
その結果、国が安定しない、との予想があるのだ。
「ヘルマンの処遇についてはグスタフが不満に思っておる。それにヘルマンはグスタフ、エルランド共に信頼が篤いようだ。グスタフの立場が不確かな以上、ヘルマンの登用は宮中や軍の混乱を呼び込みやすい。アレ程の武勇を諦めるのは無念ではあるがな。…それに」
ヘルマンの伴侶がコーリエ伯国の寵臣だという。
ヘルマンを重職に就けた場合、コーリエ伯国の介入があるのは間違いない。
宰相はアロルドの真意を察する。
アロルドの興味はヘルマンという豪傑を重用するよりも、ドラゴン討伐による交易や漁業の開発に移っているようだ。
また、グスタフに対する扱い方についても方針転換をしたようである。
「……閣下。グスタフ様を…?」
「うむ。あれの母はハージェス侯爵家の出だ。…まだ理由としては弱いが、……卿もそれを前提に動け」
アロルドは、己の妃を「あれの母」と称した。
妃であるスザンナは現ハージェス侯爵家当主の実妹である。
今後のハージェス侯爵の力が弱まれば、グスタフを後継とするに拘る理由はない。
グスタフは内政や外交の才が皆無であり武人気質だ。何より貴族としての資質に疑問があり、母の実家の危機に対して情に流されて厳格な対応が取れない可能性が大だ。
対して弟のエルランドは母が寄子の出だ。そのため今後、害となる外戚の心配はない。
己が壮健なうちにエルランドに爵位を継がせ、後見人として彼の指導を行えばグスタフよりも優れた統治者になるだろう。
しかしグスタフは軍部の信頼が篤い。
敵国と遠く離れた内地国であるため軍部の力が比較的弱いとはいえ、それを無視するわけにもいかない。
逆にいえば、軍部が納得する理由があれば十分廃嫡もあり得るのだ。
「……残念だ。グスタフを領主に、エルランドを補佐役と考えておったが…この状況では致し方あるまい」
話の内容は重苦しいものであったが、アロルドの表情は…それほど暗くはなかった。




