大魔術師・ヘキセン
娼館『海辺の歌姫』の地下倉庫。
その地下倉庫と隠し扉で繋がる此処は、娼婦たちには存在すら知られていないヘキセン専用の実験室だ。
薄暗い部屋である。
部屋の中央には大釜が置かれており、そこには黄金色の粘体が燻んだ輝きを放っている。
釜には得体の知れない精緻な紋様が描かれており、その周囲は模様なのか文字なのか判別つかないモノで埋め尽くされていた。
大釜の紋様と模様は脈動するように淡く光り輝き、その輝きを黄金色の粘体に注ぎ込むポンプのようだ。
魔術の心得がある者が見れば、黄金色の粘体は魔術処理が成された黄金で、淡い輝きは魂が視覚化したものだと気づくだろう。
その大釜の傍には一人の美女が佇んでいた。
年の頃は女としての爛熟期。
小娘とは間違っても言えない大人の女だが、女としての衰えは微塵も感じさせていない。
その肌理細かい白い肌は艶と張りに溢れ、それでいて包み込む柔らかさに優れているようだ。
艶やかな黒髪は大釜の黄金色の輝きに照らされて、白い肌との絶妙なコントラストを描いている。
艶然と微笑む彼女は全裸だった。
まるで情事に耽っていたようにその白い肌が上気している。
彼女は他者には理解できない言葉と共に中空を指でなぞるように動かすと、白い粘液状のナニかが指にまとわりついた。
それは魂が固形化したもの。
この娼館…水辺の歌姫には特殊な結界が張られており、その効果は『魂の収拾』である。
客が娼婦に放った精液の中にある魂を収奪し、この実験室に集めているのだ。
美女は魂が付着した指で大釜に複雑な魔術文字を描く。
「…第三十七精魔導術式。起動」
美女の呟きを受け、大釜の紋様の輝きは先程とは異なる脈動を始めた。
「…長かった…。ようやくここまで漕ぎ着けられた」
美女の名はヘキセン。
ヘキセン・トリスメギストス。
高級娼館『海辺の歌姫』の楼主であるが、その正体は悠久の時を生きる魔女である。
普段は老婆の姿であるが、今の彼女は女の盛り。
幻術ではない。
彼女は精魔術の副次効果で老化を止め、更には肉体年齢を自在に変更できるのである。
『精魔術』。
それはヘキセンが打ち立てた魔術体系である。
しかし体系とは言ってもヘキセンの後に続く者は皆無であった。
何故ならその悍ましさ、不遜さ故に。
古来より魔力と魔術は不可分である。
この人間界の魔術師には常識であるが、魔術師は魔力を消費する事で魔術を行使する。
優れた魔術を開発しても、それを生かすだけの魔力がなければ意味がなく、また逆も真なりである。
そして優秀な魔術師が従来よりも魔力消費を抑えるための『効率がいい術式』を組み上げたところで、『効率の良い術式』というのは開発者個人の独占とはならず、近い将来に他の魔術師に追いつかれてしまうのも自明の理。
同じ世界に産まれた個人が、他を圧倒する技術、それも何世代も先取りした隔絶した技術を持つなど夢物語に過ぎない。
結局は魔術の種類や威力も効果範囲も、各々が保有する魔力の多寡に左右されるのである。
そのため、魔術師にとって『魔力をいかに効率的に得るのか』、という事は長年のテーマであった。
魔力の源泉には大別して二種類ある。
未熟な者は自己の生命力…即ち己の魂の力を魔力の源泉とする。これは自己の内側から魔力を生み出すので、効率的ではあるが容量に欠ける。
ある程度熟練すると自己の外側…即ち大気に宿る力を魔力の源泉とする事が可能となる。だが大気に宿る力は希薄であるので、上手く自己に取り込むには生まれ持ったセンスや力量に左右される。
よって魔術師は自己の内側と外側の力を自分に合ったバランスで魔力に変換しているのである。
そんな折、当時天才魔術師として名高かった若き日のヘキセンは、ふと、ある発想を得た。
男性の精液は女性の胎にたどり着いて新たな生命を作るという。
ならば精液には魂の基が宿っているのではないか、という事に。
そして研究を進めると、精液には少量でも億を数える魂を内包している事を発見した。
「この魂は未熟ではある。しかし、精液から億の魂を抽出できれば、そして魂から魔力を精製できれば…!」
まさしくそれは天啓とも言える閃きであった。
だが誰もヘキセンの考えを理解する者も、ましてや同道する者などいなかった。
しかしヘキセンにとって他者の理解などどうでもいい。
己の信ずる魔道を極めるのみ。
彼女は精液の中に犇めく魂を活用するための行動…男漁りを始める。
女である彼女が最も効率的に精液から魂を得、それを魔力に変換するにはどうすればいいか。
それは男から精液を注いでもらい、生命を形作る子宮において錬成するに尽きる。
それは同時に若き美貌の天才魔術師の闇堕ちを意味していた。
イキの良い精液を射精してくれるなら、彼女持ちだろうが妻子持ちだろうが御構い無しに誘ったのだ。
運良く彼女は男なら欲情せざるを得ない淫らな肉体美を誇っていたため、彼女の毒牙にかかって身を持ち崩した男性は多かった。
同時に男を寝取られた女性の全てを敵に回したとも言って良い。
その結果は魔術学会からの追放処分。
ヘキセン・トリスメギストス。
三倍偉大なヘキセン。
その栄光の名は、あらゆる魔術師の記録から抹消され、今に至る。
「……研究には大量の黄金が必要だった。それこそ混ぜ物がしてある金貨などでは気が遠くなる程の量が…。だが、こんなにあっさりと…」
ヘキセンは部屋の隅に山積みになっている金塊を眺める。
その金塊は一切の混ぜ物をしていない、まさに真なる純金であった。
コレを毎日買い出し袋が満載になるまでジエラに貢ぐ男がいるというのだ。
男は広大な金鉱山を所有し、大勢の労働者を使って大量に掘り出し、更に未知の素晴らしい技術によって金を精製して、それを全てセフレに与えているのだろうか。
いや、そのような事はどうでもいい。
ヘキセンは儀式に集中し直した。
「…第三十八精魔導術式、起動」
大釜の中の金塊は液状になり、少しずつ魂を取り込んでいく。
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娼館には赤子の魂に成り得なかった無数の魂が閉じ込められている。
そして魂は実験室に集められ、濃縮されて大釜の中に蠢いている。
そしてその魂は大釜に満たされた黄金…最も安定しているといわれる金属…と結びつけるのだ。
ヘキセンは『淫者の石』を創ろうとしていた。
『淫者の石』
それは精魔術において、精液から魂を抽出し、さらに魂のもつ力を魔力に変換するための補助魔道具である。
ヘキセンの子宮は自らを被検体とした儀式によって、既に精液から魂を抽出しやすいように錬成済である。
だがそれはあまりにも力不足であった。
それによって得られた成果は〝老化停止″と〝外見年齢の変化″という、本来の目標とは程遠いモノだった。
つまりヘキセンは『淫者の石』を自らの子宮と同化させ、子宮を〝精液(魂)を原料とする魔力錬成器″とするのが目的なのである。
まさに魔道を追及する者の執念の悍ましさと言えるだろ。
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そして。
魂を大釜の中の黄金スープと交わらせ続けた結果、あれだけあった大量の黄金は大釜の底で一本の棒状のモノへと変換された。
それは、黄金の男根だった。
金属でありながら脈動するように、ビクンビクンと震えている。
「…『淫者の石』。ついに、完成した…」
見惚れるヘキセンだが、まだ儀式は終わらない。
ヘキセンは大釜の中に入る。
そこは精魔術儀式の余波なのか、世界から魂が集まっているかのような力場が形成されていた。
震える手で『淫者の石』…黄金男根を手にとると、ソレは熱く、生命力に満ち溢れている。
さらに間近で見るソレは太く、長く、カタく、反り返っており、なかなかの巨根であった。
「さあ…儂と一つに…」
ヘキセンは涙する。
数百年の長きにわたり恋い焦がれた相手との交合が成されるのだ。
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・
既にどれほどの時間が経過しただろうか。
ヘキセンは魂が渦巻く大釜の底で『淫者の石』との情交に耽り続ける。
常人…いや、現代の魔術師には理解できない呪文を唱えながら。
いや、喘ぎ声すらも呪文の一部に聞こえるかも知れない。
やがて。
ヘキセンの下腹に黄金色の染みが浮き出てきた。
そして『淫者の石』は消えていた。
いや、消えてはいない。
ヘキセンの子宮と同化したのだ。
「…………」
ヘキセンは大釜の底で動かない。
まるで億兆の男と乱交したような感覚で、身体全てが脱力し、溶けてしまったかのようだ。
彼女は思い出す。
今までの日々を。
魔術師として栄光の極地にあった若かりし頃。
そして追放。
片田舎で身を売って日々を過ごした。
汚れた彼女を愛してくれた男もいたが、幾度となく死別した。
情事の最中に、男の女が踏み込んで修羅場となった事など日常茶飯事。
浮浪者のような汚い男と寝たことも数知れない。
「……ふふ」
ヘキセンふと小さく嗤い、ゆっくり大釜の縁に手をかけ、身体をおこす。
ひた、と床に立つヘキセン。
特筆すべきは彼女の下腹部にある黄金色の模様。
ハート型を模したソレは精魔術における〝精魔淫紋″であった。
ついに、ヘキセンは己の魔道の終極に到達したのである!
だが、精魔淫紋は黄金色をしていても全くと言っていいほどに輝きに欠けていた。
「…ふ…ふふ…。…ふくく。魂は淫紋生成で空っ欠だ。この姿を維持するギリギリ。補充せねばなるまいよ」
笑いも込み上げてくる。
さあ、最後の実験の始まりだ。
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・
外は深夜。闇夜であった。
既に出歩いている者も皆無。
いや、松明を手に街を巡回している警備兵三名のみである。
「ったく毎晩面倒な事だ。こんな月も出ない夜は盗人も眠りこけているぜ」
「全くだぜ。当たり前だが街娼もいねぇし。早く官舎に戻って晩酌と洒落込みてぇぜ」
そんな後輩二名に、上官たる隊長が叱咤する。
「たるんどるぞ! 先日も夜間に街路樹が燃え、石畳が広範囲に破損する事件があった事をもう忘れたのか!? 夜間、この伯都の治安を守るのが我らの務め!」
「「へいへい。わぁってますヨ」」
「ぐ…。だいたい貴様らの勤務態…ど?」
警備兵の前に、松明の光に照らされたローブ姿の美女が立っている。
「ど、どうしたのだご婦人。こ、こんな夜更けに」
隊長の声が上ずっている。
目の前にいるのはそれ程までの美女であった。
更に目の前の美女は、男の股間を直撃する淫蕩な微笑みを浮かべており、彼女を見ているだけで肉欲、性欲、愛欲、淫欲がこれでもかと煽られる。
美女の正体、それは無論ヘキセンであった。
「ふふふ。こんな夜中までご苦労な事だ。…遊んでかないかい?」
ヘキセンはおもむろにローブをはだけると、ローブの下は全裸であった。
「「「ッッ!!?」」」
魅惑的に肉感的な肢体。
それは男の性欲処理のために特化したかのような、素晴らしく淫らで美しい、淫靡極まりない肢体だった。
・
・
三人の兵士たちはヘキセンに絞り抜かれてしまった。
死んでこそいないが、下半身丸出しのまま失神した彼らは、翌朝には発見されて大騒ぎだろう。
そして全裸なヘキセンは空に在った。
飛行魔術で空を飛んでいるのである。
それは即ち、今まで魔力を得られなかったヘキセンが、無事に精液から魔力を精製できたという証左である。
「…ようやく、ようやくだ。ついに、この身に…精魔術の奥義を得た」
手を掲げる。
彼女の手に魔力が集中する。
精魔淫紋が輝き、ヘキセンの子宮に在る精液から更なる魔力を精製する。
「…うふふ。久しぶりだからねぇ。加減ができるか分からない…」
キュオオォ…!
唸りを上げて収縮する魔力。
闇夜にあって、強大な魔力の輝きはまるで太陽のようだ。
ヘキセンはとある方向を見据える。
ヘキセンが目に魔力を込めると、闇夜も昼間の様に見えた。
「…目標は…海にしようか。実験の舞台に何ら問題ない」
夜の闇にあって、夜の海は暗黒のように暗かった。
「さて…と」
ヘキセンは一呼吸おいて叫ぶ!
『吹き飛びなあぁぁッッ!!』
そう叫んだ瞬間!
手に集まった光球が闇に吸い込まれるように光速で放たれた!
一瞬の間を置いて水平の彼方の海が火を吹く!
闇夜ではある。
だが今や赤い炎の輝きが闇を照らしている。
照らしているどころではない。
海が大噴火したのだ。
今が昼日中であったなら、巨大なキノコ雲が見えるに違いない。
……ドグアァァァァッッ!!
そして、はるか遠くの噴火から、かなり遅れて轟音が轟いてきた。
水が雨のようにパラついている。
空気がビリビリと震えている。
「は、はは。あ…はは…。ふふふぁっはっはっは!」
笑いが止まらない。
止まるはずはない。
コレ程の破壊魔術は彼女の記憶にない。
もしかすると魔術師数百人規模で長期に渡って行う儀式魔術なら可能かも知れないが、それをヘキセン一人で成したのだ!
彼女の数百年にも及ぶ悲願は、今ここに達成した。
そしてひとしきり笑った彼女は虚空に向かって吠える。
「見たかァッ! コレが儂の研究成果! 儂の精魔術の深奥よ! 儂を色魔扱いして追放した盆暗ども! 冥府で己が不明と未熟を嘆くがいい! ふあぁっはっはっは!」
赤い光に照らされたヘキセンの白い裸体は、とても、とても美しかった。
・
・
翌朝。
元の老婆な姿となったヘキセンは、いつもの様に食堂に姿を現した。
「あ、ヘキセンさん。おはようございます」
「…そういえば昨日の夜、結構大きな地震ありましたね。今も海の彼方から煙が上がってるし…。ヘキセンさんはご存知ですか?」
「…知らないねぇ。ま、そういう事もあるさね」
人生を賭けた命題でもあった精魔術を完成させたヘキセンは稀に見る上機嫌…ではない。
いつものように帳簿と睨めっこして眉間に皺をよせることもない。
だが、些か表情に翳りがある。
「…朝の仕事が終わったら、セフレたちにアタシの部屋に来るよう言っとくれ」
・
・
ヘキセンの私室。
高級娼館の楼主としては飾り気のない、必要最低限の粗末な家具しかない部屋である。
全ての稼ぎを精魔術実験のために金貨に替えて、それを鋳潰したために、彼女の生活はカツカツであったからだ。
ヘキセンはセフレたちを待つ。
しかしヘキセンの心は落ち着かない。
精魔術の行使に特化した身体が馴染んでくると共に、今まで感じた事のないナニかを感応するようになったのだ。
(…こ、この気配は? あの女たちは初めて逢ったときから…ナニかあるのではないかと思っていたが…。…あの女たちは……何なのだ?)
ヘキセンは精魔術師として完成した事で、無数の魂を自らに取り込む事となった。
その結果、彼女の『魂の位階』ともいうべきモノが引き上げられたのだ。
それは魂が進化したとでも表現できるだろうか、今まで知覚出来なかった分野での知識や理解の枠が拡大したと表現するのが適切だろうか。
(…恐ろしい。懼ろしい。畏ろしい…。なんなのだ。この気配は…?)
ヘキセンは身の震えが止まらない。
気配の正体は分かっている。
ジエラ、そしてベルフィのものだ。
スレイやサギニから発せられる気配も尋常ではないが、それ以上なのが前述の二人のモノだ。
(……この気配は…この世のモノとは思えない…。しかし…いや、まさか…?)
ジエラとベルフィが何者なのか、簡単な単語で説明できそうなのだが、常識がそれを否定する。いや否定したい。
そうこうしているうちにジエラたちがヘキセンの執務室に現れる。
彼女たちはヘキセンに促されたまま長椅子に腰掛けた。
「すいません、遅くなって」などと照れた愛想笑いをしているジエラは、露出過多なタンクトップとホットパンツ。その上からエプロンを着用している。
寝間着のようなスケスケなベビードールを着用したベルフィはヘキセンが視界に入っていないようだ。ジエラの傍に寄り添い、彼女の腕を抱き抱えている。
スレイは棒状の飴を舐めていて無言だ。足を豪快に組んでいるため、露出過多なチャイナドレスから太ももとそれ以上の部分が見えている。
サギニはジエラたちと同じ長椅子に座る事なく、彼女たちの後ろに無言で立っている。主人を護る誇りでもあるのか威圧感はかなりのもので、現在は超ミニスカ甚平姿であるが、それに色気は全く感じられない。
なお、ヴェクストリアスはサギニの命令で暗躍中であるため不在だったが、今回の場合、彼女はヘキセンの興味の対象外だ。
「…………」
ヘキセンは目の前の女たちを前にして平常心を装うのに必死だった。
正確にはジエラとベルフィに対して過度な畏れを感じてしまっている。
(…気配だけで押しつぶされちまいそうだ…。…化物? い、いや、化物などと甘いモノではないね…)
夏の盛りだ。
朝とはいえ、既に気温は上がりはじめている。
しかしヘキセンは部屋の気温が落ちている錯覚に陥っている。
(な、なんでこんな化物共がこの世にいるんだい。この娘たちにかかっちゃ、精魔術も児戯扱いされちまいそうだ…)
精魔術を極めたヘキセンは、この人間界最高最強の魔術師と言える。
だが、彼女がどう足掻いても彼女たちと敵対した瞬間に消されてしまうだろう。
死神のような超越存在と同じ部屋にいるような緊張感で、ヘキセンの喉がカラカラに乾いていく。
ヘキセンがジエラたちを呼んだのにも関わらず、ヘキセンは無言のままだ。
その重苦しい雰囲気を知ってか知らずか、ジエラが「あのー」と声を出した。
「な、なんだい」
「何か御用でしょうか。それとも…何か失敗しちゃいました? …えへへ」
「………」
ヘキセンは黙った。
「えへへ♡」と可愛らしく誤魔化し笑いをするセフレだが、彼女が超絶美形という事もあり、それが相まって恐ろしさしか感じない。
しかし彼女は智の探究者である魔術師だ。
勇気を振り絞って「アタシは魔術師だ。いくら目の前にいる連中が化物だからって、識らないコトを放置するなんて事は魔術師としてあり得ないよ!」とばかりに、気合いではなく知的好奇心で己自身を奮い立たせ、セフレたちの正体を追求しようとして……断念した。
そのようなコトをすれば殺されてしまうかもしれない。
そして。
「…じ、実はね」
「はい?」
「………アタシは長らくとある魔術を研究していたんだが…、最近ソレが完成したんだ。完成したのはアンタ…いや貴方様のおかげさ」
「貴方様? なんですかヘキセンさん? どうしちゃったんです?」
セフレはヘキセンの態度を訝しむが、ヘキセンは応えず話を続ける。
「だからこの力は貴方様のために使おうと思ってね。そこでお願いがあるんだが…アタシを貴方様の配下に加えてもらえないかい?」
「……え?」
「アタシはアンタの庇護下…いや下僕として余生を生きたいんだよ。…長年の命題が解決した事だし、まだ死にたくないんでね…」
「………え? 、え? えあ? えええぇぇ…ッッ!!?」
かくして、大魔女ヘキセン・トリスメギストスはジエラの下僕となった。
具体的にはサギニ配下のニンジャとして採用されたのだった。




