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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
貴族騒乱編
94/193

番外 巳扇律の書

  私は巳扇律(みおうぎりつ)、巳扇の家の者である。


  言の葉に多く少なく問うべき題があるとよく言われますが、そんなに気にすべきことではありません。


  私は私なのですから、ね?


  にしても、今の日はとても暇です。亥尾さんはどこかに走って行ってしまい、話す(あい)の手がいないのです。


  他の人?そうですね、話してて疲れると言われてしまいますので、自ら避けています。どうしてなのでしょう…


  学ぶ(こう)も終わってしまいましたし、そろそろ帰りましょうか。


  「巳扇さん、あなた個人宛に任務が来ています、すぐに支度してください。」


  これはこれは、思い通りには行かないものですね。


  「わかりました、すぐに参ります。」


  数珠丸(じゅずまる)、行きますよ。


  5分後


  任された務めは学ぶ校近くの(あやかし)を討て、軽くこなすことはできないかもしれませんが、(あやかし)は討たせていただきます。


  歩いて数える分、()(まと)の地はここのようですね。


  (せき)(かた)の森だなんて、怖くて震えてしまいますね。


  「そこにいるのはわかっています、出てきていただけませんか?」


  すぐ近くの草むらから(あやかし)の気が漏れていますよ。


  カサカサと草むらが動き、こちらに近づいて来るのがわかります。


  「……」


  「濡れ女、ですか。そう言えばここの近くに川がありましたね、納め得られました。」


  濡れ女、鳥を取る県で生まれた(あやかし)。女の人の顔と蛇の体を持ち、体が常に濡れています。


  濡れている(ことわり)(よし)はただ川に生きているだけではなく、川で濡れることによって、体に付いている水を毒に変えてしまうのです。


  なので触れるのは厳しく禁じられるのです。


  「つまり、私の蛇の眼が活かし躍る時が来たのです。」


  「シャーーーーー!!」


  近づいて来ますか、己のことをよくわかっていらっしゃいますね。


  ですが無い意の味です。


  「蛇眼(じゃがん)!」


  「シャ…」


  石になってしまえば、近づくことも無い理です。


  「さて、任された務めは妖を討つことでしたが、これで終わりとは思えません。」


  「シャーーーーー!」


  なるほど、石になったというのに、己の力でそれを解きますか。


  「()(かた)がありませんね、今の日もお願いしますね、数珠丸。」


  (つら)が倒れちゃいますので、数珠丸で一の気で終わりにしましょう。


  「恨まないでくださいね、恨むなら、己の運を恨んでください。」


  「シャーーーーー!!!」


  「(へび)(まい)神楽(かぐら)!」


  私の神楽は、ただ踊るわけではありません。踊ることによって私の妖の気をばら撒き、あなたに付けさせていただくのです。


  すると、あなたは付けられた所からゆっくりと、石になるのです。


  人には使えませんので、(いま)(たび)(つい)(あらが)(いくさ)では使えませんね。


  では、あなたの魂、ここにて鎮めさせていただきます。


  私は数珠丸を地に置き、手を合わせて祈りました。


  「シャー……」


  あなたが次は、人として生まれ変われますように。


  濡れ女が石になり、そして塵となって消えていきました。


  「これで終わりですね、お疲れ様です、数珠丸。」


  任された務めとはいえ、あまり戦いたくないものです。


  「律ーーー!!こんなとこでなーにしてんのーーー!!」


  後ろから聞き慣れた声と、強い衝と撃に倒されてしまいました。


  「亥尾さんですか…なんでもいいのですが早く離れて頂けないでしょうか…」


  「おっと!ごめんごめん!律がいたからついね!」


  相も変わらず亥尾さんには慣れません…


  「私は任された務めが終わったところなので、今から帰らさせていただきますね。」


  「えええええええ!!せっかく律と遊ぼうと思ったのに!!」


  「また(いま)(たび)にしてください。」


  「え?今なんて喋った?」


  「石にしますよ?」


  「ごめんって!」


  全く、なぜ皆さんは私の言うことがわからないのですか…こんなにもわかりやすく話しているというのに…


  「さ、帰りましょう。」


  「おー!」


  日の常というのは、やはりこういうものなのでしょうか。


  私にはよくわかりません。


  ですが、良いことも嫌なことも、2つ揃って初めて日の常と言えるものなのかも知れませんね。


  どうかあなたに、幸せを運ぶ日々が送れますように。

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