第五十六集 それぞれの戦い
洛陽闘技場 棺桶内 丑崎サイド
こいつからは酒呑様の様な妖気を感じる、デカい体、デカい斧、それを片手で持ち上げられる筋力、見ただけで凄いとわかる。だけど酒呑様とは格が全然違う、さらに言うなら茨木童子よりも下だ。今の俺たちなら、油断しなければ勝てる。
「丑崎魁紀、貴様から酒呑様の匂いがする、そして酒呑様の妖気も感じる。これだけは最初に聞いておく、貴様、酒呑様の力を我がものにしようとしてるのは本当か?」
「嘘に決まってんだろ、誰に吹き込まれた情報かは大体予想は着くが、酒呑様は俺の祖先だ、何があっても祖先を裏切るようなことを俺はしねぇ。あとなによりな、酒呑様は俺に力を貸してくれてるだけだ、しかも気が乗った時だけだ!」
気分次第でやりたいこと変わるからな、酒呑様は…
「プッ…プハハハハッ!!!相変わらずですなぁ酒呑様はぁ!丑崎魁紀、貴様の話、少しは信じてやろう。」
「だったらもう戦う理由は!」
「そうはいかぬ、今茨木が酒呑様の復活の儀を行っておる。それの邪魔だけはさせられんのだ!」
なに?酒呑様復活の儀だと?そんなのあの茨木童子がやるわけねぇ。てことは自分の力にしようとかそこら辺のことだ。
「あいつがあんなことするわけねぇぞ!あいつの方が酒呑様の力を我がものにしようとしてんだ!」
「茨木のことは昔から嫌いだが、此度はそれを気にしていても仕方ない。全ては酒呑様のためだ!」
「丑崎殿、これ以上は無駄だ。1度戦えば分かることもあるというもの、戦おう!」
結局戦うしかねぇのか、めんどくせぇ…
洛陽闘技場 棺桶内 申喰サイド
「おい、なんでお前がここにおんねん。」
「それはこっちのセリフです。」
「ハッハハー!やっちゃえやっちゃえ!」
「亥尾さん、煽るのはやめてください。もう…なんでこういう時に酉脇さんがいないのですか…」
「じゅ、じゅ、十二家の人が…いっぱい…」
「ビビるなよ通!俺もいるぜ!」
みんなバラバラになってもうたか。このドーム内やと、犬、猪、蛇、ほんで丑崎はんとこの細矢と田口やったけのう。
「キッキッ!ガキども、この熊童子様が食い殺してやるぞ!」
「あん?黙れや、ハゲ。」
「うるさいですね、黙っててください。」
「こ、殺す!」
図体デカいだけで動きおっそいのう、これならわしだけで十分やな。
「お前ら下がっとれ、わしがやる。」
「オイラが相手をします、みなさんは下がってください!」
「あ?」
「なんですか?」
この犬、わしの言うこと聞いとらんかったんか?
「下がれ言うとるんや犬!」
「あなたが下がればいいでしょ猿!」
「酉脇さん…助けてください…」
「ガキのくせに仲間割れか?キッキッキッ!!隙だらけよ!」
「「ガハッ!!」」
ちっ、このハゲ、不意打ちしよってからにぃ!それよりも…
「仲間割れやと?目ぇ腐っとんのかハゲ…どう見たら仲間に見えるんや、この犬と!」
「そうですよ、この猿と仲間なんて…失礼な妖魔ですね。」
珍しいのう、犬と意見が合うわ。ならやることは1つや。
「こいつは、わしら2人がやる。」
「こいつは、オイラ達2人がやります。」
洛陽闘技場 棺桶内 辰仁姉サイド
「全く、騒ぎがあって来てみれば、なんだこれは。」
「わしに聞くなや、分かるわけないやろ。」
「うぅ、豪さんのお姉さんと申喰さんのお兄さんの2人と一緒だとは…」
「妖魔がいるから来たのに、あの二人いるならあたしら要らないじゃん。」
「ヒッヒッヒッ、まあまあ、頼もしい味方がいて良かったじゃないですか。」
「にゃーちゃん、私たちは今回は援護だよ。」
「にゃー!」
さて、申喰、そして1年生の卯道、午上、子浦、松永か。新しい芽を摘まさせるわけにはいかん、ここは私が前に出ようか。
「申喰、みんなを頼む、ここは私が。」
「はぁ、お前がそのつもりやとしても、この子らはそんなつもりないらしいで。」
「ヒッヒッ、ご心配無用ですぞ辰仁鱗、もう既に罠を張ってあります、いつでも戦えます。卑怯とは言いませんよね?」
「1人でやるとか、流石にあたしらなめすぎっしょ。」
ずっと守られる側では無いというわけか、1年生なのに成長が早いな。
「わかった、ならば一緒に行くぞ!」
「我は酒呑様の配下、大江山四天王が一柱、金童子。相手をしてやる、かかって来い。」
洛陽闘技場 棺桶内 辰仁弟サイド
「あっはっは!閉じ込められたようだな!」
「そんな余裕ないわよ豪、早く抜け出さないと!」
「早く逃げないとメェ。」
「大変なことになったね、健太君…」
「そうだな、南江達とはぐれてしまったけど、辰仁達がいるとなんとかなりそうだね。」
「遥ちゃん達、大丈夫かな。」
うむ、俺と一緒に閉じ込められたのは真由、遥乃。そして魁紀と同じ班の梁、健太、千尋か。相手がどういう妖魔か分からない以上、下手には手を出せないな。いや、むしろ早急に決着をつけた方がいいのか。
「豪、考えてる暇はないわよ!もうあいつ攻めてきてる!」
「はっははー!我は虎熊童子!大江山四天王が一柱よ。ガキども、嬲り殺してやるわ!」
うむ、ならば!
「名を名乗られたなら!こちらも名乗るのが礼儀というもの!干支十二家が1人、辰仁豪だ!俺と鬼丸が存在する限り、お前に勝ち目はない!あっはっは!」
「もうどっちが悪者なのよ…」
洛陽闘技場 ????サイド
だいたいの生徒の避難は終わったか、でもあいつらが見当たらねぇ、もしかしてこの黒いドームの中か。妖気で作られてるなら術者を倒さない限り壊れることはない、なら中にいるあいつらに任せるしかねぇ…クソっ!俺はまた何も出来ねぇのか!
ん?あの影、そしてあの妖気は…
「クハハッ…やっと手に入れたぞ…童子切!ガハッ…」
(苦しかろう茨木、貴様に我の妖気は耐えられん。女狐からいくら力を得ようと、貴様と我では格が違う。早く童子切を魁紀に返さんか!)
「クハハ…笑わせるな…今からお前の力を…俺のものに!」
「待て、どこに行こうとしてんだ、お前。」
「あぁ?クハハ…クハハハハッッ!!お前!生きてたのか!根元洋海!」
「そうだ、生徒に迷惑をかけた分、貴様を討つことで汚名返上させてもらう!」
こいつが、こいつこそが諸悪の根源。ならば、俺がやらなきゃいけない、今ここで!
「クハハッ!!いいだろう!!だかな、先にこいつの力を頂く!」
あの剣は、童子切!?丑崎さんから奪ったのか…でもこいつに酒呑童子の妖気は耐えられないはず、さっきまで息も荒かった。それなのにどうやって…
「今から俺は…三大妖魔に並ぶ!クッハハハハハッッ!!」
(なっ…!?意識が…女狐め…茨木になにを…魁紀よ…すまぬ……)
茨木童子の姿が、酒呑童子に近づいていく…
長い髪が半分赤く、角が片方金色に、腰に瓢箪、背中に背丈と同じくらいの金棒…まさか酒呑童子を取り込んだとでも言うのか…
「クッハハ…クッハハハハハ!!素晴らしい!素晴らしい力だ!遂に俺は!酒呑童子を超えられる!!」
「合体したとでも言うのか…」
「それは違うな!これは吸収だ、あの方から授かった力で、俺は酒呑童子の力を強制的に吸収できた。つまり、この童子切を抜くことすらできる!」
「それは丑崎さんの物だ!」
「おかしなことを言う、遥昔にあの頼光が丑崎家に託しただけの物。つまりだ、頼光が死んだ今!この童子切は誰のものでもねぇってことだ!クッハハハハハ!!」
「それは違う!託したと言うなら、それは頼光が責任をもって信頼できる丑崎家に童子切を渡したということだ。丑崎家の管理下にあり、唯一その剣を扱える丑崎さんが持っている限り、それは丑崎さんの物だ!」
丑崎さんも今戦っているはず、だが童子切がない状態では全力は出せないだろう。だから一刻も早く童子切を取り戻し、丑崎さんに渡さないと!
「話が進まねぇな、まあいい。お前を殺して話を終わらせてやるよ。」
「なめるなよ、俺はただお前に乗っ取られるために、教師になった訳では無い!覚悟しろよ茨木童子、引導を渡してやる。」




