第七十九集 任務開始
9月11日 9:00 1年5組教室
「おまんら、1つお知らせじゃ。」
今日は珍しくちゃんとしたホームルームが始まった。
「今日から、おまんらに正式的な任務が下される。だいぶ前に洋海がやらせた任務の実戦とは違い、本格的な任務じゃ。」
ダメだ、何が違うのかが全くわからん…
「主な違いとしては、自分から任務を選ぶのではなく、おまんら宛に任務が来るっちゅうことじゃ。そして個人ではなく、班ごとに任務を当てられることじゃ。」
なるほど、葉月先生のようになれは個人の任務もあるだろうけど、俺らには班ごとに任務が来るということか。
「おまんらは1年生にしては経験が豊富じゃ。少し例外じゃが、上の判断じゃ、おまんらにはもう任務を当ててもいいということじゃ、これからも頑張ることじゃ。」
どうせいずれは受けなきゃいけない任務だ、早いか遅いかなんて大したことではない。
「わしは別件でやることがあるから、おまんらの任務には同行できない、すまんのう。」
別件か、昨日言ってた用事と関係あるのかな。
「最後にこれだけは伝えておく、任務の内容は様々じゃ。妖魔の発見、討伐。人間の救助、護衛。小さいことから大きいことまで、なんでもありじゃ。その中で、おまんらの手に負えない任務も出てくるじゃろ。その時になったら、迷わずに諦めるんじゃ。自分らの命を最優先にしろ、それが何よりも重要じゃ。」
葉月先生からは熱意を感じる。俺たちのことを大事に思ってくれてるのと一緒に、苦い経験も伝わってくる。
「では早速じゃが、おまんら全員に任務が来てる、準備してくれ。」
早速か、新学期が始まってまだそんな経ってないのに、なかなか休まさせてくれないな。
「任務の内容は各班長に配っておく、各自確認してくれ。ただ最初の任務じゃからといって、生ぬるいやつはないから諦めるんじゃな。」
望むところっての、久しぶりにちゃんと体を動かせるんだ、思いっきりやらせてもらうぜ。
「ほんじゃ各自の判断で動け、わしももう出発する。おまんら、健闘を祈るぜ。」
葉月先生はそう言い残して、教室を去った。
「葉月先生、オーラの色が暗い赤だけど、大丈夫かな…」
オーラが暗い赤…ダメだ、わからん。
「千尋ちゃん、それってどういう意味なの?」
「赤は行動的で、情熱を表してるの。それが暗いということは、嫌な意味で行動的になってるってこと。」
嫌な意味で、か…葉月先生自身何があったかは知らないけど、放置していい状態ではなさそうだな。
「南江はどう思う?」
「私は任務も大事だと思うけど、葉月先生のことはもっと大事。ついさっき命を最優先にしろって教えられたばかりだもん。あとはもう根元先生のようにはさせたくないし。」
さすがは我らが班長殿、同意見だ。
「それじゃ、任務を放置するわけにはいかないから、葉月先生になにかしら監視をつけたいな。」
とは言うものの、葉月先生は忍だ、監視の目には敏感なのかもしれない。
「あ、あの、できるかどうかは、わからないけど。というより、や、やってくれるかは、わからないけど…」
「言ってみて、通君。」
「う、うん。にゃーちゃん、なら、気配を隠して、尾行できるんじゃ、ないかな…」
「ほほう。」
「通君、いい案だねそれは」
確かに、松永が同意するとは思えないが、言ってみる価値はあるな。
「よし、梁、行ってくるんだ。失敗したら健太が葉月先生を尾行することになるから頑張れよ。」
「「待って!?」」
「なんで俺がそんな危険な目を!?」
「僕責任重大だね…」
これで梁は失敗できなくなったな、よしっ。
「じゃ、じゃあ行ってくるね…」
「梁君頑張れー!!」
南江の応援が、梁を地獄へと押していくのであった。
「松永さん、ちょっといい?」
「なに?」
「ちょっとさ、協力して欲しいことがあってさ、それでにゃーちゃんの力が必要になるんだけど。」
「嫌だ。」
「あっ…」
ダメだな、あれ…
すごい失望した顔で梁が帰ってきた。
「ダメだったよ…」
「仕方ない、健太に犠牲になってもらうしか…」
「だからなんでそうなるんだよ。」
にしても厳しいな、無理にでも葉月先生の方をどうにかしないと。
「お困りですか?」
「五十鈴か、いやちょっとな、葉月先生のことで悩んでたんだが。」
「そのことでしたら、こちらも同じ考えだと思いますよ。ですよね、真木さん。」
「うん、葉月先生、多分復讐しようとしてるんじゃないかなと思う。」
なるほど、五十鈴たちも同じ考えだったか。
それにしても真木はそこまでわかるのか。いやわかるというよりそうかもしれないと推測できるのがすごい。
こっちは松田と健太が揃ってやっと監察できるくらいなのに、真木はそれを1人でできるんだもんな。
「目的が同じでしたら、協力しませんか?」
「そうしてくれると助かる。ただもう1つ、松永が協力してくれると、成功率が上がるんだ。」
「にゃーちゃん、ですか。」
「理解が早くて助かる。」
やっぱり総班長にもなると、頭が切れるなー。うちの班長もいいはいいんだけど、雑なとこがね…
「では、説得は私に任せてください。それと、任務の場所はどちらでしょうか。任務先が近くないと、協力のしようがありませんので。」
「私たちは大船駅付近だね、内容はえーっと、『謎の妖気の調査』、ってなにこれ?」
いや知らねーよ、依頼人もよくわかってないじゃんこれ。
「私たちは鎌倉ですね、『鎌倉大仏付近の妖魔討伐』という内容です。」
「あとは松永の班次第か。」
「では、説得に行って参ります。夏、私に構わず準備を始めていただいて結構ですので、あとはよろしくお願いしますね。」
「おーよ!」
五十鈴が松永の方に向かっていった、説得できると御の字だけど、上手くいくかな。
9:30 1年5組教室 五十鈴琴里サイド
「松永さん、少しよろしいでしょうか。」
「なに?」
「任務の場所はどこでしょうか?」
「任務?鎌倉の鶴岡八幡宮だよ。内容は『結婚式の護衛』だよ。それがどうかした?」
こんなにも運がいいことがあるのですね。
「でしたら、少し協力していただきたいのですが。」
「またなの?さっきも同じこと言われたよ。にゃーちゃんなら貸すつもりはないよ、ねぇ、にゃーちゃん。」
「プイッ…」
「にゃ、にゃーちゃん!?にゃーちゃんは手伝った方がいいと思う?」
「にゃー!」
これは、にゃーちゃんに助けられましたね。
「でも、にゃーちゃん、面倒だよ?にゃーちゃんが傷つくかもしれないし…」
「プイッ…」
「むぅぅぅぅ…」
「松永さん、どうしますか?」
「わかった、にゃーちゃんが手伝ってもいいって言うなら、仕方ないけど、協力する。」
「ありがとうございます。」
これで、また1歩前進ですね。




