第七十一集 筋肉妖気
9月6日 12:00 任田高校 体育館
「夏!力み過ぎだ!もっと妖気をちゃんと込めて!」
「こうか!初夏ノ段・麦の秋風!!」
「今回はどうだ、健太!」
「まだまだだね。」
今日は夏と特訓だ。俺だけじゃ分からないこともあるから、妖気の流れを見るのは健太に任せてある。
「夏のやつ、昨日の事まだ気にしてやがんのか。」
「無理もありません、夏は今までずっと力任せだったのですから。」
「昨日真由ちゃんにも酷く言われちゃってるからねぇ夏君。」
そして夏の様子が気になると言って、龍太郎、五十鈴、羽澤が見に来ている。正直見てるだけなら少しは代わりに夏の相手をして欲しいと思うんだけどなぁ。
「これじゃ埒が明かないな、夏、1回力を入れるんじゃなくて、妖気だけに集中してやってみて。」
「よし、分かったぜ健太!妖気…妖気、妖気妖気妖気ぃ!!はあああ!!麦の秋風ぇ!!」
「だから力むなって言ってんだろぉ!!」
さっきからずっと同じ衝撃波をひたすら受けてるだけだ、健太が何を言っても進展がない。
「あぁぁぁぁなんでだぁぁぁぁあああ!!」
「魁紀…もう俺じゃなにも教えれないよ…」
「おつかれ健太、少し休んでて大丈夫だ、妖気がこもってたかどうかだけ教えてくれ…」
おっかしいなぁ、夏妖気纏いは出来るはずなのになんでいざって言う時に妖気出ないんだ?でもとりあえずやらせてみるか。
「なぁ夏、1回妖気纏いやってみろよ。」
「わかった。ほら、こんな感じ。」
「健太、方天画戟に妖気は纏ってるか?」
「あぁ、ちゃんと纏ってるよ。」
よし、まず妖気纏いは問題ないとして、次の段階だ。
「じゃあ夏、今度はその状態のまんま技を打ってきてくれ。」
「よぉし!麦の秋風!!」
「うーん……」
「魁紀、今のはただの衝撃波だ、妖気は夏が構えた瞬間に消えたよ。」
健太に言われなくてもわかってた、明らかにさっきと何も変わらなかったから…
「なぁ夏、攻撃する時いつも何考えてんだ?」
「ん?頭の中で筋肉ぅ!!って。」
「「それだよ。」」
「え?」
「え?じゃないわ、なんだよ筋肉ぅ!!って。それが原因だろ絶対。」
頭の中で筋肉のことしか考えてなかったらそらあんな攻撃になっちゃうわ。
「じゃあこうしてみろ夏、妖気ぃ!!って頭の中で思い浮かべながら攻撃してみて。」
「何言ってんだ魁紀、頭大丈夫か?」
「お前ぶっ飛ばすぞこの筋肉ゴリラ。」
こいつにだけ頭の心配はされたくない、てか俺の頭は至って健全だ。
「いいからやってみろ、じゃないと帰るぞ。」
「わかったわかった!すぅ…はぁ…麦の!秋風!!」
お?ちょっと雰囲気違うぞ、ただこの威力は…
「魁紀、今のはちゃんと妖気が纏った攻撃だ。だけど威力は…受けた魁紀が1番わかると思う…」
まあ、な。そりゃ受けたの俺だし…なにこれ…刀がちょっとピクっとしただけの威力…
「おい夏!ナメてんのかお前!」
「違うんだよ!聞いてくれ魁紀!頭の中で妖気ぃ!!って思い浮かべたけどよ、急に力が入らなくなったんだよ!」
なんだよそれ…つまり今までは全部頭の中筋肉のことばっか考えてたってことなのか…
「もうどうすりゃいいんだよ…」
俺は座り込んだ、本当にもう頭が回らなくなった。こいつの筋肉頭を俺はもうどうにも出来ない。
「では、頭の中で筋肉妖気と思い浮かべるのはどうでしょうか。筋肉頭の夏にはピッタリだと思うのです。」
「「それだぁ!」」
でかした五十鈴、それなら何とかなるかもしれん!
「夏、今五十鈴が言ったようにやってみてくれ!」
「おうよ!さすがは琴里!よく俺のことがわかってる!!」
「いえ、夏がバカなだけです。」
「酷くねぇか!?」
正論だな。
それより、もしこれで成功するようなら、ありえないくらいの火力になりそうだな。ならちゃんと受け止めないとな。
「丑神の吽那迦よ、我に力を与えたもう、捧げるは、我が魂の祈り!突っ走れ!丑気!」
「本気で来るかぁ!魁紀!」
「あぁ、万が一受け止めれなかった時を考えて、こうするべきだと判断した!」
「なら行くぜ!初夏ノ段・麦の秋風!!」
麦の秋風、それは初夏の頃に吹く爽やかな風、夏の季語として知られている。ネット情報調べ。
それなのに、目の前に飛んできているのは、見た感じ確かに爽やかな風だ。だけど本能的に、こいつは危ないと思わせるくらい、力が篭っていた。
「丑火損!!」
なので俺は、相殺を選んだ。気迫を使っている今の状態なら、相殺は容易い。
「すげぇな夏、こんなの爽やかな風じゃすまねぇぞ。」
「ははっ!やっぱり力は筋肉!筋肉は力だ!」
筋肉頭の考え着いた場所は結局そこか…
「なぁお前ら、楽しそうなとこで悪いけどさ。」
「夏、丑崎さん、攻撃、相殺出来てないですよ…」
「「え?」」
龍太郎と五十鈴に言われて初めて気づいた、攻撃が相殺できてない上に合体してしまって炎が舞ってる状態だ。
「しょ、消火だぁぁぁ!!」
「はぁ…水呪符・滝!」
夏の声に合わせて、五十鈴が水の呪符を使ってくれた。炎は消え、俺と夏がびしょびしょになった。
「五十鈴、助かった…」
「バシャンと音が聞こえたと思ったら、おまんらなにしとんじゃ。特訓とは聞いたが水遊びとは聞いとらんぞ。」
「「あっ…」」
「しゃーない、職員室で話をじっくり聞いちゃるわ、全員ついてくるんじゃ。」
「「は、はい…」」
最悪なタイミングで葉月先生が登場し、全員職員室に連行された。でも特訓の成果はあった、夏がちゃんと妖気と筋肉を両立させることが出来た、それだけで御の字ってもんだ。
ただやっぱり、悪いことしてないのに職員室に連れていかれるのは、癪だな…




