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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
貴族騒乱編
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第七十六集 真木優生

  9月10日 12:00 任田高校 体育館


  早川は、真木の方を少し見て、静かに話し出した。


  「優生(やよい)はな、妖気を使おうとすると、目が見えなくなんだ。」


  謎が深まった。


  確かに妖気は基本的に人に害がある物だけど、妖気を持つ人間には必ず妖気への耐性が付く。


  それなのに、真木は妖気を使おうとすると副作用として目が見えなくなる。考えてみればおかしい話だ。


  「そんでだ、松田、村上。お前らはそれぞれ、人のオーラが見える、妖気の流れが分かる、だったな。」


  「そうだね。」


  「あぁ、どっかに触れていれば、もっと遠くでも分かるぜ。」


  「優生は、その両方をお前ら以上にできんだよ。」


  「「は??」」


  全員口揃えて同じことを言った。


  「え、それってどんだけ凄いことなの?」


  「遥ちゃん、もしそうなら、凄いってレベルじゃないよ…」


  「そうだな、松田さんのようにオーラが見えてて、俺のように妖気を感じ取れるなら、もう視界がどうなってるかなんて想像つかない…」


  松田以上にオーラが見えるなら、もっと細かい色分けと感情の起伏が分かるだろう。


  そして健太以上に妖気の流れがわかるなら、もはやどの妖気が誰の妖気かわからんくなる。


  そんな状態なら、まともに生活出来るかどうかすら怪しい。


  「で、お前らはどうしてオーラが見えたり、妖気の流れが見えたり感じたり出来んのかを考えたことあんのか?」


  「小さい頃からだから、そういう風に産まれたんだってずっと思ってたよ。」


  「俺も、少し気持ち悪くなる時はあるけど、深く考えたことは無かったな。」


  「そうか、なら教えてやる。お前らのそれは、目に勝手に妖気が流れてるからだ。細けぇ話は知らねぇけど、流れる妖気の性質で、オーラが見えたり、妖気が見えたりするらしい。」


  目に妖気が流れる…聞いたことない話だ。


  流そうと思って流すならまだ分かるけど、勝手に流れてるのか。


  「そんで、お前らは流れてる妖気がまだちょうどいいところだからまだいい。優生の目に流れてる妖気はお前らの比じゃねぇんだよ。」


  早川は少し怒り気味で続けた。


  「優生の目には、優生の持つほぼ全ての妖気が目に流れてんだ。だから妖気なんか使ったら目が機能しなくなって、何も見えなくなんだよ。それを知らねぇでベラベラベラベラと!」


  「翠…もういいんだよ…そんな言い方したら、またみんなと仲悪くなっちゃうよ…」


  また?


  「いいんだよそんなこと、前から言ってっけど、もうそんなことを気にすんじゃねぇ。」


  「うぅぅぅ…」


  この感じだと、早川にも何かあったな。流れで聞けたりしないかな。


  「翠ちゃん、話は分かった。ごめんなさい、優生ちゃんのこと、分かってなかったのに強く言ってしまって。」


  「わかりゃいいんだよ、それと翠ちゃんって呼ぶんじゃねぇ。」


  「分かった翠ちゃん、ありがとね。」


  なんもわかってねぇだろ。


  「さっき、優生ちゃんがまたって言ってたよね。その話も、差し支えなければ聞かせて貰えないかな。」


  「昔に、一瞬目が見えなくなった優生をいじめてた俺の友達を、全員殴り飛ばした。そんだけだ。」


  なかなかえぐい話が出てきたな…


  「友達だったやつらでも、優生をいじめんなら俺がぶっ飛ばす。」


  男気溢れる言葉だった、夏の班のやつって感じ。


  「だが、俺をチビ呼ばわりするやつは殺す。」


  「「…」」


  おい、この空気どうにかしろよ、いい話してただろ、なんでこんな締め方するんだよ。


  「あの1組の野郎、今度会ったら絶対殺す。」


  任田祭前の練習のことめっちゃ根に持ってんじゃん、もう許してやれよ。


  「…しく…ありがとね、翠、みんな…ごめんね…迷惑かけて…しく…」


  真木が泣き止まない。だけどこれでいろいろ分かったな、真木の目はいいけど、妖気を使おうとすると目が機能しなくなって、何も見えなくなる。


  こう聞くとなにもできないように聞こえるけど、偵察役としてピッタリだ。あと心理戦で優位に戦える、使うタイミングあるのかどうかはともかく。


  でも、よくよく考えたら、なんで今まで言わなかったんだろ。そしてなんで何もできないのに入学できたんだろう。


  「なあ真木、俺から1つ聞いていいか?」


  「うん…だいじょうびゅ…」


  大丈夫ではなさそうだ…


  「ありがとう。じゃあまずなんで今まで黙ってた?そんでなんでそんな状態なのに入学できたんだ?」


  ちょっときつい聞き方かもしれんが、許してくれ。


  「黙ってた…と言うよりは、話す必要がなかった…から…みんな強いから…私が居なくても大丈夫だった…入学できたのは、私もわからない…」


  確かに…って言っちゃいけないけど、実際そうだったから、本人がそう思うのも仕方ない。


  で、入学できた理由がわからないときたか…


  入学基準はどんなもんなのか詳しくはわからんけど、少なくともある程度の妖術、武術、陰陽が使えないといけない。


  そして任田はもっとも妖術に力を入れてる学校だから、妖術に関して少しくらいはできないと入れるはずがない。


  となると、裏で誰かが手を引いたってことになる。誰かが真木の力が欲しくて、任田に入れたってのも十分考えられるな。


  なんでそんなことわかるかって?俺が童子切を抜いた時もお母さんがいろいろ手を回して情報規制してたからな、まあわかる。


  だからこんな感じで、真木の入学も同じように、裏で誰かが手を回した可能性があるってわけだ。


  「だいたい理解した、ありがとな。」


  「うん…」


  「んじゃ五十鈴、あとは任せた。」


  こういう時は、総班長に全部投げるということで。


  「えっ、急に言われましても…」


  「今日はもういいんじゃねぇか?琴里。」


  「そうですね、今日はもう解散にしましょう。みなさん、お疲れ様でした。」


  よし、帰ろう帰ろう。


  「お腹すいたな、羽澤ー、今日の夜飯なんだ?」


  「今日は肉じゃがの予定だよ。ていうかまだ昼なのにもう夜ご飯気にしてるんだ…」


  そういえば昼ご飯まだだったな。


  「じゃあ昼飯も作ってくれ!」


  「はぁ…仕方ないなぁ魁紀は…」


  「ヨシっ。」


  「カップ麺で勘弁してあげるね。」


  「すみません…調子に乗りました…」


 

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