第百五集 本音
10月14日 9:00 1年5組教室
「おまんらも知っての通り、今月末は文化祭じゃ、派手に楽しめよ?」
「「おー!!」」
学校開始早々、熱気溢れる教室だ。
「それで準備期間はあまり設けられとらん、ざっと2週間弱じゃ、何をやりたいのかは早めに決めた方がええのう。おまんら宛の任務も来とらんみたいじゃから、ゆっくりでええ、30日までに準備を終わらせるんじゃ、ええな?」
2週間か、任務が来ない限り準備に時間を回していいみたいだけど、はてさて間に合うのか。
「ほんじゃわしは忙しいからもう出るが、30日までに文化祭準備が終わらんかったら、おまんら分かっとるのう?」
「「…はい!」」
あまりもの目つきにクラス全員の時間が一瞬止まった。
「ならええ、またのう。」
そう言って葉月先生は教室を出ていった。冷残を倒した後も、葉月先生はこんな感じでしょっちゅういなくなったりとかなり忙しいようだ。どうやら冷残を倒した功績が認められ、より極秘の任務を任されるようになったらしい。
その上で俺らの先生をしてるのって普通に凄いよね、ほぼ先生の仕事してないけど。ただちゃんと物理基礎の授業の時だけは戻ってくる、偉い。
「おっと忘れとった、そういや文化祭の後夜祭に相馬恵って歌手が来てくれるみたいじゃ、歌姫って呼ばれとるらしいのう。わしはあんま知らんけど、めでたいのうおまんら。ほんじゃ。」
教室を出ると直ぐに戻ってきてとんでもない情報を話した葉月先生だった。
そしてまたどっかに行ってしまった。
「め、めめめ恵ちゃんが…ここ、後夜祭に来るだと!!!!」
静かな教室で1人だけ、叫んでるやつがいた。
「い、い、いいのか!?ただで恵ちゃんの生ライブが聞けるなんて!!」
龍太郎だった。相馬恵の話題で喜ぶの龍太郎くらいだけどね。
「お前ら、恵ちゃんのためにも、いい文化祭にするぞ!!ということで花札大会をやろう!!」
「そんなのあんたにしか出来るわけないでしょバカ!」
大谷が龍太郎の頭を叩きながら言った。いや、坊主頭だからめっちゃいい音なるじゃん。
「それだったら私は麻雀大会がいいな!あっ、もちろんなにも賭けないよ、ゲームとして楽しも!」
羽澤も羽澤で何考えてるんだか…
「麻雀も却下です。賭博に関することを学校でやる訳にはいきません。」
五十鈴の意見はご最もだ、これで親御さんとか来てみろ、最近の学生はなんてことしてるの!?って怒りかねん。
麻雀大会はさすがに冗談で言ってるとして、羽澤昨日屋台やりたいとか言ってたな。
「なんかの屋台とかいいんじゃねぇの、定番だし。」
定番かどうかは知らんけどね。
「魁紀…」
羽澤の視線を感じたが今は無視したい、またあのことを思い出しそうで嫌になる。
「それはいい案ですね、でも私にも1つ案があります。」
五十鈴は机の中からノートらしきものを取り出し、教壇に向かった。
「根元先生の日記に、文化祭でみんなでダンスを踊ったりと書いてありましたので、みんなでダンスを踊るのはどうでしょうか。」
そうか根元先生の日記か、そんなこと書いてあったな。
あの時は泣きじゃくって内容なんて特に考えなかったけど、冷静に考えてみたらダンス踊んのかよって今思ってる。
「琴里、踊るのはいいけどダンスの経験あるやつなんているのか?」
夏は踊ってもいいと考えているみたいだ、いいのか…
最悪俺も別に反対しないけど、ダンスって2週間ちょっとで踊れるようになるもんなのか?
「心当たりならあります、というより夏、あなたの方が心当たりがあるはずなのですが?」
「え?俺の知り合いに踊れるやつなんて…ああ!冬奈か!」
誰だ、冬奈。
「彼女なら手伝ってくれると思いますよ。」
「ええ…あいつ連れてくるのか…」
夏は非常に嫌そうな顔をした。
「大丈夫です、冬奈には私から言っておきますので。」
「それなら助かる、あいつ琴里の言うことだったら何でも聞くもんな、俺の言うことは全部無視するくせに…」
知り合い?というより親族かなにかかな。
「1人確保できましたが、もう1人欲しいところですね。」
とは言っても踊れるやつなんてなぁ。
「僕がやるよ、ダンスなら中学からずっとやってるから、教えるくらいならできると思う。たぶん、きっと…」
ここで新顔登場、簡単に紹介しよう。
新谷圭、第二班田口班所属陰陽コース、自信の落差が激しいのが特徴だ。
「ありがとうございます新谷さん、では文化祭当日までお願いしますね。」
「任せて!やるからには頑張るよ、僕にできるかわからないけど…」
前半の自信はどこに行ったよどこに。
「ということで、私たち1年5組は文化祭でダンスを踊ることにします。反対の方はいますでしょうか。」
反応無し、決まりだな。
「では文化祭当日まで、任務が無い時はダンスを練習しましょう。男子担当は新谷さん、そしてここにはいませんが、女子担当には夏の妹の冬奈にやってもらいます。」
夏の妹だったのか、あいつ妹いたんだ、兄に似てゴリマッチョ妹じゃないことを祈るよ…
「とりあえず今日はこの辺で、また明日以降よろしくお願いします。」
五十鈴は一礼して席に戻った。
ダンスかぁ、踊れるかな…
15:00 1年5組教室
「また連絡事項じゃ、よく聞いとき。」
1日が特に何も無く終了し、葉月先生も帰ってきて、帰りのホームルーム中である。
「文化祭と受験で、中学生が見学しに来ることが今後多々増える。特にここは妖術学校じゃからのう、見学する学生もかなり多いと予想されとる。」
学校見学か、俺は行かなかったなぁ。めんどくさかったから。
「希望次第で専用体育館で模擬戦を行うこともあるそうじゃ、喧嘩吹っかけられたらやり返したれ。」
へぇ、それは面白そうじゃん。
「連絡事項はそんなもんかのう、まあ中学生が見学しに来るだけじゃ、他は何も変わらん、いつも通り授業受けて任務こなしたらええ。ほんじゃ今日は終いじゃ、またのう。」
さーて今日も終わりっと、帰ろうか。
「魁紀、帰ろっか。」
羽澤が帰りの準備を済ましてこっちに歩いてきた。
どうしよ、気まずい。なんでこいつは何も無かったかのように接して来るんだろう。
「何か気になることでもある?」
気になることだらけだ…もうどうしよ、今更普通になんてできねぇし…
「あっ、考えてること当ててあげる。病院でのこと考えてたでしょ。」
あっ…
「何も言わないってことは合ってるんだね、もう魁紀ったら恥ずかしいこと思い出させないでよ!」
羽澤は少し頬を赤くして顔を逸らした。てか俺が恥ずかしい。
「なんでお前はなんともないんだよ、こちとらあの日からずっと考えてんだぞ。」
「そりゃ言われたら私だって考えちゃうよ…!でもさ、欲しいものはさ、自分から手を伸ばさなきゃ、永遠に届かないじゃない?」
どういうことだ、まるで意味がわからんぞ…
「うーんこれは分かってない顔だな…」
「なんでわかるんだ。」
そんなに顔に出てたか。
「じゃあ魁紀にも分かるように言うね。ふー…私はね、魁紀が好きなんだ。」
こいつ…何言い出して…え…?えぇ!?
「魁紀は鈍感だから、こうでも言わないと絶対気づかないもんね。でも勘違いしないで、私は今直ぐに返事が欲しいわけじゃないの。もっと時間を掛けて、鈍感な魁紀でも振り向いてくれるように頑張るから!」
教室に誰もいなくて助かった…こんなとこ見られたら俺…恥ずかしすぎて死ぬ…
てか嘘でしょ、そうだったの!?いつから!?俺好かれる理由あった!?もうなんなんだ、え!?
「じゃあ私先帰ってるね。このことは真由ちゃんには言わないでね、これでもう競走は始まったんだから。」
「それってどういう?」
「うーんそれはわからなくていい!鈍感なのも時にはいいこともあるね。」
わからなくていいってどういうことだ…?最後何言ってたかよく聞こえなかったし…
「早く帰ってきてね、遅かったらご飯抜きにするから!」
「あっ!ちょっと待ってよ!」
そうか、そうだったのか…羽澤は俺の事を…あんなこと言われちゃったら俺これからどうやって羽澤と接すればいいんだぁ!?




