表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
夏休み編
72/193

第六十七集 花火

  7月23日 17:30 材木座海岸


  花火まであと1時間半、もうそろそろ花火の時間とか言って屋台エリアに戻って来たけど、全然暇だわこれ…


  「花火全然先じゃない。」


  「うん、ごめん…」


  普通に間違えた、よくよく考えたらそうだよな、今の時期の18時ってまだ明るいもんな、そんな時間に花火上げたところで意味無いもんな。


  「魁紀ぃ!助けてくれぇ!!」


  「魁紀!今までどこ行ってたのよぉ!」


  夏と羽澤か、どうした、そんな何かから逃げてるような顔は。


  「どうしたお前ら、なんかあったのか?」


  「なんかあったじゃねぇよ!琴里が、琴里のやつが!」


  「とにかくおかしくなっちゃったんだよぉ!」


  よくわからんが五十鈴がなにやらおかしくなったみたいだ。だけど何が原因でそうなるんだ?


  「あら、丑崎さん、今までどこに行ってたんですか?探しましたよ?」


  五十鈴が来た、そして後ろにはなにやら疲れ果てたクラスのみんながいる。


  「なぁ五十鈴、みんなはどうしたんだ?妖魔にでもあったのか?」


  「いえ、金魚すくい、射的、輪投げなどなど。祭りにある遊びをみなさんで全力で楽しんだまでですよ。」


  笑顔で言うことじゃねぇぞそれ…しかも祭りの遊びでそこまて疲れ果てることはねぇだろ…


  これはダメだな、嫌な予感しかない、逃げなきゃ死んでしまう可能性すらある。


  「魁紀、私も金魚すくいやりたいわ。」


  「ごめん鬼寅、今それところじゃないんでな、また今度だ。」


  とりあえず逃げるのが先だ!


  「あぁ!魁紀!俺らも着いてくぞ!」


  「置いて行くなんて酷い!同居してるのに!!」


  「うるせぇ!あんな怖いオーラ放ってる五十鈴が居て逃げないわけないだろ!」


  逃げる前に、鬼寅の手を引いて一緒に逃げようとした。


  「どう…きょ…」


  「鬼寅?」


  「魁紀のバカ…」


  なんだ、どうして今バカって言われなきゃいけないんだ?


  「いいから行くぞ!」


  「私も、家に住ませて。」


  「今そんなことどうでもいいだろ!とにかく逃げんぞ!」


  「どうでも良くないわ、住ませてくれないなら、今ここで魁紀を拘束して五十鈴さんに差し出すわよ?」


  こいつ、なんてこと考えてやがんだ…


  はぁめんどくせぇ!


  「あぁ分かった!好きにしろ!逃げるぞ!」


  「…ふん。」


  なんだよそのよくわかんない顔は、満足してるのか怒ってんのか…


  17:50 材木座海岸 海岸沿い


  「はぁ…はぁ…結局さっきのとこに帰ってきた…」


  「魁紀…はぁ…助かったぜ…」


  「ありがとうね魁紀…はぁ…もう疲れたよ…」


  「ふんっふんふーん♪」


  ご機嫌な方が1名いらっしゃるようで、ともかく疲れた、てか花火まであと1時間くらい、それまでどうすりゃいいんだ…


  「せっかく砂浜なんだし、筋トレでもすっか!」


  「うんうん、夏君だけでやってて。」


  「ちょ酷くね!?」


  それが正しい反応だ、1人で筋トレしてろ。


  「魁紀、さっきのこと、忘れないでよね!」


  「ああそうだったな、ちょっと羽澤にも言っておかないと。」


  「ん?どうかしたの?」


  「鬼寅が、今度からうちに住むことになったから、よろしく。」


  「えっ?いやまあ部屋は余ってるし私は構わないけど、魁紀はいいの?」


  「さっき逃げるためにそう約束したからな…」


  「あぁ…なるほど…」


  すまんな羽澤、これから作るご飯の量が1人分増えてしまった、頑張ってくれたまへ…


  「鬼寅真由だわ。よろしく頼むわね、羽澤さん。」


  「幽奈で大丈夫だよ、これから同じ屋根の下で暮らすんだから。あ、今度一緒にお風呂入ろうね!真由ちゃん!」


  「そ、それは、結構だわ。」


  「あららぁ、断られちゃった…」


  羽澤は残念そうにしてるけど、聞く前に分かることだろ、この鬼寅が一緒に風呂に入りたがるわけないだろ。


  「か、魁紀が一緒なら…考えてやらないこともないわ。」


  「「却下だ。」」


  「魁紀、君はちゃんと一緒に入ってあげて?ね?」


  「どうしてそうなるんだ、いい年頃の男女が同じ屋根の下で暮らすだけならまだしも、同じ湯船に入るわけねぇだろ!」


  「ふふふ、ならば魁紀、俺が代わりに入るとしよう!」


  「夏君は今黙ってて!」


  「あっはいすみません…」


  夏って女子に弱いのか?それとも五十鈴や羽澤のような気が強い女子に弱いのか?


  「魁紀、ちょっとこっちに来て。」


  海の方に呼ばれる、また何の話だ。


  「魁紀、分かってるの?真由ちゃんの考えてること。」


  「分かってたら困ってねぇよ!羽澤はわかるのか?」


  「うん、わかる。」


  「すげぇなお前!」


  「なんでこんなわかりやすいことなのにわからないのよ!」


  「わかんねぇよ!」


  こんなずっと交わることのない会話をしばらく続けた。


  18:10 材木座海岸 海岸沿い


  「よし、とりあえず魁紀はとんでもない鈍感だということがよく分かった。」


  「誰が鈍感だ、これでも殺意や悪意にはビンビンに敏感なんだぞ。」


  「そういうのには敏感にならなくていいの!もう、遥ちゃんからもそんなこと言われなかった?」


  そう言えば言われたな、討魔酒場で。


  あの時は確か鬼寅が見舞いに来てくれたあとだな、俗に言う鈍感ってタイプかなって言われてたっけ。


  「班員に鈍感が居ると大変なんだよ、作戦理解してくれないとかあるから…」

 

  「そうか?うちの班は基本的に班長が突っ込め!って言うだけだぞ。」


  「遥ちゃぁん…」


  南江は班長には向いてるしちゃんと配置も出来るけど、結局突っ込むタイプなんだよね。


  「まあとにかく、ちゃんと相手の考えてることをよく考えるように。じゃないとその鈍感は直らないよ?」


  「そうか、肝に銘じておく。」


  別に鈍感じゃないと思うんだよね、本当にわからないんだから。


  「絶対わかってない気もするけどもういいや、戻ろ?」


  「今バカにしたよね、絶対バカにしたよね。」


  そんな俺を置き去りに、羽澤は2人の元へ戻って行った。鈍感ねぇ、自覚ないんだけど、そう言われてるってことはそうなのかなぁ…気をつけよ。


  「おい!みんな見てみろよ!」


  なんだよ夏、もううるさいのは大丈夫だぞ。


  と思ったら、綺麗な花火が上がった。


  「綺麗…」


  鬼寅の口から零れるとは思えない言葉だったが、本当に綺麗だった。


  「願い事をしないと!」


  「それは流れ星の時にやることだ。」


  「筋肉量がもっと増えますように。」


  「お前は本気で願い事頼んでんじゃねぇ、てか願い事なら口に出すな。」


  羽澤にしろ夏にしろ、いつも通りなのは感心するが花火が上がった時はな。


  「た、たーまやー!」


  そうだ、鬼寅のようにたーまやーって叫ぶんだよ。


  「お前、ちゃんと子供心持ってんだな、ちょっと意外だ。」


  「意外ってなによ、悪かったわね。」


  「いいや、ちょっと面白かっただけだ。」


  「腹立つわね。」


  おっと、ここら辺にしておこうか。


  「みんなで言おうぜ!」


  「そうだね!」


  「乗ってやるよ、せーの!」


  「「たーまやー!!」」


  花火は上がり、祈る者もいれば、見届けて叫ぶ者もいる。祈るもんじゃねぇけどな。


  夏が始まる、それは学生にとって休みが始まることを意味する。高校生になってから初めての夏休み、夏休みなのに、心が休まない。


  根元先生ならどうしていただろうか、根元先生ならもっと楽しく、もっと全力だっただろうか、わからない。だけど1つ言えるのは、きっと全力で楽しんでいる、間違いない。


  俺たちはそれを引き継ぐ、託されたことを、クラスみんなで。先生の日記を、俺たちで、書いていく。

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、


ブクマや評価をしていただけると、とても励みになります。


よろしくおねがいします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ