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ハージェス侯国の末路 ①

ビシィッ!

「ぐあぁッ♡!」



サギニ配下のニンジャ・ヴェクストリアス…源氏名をトリアス…は、今日も情報収集に励んでいる。

見えそうで見えまくっている露出系エナメルビスチェに身を包み、顔をドミノマスクで隠してムチを振るうのだ。

彼女のムチはウツボカヅラを媒介とする森乙女(ドライアード)製であるため、その(ムチ)は対象に痛みと快楽を与えるのである。



「はぁはぁ♡ さぁ、オマエの全てを私に…娼婦女王トリアス様に曝け出しなさい! そうすればもっと激しいピンヒールの踵(ご褒美)をくれてやるわ!」

ビシィィィッ!


「あひぃぃッ♡♡!!」



彼女の今日の客はとあるならず者(・・・・)だ。

トリアスは「こんな男の情報など大した事ないだろう」と考えていたが、その予想に反して彼は恐るべき依頼を受けていた事が判明したのである…!





その日の夜。

ヴェクストリアスは大浴場にて事の次第を報告する事にする。

遅い時間での大浴場には他の娼婦たちはいないため、関係者のみでの会話に適しているのだ。


ジエラの忠実なる臣下・サギニは、情熱と熱情を以てジエラに奉仕していた。

彼女は忍法・泡遁にて奉仕し足りない様であったが、ヴェクストリアスの言う「恐るべき陰謀」を聞くためにやむを得ずその役目をスレイに引き継ぐ。



「ッ!? ハージェス侯国がベルフィお嬢様を拐かそうとしている!?」


「はッ。ハージェス侯国は来るべき大凶作に対抗するため、悪人を大量に雇い入れてエルフの精霊遣いを拉致しようとしているとの事です。ベルフィ様もそのお一人…」


「な、何という…神をも恐れぬ所業…!」



サギニはチラリとベルフィたちを見る。

ベルフィはジエラを泡まみれにして遊んでいる。そこにスレイプニル(スレイ)も参戦してメチャクチャな状態だ。

二人がかりで責められるジエラは半泣き状態。そしてジエラを責める二人は行為に夢中になっているようだ。

「だ、ダメェッッ!?」「はぁはぁ♡ ココですか! ココが良いんですね!」「ふふふ。松葉が崩れた程度で泣いてばかりとは情けないな! はぁはぁ♡」などと楽しそうである。



(…ああ。ベルフィお嬢様の楽しそうなお顔。かのようなお顔は妖精国(アールヴヘイム)では一度としてお目にかかったことはない。…だからこそ許せない。ベルフィ様を奴隷に堕とそうなどとは!)



サギニは思う。

ハージェス侯国を堕とすのはジエラを守るためだった。

更に主筋であるベルフィを守るという目的も加わったのだ。



「………ハージェス侯国。この世界から抹消される事をお望みのようですね。ヴェクストリアス」


「……は、ははッ」


「ハージェス侯国は私が滅ぼします。貴方はハージェスの貴族を処分なさい。方法も貴方に一任します」


「は、ははーーッ。サギニ様の仰せのままに!」



サギニは怒りのあまり獰猛に笑う。

ヴェクストリアスは冷や汗に震えるのであった。


なお、サギニとヴェクストリアスが侯国を滅ぼす話をしていたというのに、ジエラ、ベルフィ、スレイは全く気づかなかった。





サギニからの処分命令が下った数日後。



「こ、これは…一体!?」


「ハージェス侯爵領の農地には精霊使いが投入されているのは周知の事実ですが…。これは余りに問題が過ぎるのではないですか!?」


「……ぐ」(キラ…)



ナキア伯国の高台にある貴族街。

ここは連邦の各貴族家が避暑のために訪れる別荘地だ。

そのとある豪邸…ハージェス侯爵避暑邸の前庭には猿轡を咬まされた多数のエルフやハーフエルフたちが転がっていた。


早朝、侯爵邸の使用人が発見したのだが、夜間に何も物音がしなかったのにも関わらず、これ程までの大人数が運び込まれたのだ。個人の仕業ではなく、組織的にエルフたちは連れてこられたと思われた。


実際には彼らがハージェス侯国の手の者に拉致された訳ではない。

実はヴェクストリアスが冒険者時代の伝手を使い、ハージェス侯国を陥れようと画策したのだ。

ハージェス侯国の悪事を知ったエルフたちは嬉々としてこの作戦に参加したのである。


敢えて見窄らしい格好をした彼らは自作自演でお互いを縛り、夜間の内にハージェス侯爵邸の敷地に転がったのである。

彼らの中には熟練の冒険者も散見された。

この様な高級住宅街とも言える場所で彼らが無力化されているのは違和感しかないのだが、彼らの詳細を知る者がいない以上、特に問題はないだろう。


その中の数人。

幼いハーフエルフの少女たちは猿轡をされていなかった。

彼女は事前に打ち合わせをしていた通り、舌足らずな声で「ハージェス侯爵家を名乗る人間に無理やり連れてこられた」「このまま侯爵領に連行されて、無理やり奴隷にされてしまう」との内容を繰り返しているのである。


だが例え幼女ハーフエルフが泣いていても、侯爵邸の前庭に転がされている大勢のエルフは不自然極まりない。

さすがに第三者の陰謀と思って然るべきだが、この屋敷の責任者たるジェロームが「陰謀だ! 我が侯国は預かり知らん!」と強く否定しなかったので、騒ぎを聞きつけた他の貴族たちはハージェス侯爵家との関連を勘ぐってしまう。



「…貴国が未曾有の不作に追いやられているのは存じております。しかし…エルフを無理やり攫うとは、筋違いが過ぎましょうぞ!?」


「左様! ジェローム殿、貴殿は父上に何を教育されたのだ。これが映えあるアリアンサ連邦貴族のなさり様ですか!?」


「ぐ、ぐむむ……」(キラ…)



ジェロームは他の貴族に責められていた。

彼は侯爵家の嫡男として、このような状況に慣れていなかった。

しかも彼は大量のエルフを見て、内心では「何者の陰謀だ!?」とは思わなかった。

事実、彼は非合法組織に属する連中に渡をつけて、彼らにエルフの拉致を命じていたのだ。

そのため「これ程のエルフを調達できるとは、下賤な者どもの中にも見所のある者がいるのだな」と思ってしまったのだ。

同時に「これ程までの大量のエルフを農奴として侯爵領に送り込めば、状況は劇的に改善する」とさえ考えていた。


そもそもジェロームはエルフやハーフエルフなど亜人を虐げる風潮の国に生まれ育った貴族である。

それ故に「おお、これ程の農奴(エルフ)が手に入るとは僥倖だ! 天は未だにハージェス家を見放してはおらなんだ!」と喝采を叫びたいのが本音である。

しかし、周囲の貴族たちが己を非難する場において…彼らが憤慨する気持ちは理解し難いものの…本音を言うと状況が更に悪化するのではないかという理性も在った。

ジェロームはどうにかしてこの場を切り抜け、エルフ共を裏で密かに侯国へ運べないかと思案する。



「…ははは。彼らは勘違いしている様ですな。エルフたちを無理やり攫った? それに奴隷に堕とすなど、それは誤解というものです。彼らには正当な報酬を用意しております」(キラッ)



ジェロームはそう言うが、拘束されたエルフを前にしては説得力に欠けまくっている。

すると、その場に更にもう一人のエルフの女性が現れた。

誰であろう…ヴェクストリアスである!

…ちなみに彼女の服装は冒険者時代のそれであった。



「そこまでだ!」



彼女はエルフたちとジェロームの間に割って入った。



「な、なんだ貴様は! ここは下等なエルフが足を踏み入れて良い場所ではない!」(キラッ!)



ジェロームは吼える!

しかし、ヴェクストリアスは落ち着いた声で応対する。



「…エルフを下等とは…な。しかしそれを貴様に言える資格があるのか?」


「なんだと!」(キラッ!)


「私は既に冒険者を引退した身ではある。しかしとある筋から依頼を受け、拐かされたエルフたちを捜索していたのだ。…まさか、人間の貴族に囚われていたとは…」


「…エルフを我らが拐かしただと? コレ(・・)の事を言っているのなら、それは筋違いというもの。コレは正当な取引(・・・・・)で手に入れたのだ」


「ふん! 何が正当な取引だ! 私の調査(・・)によると、ハージェス侯国はエルフを拉致し、悍ましい方法でハーフエルフを増やし、農奴として酷使する事を国策とするという。これの何処が正当な取引だと言うのだ!」


「「「ッッ!!」」」


「既に侯爵領では大量のハーフエルフが農奴として酷使されている。つまり彼らはハージェス侯国によって強制的に(・・・・)産み出されたハーフエルフだったのだ!」



そう。

ヴェクストリアスが思いついた計画とは、ハージェス侯爵家に大恥をかかせ、風評被害で打撃を与える事である。

それにより侯爵家に与する者を激減させるのだ。

証拠もないのに適当な調査結果(・・・・)を話す彼女だが、こうしてハージェス侯爵家の評判を落としまくった後、主要人物を闇に葬る手はずであるため、どんな事でも言えるのだ。

しかもサギニが侯国本国を滅ぼす予定であるため、侯爵家の報復も心配しなくてよいという状況である。



ざわざわ。

ガヤガヤ。



「な、なんという野蛮な…」

「栄光ある侯爵家の裏に、そにようなおぞましい行為が隠されていたとは…!」

「ハージェス侯爵…そこまで堕ちたていたか!」



この場にいる野次馬貴族たちが口々に非難を始める。

貴族は醜聞を好む人種であるため、さらに縛られたエルフたちを見て、ヴェクストリアスの言葉を疑う事はしなかった。


さすがにジェロームも言われたままではない。


だが彼が「貴様の話には証拠も何も無いではないか! 下等な亜人に貴族を陥れる事は許されん!」と反論しようとすると、幼女ハーフエルフたちが「おうちに返してぇ! おかーさーん…!」「ハージェス、怖いよう…。えぐえぐ」と泣き叫ぶので、場の雰囲気はさらにジェロームにとって悪くなっていく。






そして。


シュピンッ

ついに逆上したジェロームは腰のレイピアを抜剣した。

そして剣をヴェクストリアスに突きつける。



「なんなのだ貴様は…! エルフは人間の役に立つのが本懐ではないかッ! エルフが拐われただと? ふざけるな! このエルフ共は正当な対価を以て下賤な者共から手に入れたのだ! 騒ぐなど筋違いだッ! 愚か者めッ!」(ギラギラッ!)



その暴言に、状況を見守っていた貴族たちも狼狽する。


ガヤガヤ

ザワザワ



「人間の貴族…。それが貴方たちの本音ですか?」



ヴェクストリアスは周囲の貴族たちを見回すようにして問いただすが、彼らは「とんでもない。我らとハージェス侯国の見解は異なる」「野蛮な行為は許されん」と首を振るのみである。



「…………貴様らぁッッ!!」(ギラッ)



その言葉に更に逆上したジェロームの目は狂気の光を孕んでいるようである。

既に彼にはいつもの貴公子としての雰囲気はいささかも感じられない。

そして彼はヴェクストリアスの足元に金貨を投げつけて傲慢に吐き捨てた。



「エルフ、貴様は冒険者と言ったな。ならば依頼してやろう。お前はエルフの集落を襲撃し、エルフを狩ってこい。狩り尽くした後は貴様も農奴になれ! ハージェス侯国の隆盛のために身を捧げよ!」(ギラギラ〜ッ!)



周囲にいた貴族たちも慌てふためく。



「ジェ、ジェローム殿、乱心したか!」

「いい加減、剣を納めよ!」



するとジェロームは貴族にも剣を向けた。



「ひぃッ!?」


「貴公らも黙って頂きましょう。我が国の問題は我が国の流儀で解決するのです。他国の人間にとやかく言われる筋合いはありません! …宣言します。このエルフ共はハージェス侯国の復興を期待しておられる名士からの贈物でございます。解放などあってはならないのです…!」(ギラリ!)


「…先程は下賎な者に対価を払って手に入れた…と…」


「煩い!」(ギラッッ)



既にジェロームの言葉は体面を重んずる貴族のそれではない。

衆人環視のうちでの侮辱と、侯国の復興への重圧からタガ(・・)が外れてしまったかのようだ。


ジェロームの独白は声高く続く。

独白だからだろうか。口調もどんどん荒々しいものになっていた。



「…ふん! かつて我が国の権益のお零れに与ろうと多くの者がすり寄ってきた。しかし、窮した途端に離れていく。このナキア伯国もそうだ! 叔母が正室として嫁いだとはいっても、その公子たるグスタフは廃嫡された! 寄子たるもの団結して親を盛り立てるものではないのか!?」(ギラ!?)


「…侯国全土の農地が全滅なのだ…。盛り立てる云々を超えているだろうに…」

「…うむ。身勝手な話よな」



遠巻きに眺める貴族たちは、ジェロームの勝手な言い分を冷めた目で見つめる。



「黙れぇぇッ!」(ギララッ!)



ジェロームのレイピアが一閃される。

すんでのところで貴族に怪我はなかったものの、彼の礼服が切り裂かれてしまった!

例えジェロームが侯爵家の公子とはいえ他家の当主の服を辱めたのである。これでジェロームに同情する者は一人として存在しなくなった。



己の周囲にある暗雲を切り裂こうとするかのように、ジェロームは闇雲にレイピアを振り回し続ける。

貴族とその関係者たちは、蜘蛛の子を散らすようにジェロームの凶剣から逃げ惑うのに必死だ。



「エルフ共を奴隷とし、我がハージェス侯爵家は再興する! 貴様らとは絶縁だ! 麦の一粒であろうとも恵んでやるものかぁッ!」


「「「やめよ! 落ち着け!」」」


「煩い! 私は(ジエラ)を手にし次第、この国を離れる…! ここにいるエルフどもを奴隷とし、再びハージェス侯国に隆盛をぉぉぉッッ!!」(ギラァッ!)



その時だった。

今までハージェス侯爵家に屈辱を与えるためのエキストラとして縛られていたエルフやハーフエルフたち。

彼らはジェロームの言葉に無言のまま怒りに震えていた。


(………)

(………)

(………)



エルフたちは下位精霊を使役する存在だ。

そして目の前にいる狂った人間の男(ジェローム)に対して、静かに怒りに燃えていた。

怒りに震えるのはヴェクストリアスも同様。

今の彼女は冒険者時代の姿であるため、使役できる精霊も下位精霊となっているが、真の姿であるニンジャの時は上位精霊を使役する存在なのだ。

そのためだろうか。

ヴェクストリアスを中心として、この場にいる大勢のエルフたちから下位精霊の力が立ち上っていく。




ァァァァァ…




精霊が唸っているようだ。

だが、精霊遣いではない者に精霊の活動を知覚する事は出来ない。

仮にこの場に集う貴族の中に精霊を知覚出来る者がいたら、無数の精霊の乱舞に目を奪われた事だろう。

対して、エルフたちは精霊の大群に呆然をしている。


精霊たちはエルフたちの『ジェロームに対する怒りの感情』で喚び出されたのだ。

そのため召喚主である彼らが具体的な命令を下さずとも、精霊たちはジェロームの排除を目的とするかの様に活動を開始する。



「…む!?」(キラ?)



ジェロームの周囲が光り輝き、小さな無数の光らしきモノが彼を拘束し始めた。

無数の精霊たちが集まり、凝縮し、精霊遣いでもない連中の目にも光となって見えるようになる。



「な、ぁ、ッ!?」(キ…)


「おわあぁッ!」

「な、なんだこの光は!?」



精霊に拘束されているのだろうか。

それとも得体のしれないナニカに纏わりつかれた事で、金縛りのような状態になってしまったのだろうか。

ジェロームはピクリとも動くことができない。

そして尋常ではない状況に恐怖を感じた貴族たちが、ジェロームから距離を取るように逃げ出し始める。



だが人混みの中に、とある少年(・・・・・)が呆然と突っ立っていた。


少年の名はテオドール。

かつてベルフィを愛し、ベルフィは誰にも渡さないと心に誓った少年だった。

しかしベルフィは娼婦となり、彼の寵愛を受けるに相応しくなくなった。

そこで彼は次の愛人(助手)候補を探しているところだった。

そんな折、たまたま通りかかった彼はジェローム邸にエルフが大量に転がっているのを発見し、己に相応しい年若い助手(エルフ)はいないか見物していたのである。

偉大な魔術師である彼の伴侶は、彼に相応しい知識と教養と美貌を併せ持つべきなのだが、愛人…いや助手ならば彼の眼鏡に叶うなら問題ないのである。



「ッ! そこにいるのはテオドールかぁッ! コレは! この光は魔術によるモノなのか! 突っ立っていないで俺を助けろぉぉッ!」


「…あ? え?」



今の今までエルフ少女たちを視姦していたテオドールは状況を理解していない。

そして精霊たちはジェロームを埋め尽くした!




ズオオォォォ…!


地、水、火、風。

下位精霊とはいえ、それらが混じり合った暴虐の嵐は、柱状となってジェロームを飲み込む!

その余波がテオドールも飲み込んでいく。




「…………ッッッ」(…)





恐るべき光に奔流の中、ジェロームは悲鳴も上げられずに、まるで掻き消されるように一瞬で消滅したのである。


そしてテオドールは無傷で気を失っていたのである。






静寂。

誰も何も話さない。

それほどまでに驚くべき光景だった。



「い、今のは……。この少年の魔術か…?」


「テオドール? おお! 噂のドラゴンスレイヤーか!」



その言葉にハッとしたのはヴェクストリアスである。

彼女は「見事な魔術だ! 乱心した男から貴族の皆様を守るべく、あれほどの魔術を…!」と、テオドールを褒め称えた。


なんと、彼女は精霊による貴族(ジェローム)殺害から皆の目を逸らそうと、この精霊魔術による攻撃を誤魔化し、テオドールの魔術によるものと断言したのだ。


エキストラ役のエルフたちもヴェクストリアスの言葉を忖度する。

例え憎っくき人間(ジェローム)とは言えども、貴族殺害に加担したとなればどんな咎めがあるか分からない。

彼らは黙って感謝の眼差しをテオドールに向けている。


そして貴族たちは、エルフたちの言葉に押されるようにして、自分たちをジェロームの刃から守ってくれた(?)少年に駆け寄る。


ざわざわ

ざわざわ


「こ、この少年は?」

「た、確かコーリエ伯国の公子殿ではないか」

「うむむ。ドラゴンを屠る恐るべき魔術の遣い手と聞いていたが…これ程の腕前とは…!」

「我らを救うべく、仮にも侯爵家を断罪するとは。気高い精神の持ち主なのだな」

「うむ。いざとなれば我らが証言しよう。この公子殿は、エルフの大量誘拐という大罪を犯したハージェス侯爵家に怒り、さらに発狂したジェロームから我らを守るべく、止むを得ず大魔術を放ったのだと…!」



なんと、魔術の心得のない貴族たちの認識は「先ほどの光の奔流はテオドールによる高位の攻撃魔術だ」という事に落ち着いた。





だが当のテオドールは気を失ったままであったのだ。




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