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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
貴族騒乱編
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第七十四集 特訓 〜新井班〜

  9月10日 9:15 職員室前廊下


  その次の日に、小戌丸さんはおとんの忍者刀を持ってわしの所に来た。


  土下座までされた、大口叩いといておとんとおかんを助けられなかったオイラの責任だのなんだの。全く話が入ってこんかった、おとんとおかんを返せだの、なんでおとんとおかんを置いてったのだの、言い返せばもっと気が済んだかもしれんが、わしの思ったことはただ1つじゃった…


  あの貴族さえいなければ…


  あの貴族さえいなければおとんとおかんは助かった、あの貴族さえいなければ小戌丸さんがわしだけを助けることも無かった。全部あの貴族のせいじゃ、あの貴族だけは生涯何があっても許さん、わしから両親を奪った罪は絶対に償わせる。


  わしゃ小戌丸さんに頼んで、妖魔を倒せるように鍛えれる所に連れて行ってくれと。


  小戌丸さんはすぐにわしを対妖魔守護大学付属中学に連れていってくれた。そして小戌丸さんからおとんの忍者刀を受けて、忍としての道を始めた。


  忍びになってからは、洋海(ひろみ)とも知りおうて、共に風神雷神の力を手にして、共に教職免許を取った。じゃがそこからが分かれ道じゃった、洋海は教師、わしゃ任務を受けながら藤原家を探った。


  その時じゃった、藤原家を探ってるわしに、任田高校の校長、藤原蓮火が声をかけてきた。最初こそは貴族の話など聞くわけないじゃろと無視したが、貴族制度の撤廃と話を出されちゃあ聞かんわけにゃいかんかった。


  同時に洋海の訃報も聞いて、わしゃここの教師をすることになった。乗せられたとは分かっちゃいたが、わしの野望のためじゃ、なんでもやっちゃるわ。


  「はぁ…おとん、おかん、わしゃ本当にこれで良かったんよな…」


  10:00 任田高校 体育館


  夏、五十鈴に続き、第一班メンバー全員の特訓をすることになった。一つの班の特訓にクラス全員を巻き込むわけにもいかなかったから、特訓に付き合うのは葉月先生、羽澤と俺ら第五班。


  付き合うと言っても、実際に特訓相手になるのは…


  「よ、よろしく、お願いします…」


  そう、通だ。まあなんだ、俺が相手するのはもう面倒臭いから、なんでも防いでくれそうな通に任せたという訳だ。


  「悪いな通、魁紀が構ってくれないから相手になってもらうぜ!」


  かまちょなゴリラとか需要ねぇぞ。


  「すみません細矢さん、1人ずつとはいえ、私たち第一班全員を相手しなければなりませんので、無理をなさらずに。」


  「だ、大丈夫、だよ。た、盾が、守って、くれるから。」


  通の話し方は相変わらず弱々しいけど、当初の足が震えるようなことは無くなった。いろいろ修羅場を潜って来たから、そりゃそうか。


  「よおし!じゃあ(みどり)!行ってこい!!」


  「おう!大将!」


  「は、早川さん、よ、よろしく…」


  「あぁ?」


  「う、うぅ…」


  なんだろこれ、間違ってヤンキーに声をかけてしまった感じ…通…ドンマイ…てか相手によって態度変わりすぎじゃね???


  「おまんら、やるなら早う頼むわ。今日はこの後用事があるからのう、最後まで特訓付き合ってられん。」


  用事、正論を言えばなんでそれで先生やってんだって話だけど、まあ人に用事の1つや2つもあるだろう。


  「先生もこう言ってんだ、さっさとやるぜ細矢。」


  「わ、わかった…」


  「行くぞオラ!!」


  「ひっ…ひぃぃっっ!!」


  早川の圧が強すぎて通が完全にビビってるなぁ…


  「オラオラどうした!!守ってるだけじゃ俺にゃ勝てねぇぞ!!」


  早川の乱打、金属バットが盾に当たって、カンカンカンカンうるさい音が鳴る。


  てか、勝つ勝たないじゃなくて、お前らのための特訓なんだけどな…


  「は、早川さん、これだと、ぼ、僕に、攻撃は、通せない、よ…」


  おっと、ここで通が挑発していく、墓穴を掘るようなことにはなって欲しくないところだ。


  「あん?てめぇナメてんのか?」


  「い、いや…そんなこと…なぃ……ぇ…す……」


  うーんこれは完全に早川のヤンキー圧に押されているようだ、通のメンタルが押しつぶされるのも時間の問題かな…


  「ならその盾、脳天ごとかち割ってやる!」


  早川が構えを取る、よく見る野球の打撃フォームだ。


  「てめぇじゃ、特訓相手になりゃしねぇんだよ!薄緑ぃ!!」


  足を上げる所までは普通の打撃フォーム、そこから後ろの右足で床を蹴り、一気に通の目の前まで近づいた。技の名前の薄緑に関しては、義経の愛刀だったってことくらいしかわからん、名前の翠から取ってるのかもしれない。


  「脳天ががら空きだぜ!」


  早川が通の戦ってる所を見たことあるかどうかはわからんが、がら空きに見えて、そう簡単にやらせないのが通の盾なんだよなあこれが。


  「断空の、盾!」


  「なっ!?なんかに当たって弾かれた!?」


  どういう仕組みかよくわからんけど、なんも無いとこに急に盾を作り出すようなもんだ、しかも見えないと来た、そりゃそういう反応になるわな。


  「ほう、おもしろい技を使うもんじゃ。」


  「そりゃ、うちの班の盾ですからね!ふん!」


  なぜ南江自慢げに言うのか…まあ言いたいことはわかる、同じ班に守ってくれるやつがいるのは心強い。


  「ちっ、一撃じゃダメか。なら、何度も殴りゃあいいって話だ!」


  うーん、班員は班長に似るのか?ゴリラが班長だと班員もゴリラになってしまうのかな…


  「タコ殴りだ!錆浅葱(さびあさぎ)!!オラオラオラオラァ!!!」


  「ぼ、僕だって、鍛えて、来たんだ!全方位・断空の!盾!!」


  全方位か!すごいな通!これだったらどんな攻撃が来ても心配ないな。


  ただ、それだけ凄い守りだと、妖気の消費も凄まじいはずだ。


  「なんだよその盾は!インチキだろうが!!」


  「こ、これでも…たい…へん…なんだよ…」


  いつもの通の喋り方ではなく、あれは息切れしてるな。やはり妖気の消費が尋常じゃない、断空の盾を何枚も周りに張ってるようなもんだ。


  「ちっ、あの盾を割れないんじゃ、俺もまだまだってことか…だが!!」


  「早川さん、その辺で終わりにしましょう。これ以上は互いに消耗するだけです。」


  「琴里、お前俺をナメてんのか?」


  五十鈴がこれ以上は意味が無いと止めに入ったが、早川は簡単に引き下がらなかった。


  「俺はまだやれる!総班長になったからって調子こいてんじゃねぇ!!」


  「早川さん、あなた!」


  「そこまでじゃ、仲間割れするもんじゃねぇ。どんなことがあっても、仲間は大事にしろ、いいな?」


  「「はい…」」


  葉月先生の一声で、五十鈴と早川は黙った。


  「じゃあおまんら、そのまま特訓を続けろ、わしゃ用事に行ってくるでのう。あとは琴里、頼むぜ。」


  「はい、わかりました。」


  そう言い残して、葉月先生は体育館を去った。


  用事ってのが、変なことじゃないといいんだけど…


  「では、特訓を続けます。早川さん…さっきは…ごめんなさい…」


  「いや、俺も悪かった…すまねぇ…」


  「和解できたな!偉いぞ!!」


  「大将うるせぇ。」


  「夏は黙っててください。」


  「あ、はい…俺…一応班長なんだけどな…」


  まあなんだ、班長でも圧と総班長には勝てないということだ。


  「では次は、天上院さん、どうぞ。」


  「わかった、行ってくる。」


  ここに来て新顔登場、軽く紹介と行こう。


  天上院蒼大(てんじょういんそうた)、第一班所属、武術コース。見た目は静かなイケメンタイプ、髪は紺色(こんいろ)で、後ろで結んでいる。たまに見る中国の武道家みたいな感じ。


  服装はカンフー服?と言うやつで、カンフー服×学ランみたいな制服。なんか自分で説明しててもよく分からんくなってきた、もういいや。


  「よ、よろしくね、天上院、くん…」


  「うん、よろしく。」


  天上院、三大貴族には及ばないと思うけど、それでもれっきとした貴族だ。ほら、苗字から溢れる貴族感はあれでしょ?そういうこと。


  そして武術コースなんだけど、武器はなにも持ってない感じからすると、南江や大谷と同じ、拳で勝負するんだろう。


  「では、参る。はぁっ!!」


  「うっ…!お、重い…!」


  さっきの早川と同様、一気に通に近づいて、正拳を放つ。ただ早川と違うのは、単に力任せに殴るのではなく、ちゃんと力に重さがある。


  「対妖魔格闘術・羅漢門(らかんもん)!」


  「断空の、盾!」


  天上院の動きからして、通を掴みに行こうとしてたな。でも断空の盾で動きを阻まれた。


  「これは、なかなか困るな。言い訳をするなら相性が悪い、だが問題ではない。」


  天上院が1人でぶつぶつと呟く、打開策があるのだろうか。


  「その断空の盾が、見えない妖気の塊だと仮定しよう。ならば、打ち砕くことは出来るはず。ということは…」


  ということは?


  「その盾、壊してやろう!!」


  やっぱりゴリラだったぁぁ!

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