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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第6章 第一次大戦編

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第99話 セアルの予知

「気持ちは分かるが、ワシはユートを仲間にすると決めた。だから殺すのは勘弁してもらいたい」

「……は!? まさかあんな美しさの欠片もない人間を七星天使に加えるっていうの!?」

「ウリエルも死んで人員が不足しているものでな。お前を圧倒するほどの実力の持ち主ならば申し分ない。今は『七星の光城』で大人しくしてもらっている」

「そ、そんなの……!!」

「遺恨は残るじゃろうが、もう決めたことじゃ。お前にも受け入れてもらうしかない」



 しばらく拳を震わせるイエグだったが、やがて気持ちを鎮めるように息をついた。



「……リーダーの決定なら仕方ないわね。七星天使の今後を考えたら戦力の増強も必要だろうし、私がとやかく言う資格もないわ」

「そう言ってもらえると助かる。それより『狂魔の手鏡』の破壊任務については大義であった。もしあれが人間や悪魔の手に渡っていたら面倒なことになっていたからな」

「……人間に敗北した上に任務まで失敗していたら、私の立つ瀬がなくなっていたでしょうね」



 と、イエグは苦笑いをこぼした。



「それで早速なんじゃが、イエグには次の任務をお願いしたい」

「次の任務?」

「人間の魂狩りじゃ。今のところ予定の半数ほどしか集まっておらんからな。今はガブリが一人でやっておる」

「他のメンバーは?」

「ミカは途中で体調を崩したので城に戻って療養中、ラファエはミカの看病、キエルはいつも通り地上のどこかで呑気にバイトをやっておる。まったく困ったものじゃ」

「……リーダーというのも楽じゃないわね」



 溜息をつくセアルを見て、イエグは同情するように言った。



「だが立て続けに任務というのも酷じゃろうし、まずは城に戻って身体を休めた方がいいじゃろう。その時に【能力共有】でワシの【魂吸収】をお前にも与えるとしよう」

「……そうさせてもらおうかしら」




 セアルとイエグは『天空の聖域』に帰還するため、ゲートの場所に【瞬間移動】で転移する。そこで二人はある異変に気付いた。



「ワシの【認識遮断】が解除されている……!?」



 普段のゲートはセアルの【認識遮断】によって外部からは見えない状態になっているはずだが、今のゲートはそれが解除されており、誰からも見える状態になっていた。



 実はこの時ユートとセレナは既に『天空の聖域』から脱出しており、【認識遮断】はサーシャによって解除された後だった。



「誰かが【解呪】を使って解除したと見て間違いないわね」

「ああ。だが大前提としてゲートの存在と場所を知らなければ解除のしようがない。一体何者が――」



 するとセアルは途中で言葉を止め、額を指で押さえた。



「どうしたの?」

「……すまんイエグ、今は話しかけないでくれ。ワシの【未来予知】が発動している」



 セアルの【未来予知】もサーシャのものと同様、発動タイミングを自分で選ぶことはできず、いつどこで発動するかは自身にも分からない。セアルは目を閉じ、脳内に浮かぶ映像に集中させる。



「こ……れは……」



 約一分後、セアルは目を開ける。信じられない未来でも視えたのか、その顔はすっかり青ざめていた。



「顔色が悪いわよセアル。どんな未来が視えたの?」

「…………」

「セアル、聞いてる?」

「! あ、ああ……」



 ようやく呼ばれていることに気付き、セアルは生返事をする。



「……イエグ、悪いが先程言った魂狩りの任務は取り消す。キエルとガブリも呼び戻さなければ……」

「えっ……どうしたのよ急に? もしかして今視えた未来が関係してるの?」

「そんなところじゃ。詳しいことは後ほど説明するから、お前は先に城へ戻れ。ワシは地上にいる二人に連絡を済ませてから戻る」

「……わ、分かったわ」



 一人ゲートの中に入るイエグ。それからセアルは念話をキエルに繋げた。



『セアルか。どうした?』

「お前、今何をしている?」

『俺は現在戦場に赴いて避難民に支給品を配っている。日々生きるか死ぬかの戦いだ』

「……どうせまたティッシュ配りのバイトじゃろう。飽きないなお前も」

『それで俺に何の用だ?』

「至急『七星の光城』に戻れ。事情は後で話す」

『ふっ、それはできんな。避難民を見捨てて戦場を離脱するなど戦士としてあるまじき――』

「頼むキエル。今回ばかりは言うことを聞いてくれ」

『……!』



 二人の間に僅かな沈黙が流れる。



『……了解した。すぐに戻ろう』



 セアルの声色からただならぬものを感じ取ったのか、キエルはそう答えた。セアルはキエルとの念話を切り、続いてガブリに念話を繋げる。



『んだよセアル、何度も念話してきやがって。いくら俺のことが恋しいからってよぉ』

「至急『七星の光城』に戻れ。これは命令じゃ」

『……ああっ!? 戻ってくるなと言ったり戻ってこいと言ったりホンットいい加減に――』

「用件は以上じゃ。無視したらタダでは済まさんぞ」



 一方的にガブリとの念話を切るセアル。二人への連絡を済ませたセアルは、ゲートを通じて『天空の聖域』に帰還する。そこから更に【瞬間移動】を使って『七星の光城』の扉の前に転移した。



「せ、セアル様、お戻りになられたのですね!」



 セアルが扉を開けて城の中に入ると、下級天使の一人が取り乱した様子で駆けつけ、セアルの前で膝をついた。



「ご報告申し上げます。セアル様が城にお連れしていた人間の男女二名に脱走を許してしまいました……!!」



 この報告にセアルは驚愕の表情を浮かべる。男はユート、女はセレナのことである。



「馬鹿な、男の方は【魔封じの枷】で呪文を封じていたはずじゃ。まさかその状態から女を救出して城から抜け出したというのか……!?」

「そ、その模様です。下級天使にも甚大な被害が出ており、負傷者と行方不明者は合わせて500を超えております」

「人間一人にそこまで……!? だが、男にはラファエに監視をつけさせていたはずじゃ。ラファエはどうしておる?」

「ラファエ様はミカ様の部屋で気を失っておられるのを発見いたしました。おそらくその人間の男にやられたものかと……」

「なんと、ラファエまで……! あの男の力を完全に見誤っていた……」



 頭を抱えるセアル。ゲートの【認識遮断】が解除されていたのもその辺が絡んでいるのだろう、とセアルは推測する。そしてそれは同時にユートを七星天使にするというセアルの計画が破綻したことを意味していた。



「い、いかがいたしますか!?」

「……釣り逃がした魚は大きいが、過ぎたことは仕方ない。それに今はそれどころではなくなった。報告ご苦労、下がってよいぞ」

「はっ!!」



 それからセアルは七星天使をいつもの会合部屋に集合させた。自分が【未来予知】で視たものを皆に伝える為に。

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