表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

父親

 朝食の後、再び掃除を少しだけ済ませた後で、私はお父様の部屋に向かう。今の時間なら起床しているはずだ。

 ドアをノックすると、その向こうから「誰だ」という声がする。


「お父様。私です。ヒルダです。ドアを開けてもらえませんか?」

「ならん」

「どうしてですか?」

「どうしてもだ。用事があるならそこで言いなさい」


 いつもこうだ。父はグレイ以外の人物は部屋に入れようとせず、常に鍵を掛けて籠っている。

 それも私が持つ母の面影のせいだろうか。


「お父様。私、婚約しました」

「なに?」

「お相手は竜騎士のルーウェン・シェルバー様という方です」

「ならん」

「ご報告が事後になってしまったのは謝ります。ごめんなさい。でも、あの方がいれば、もしかすると前みたいな生活に戻れるかも……」

「だめだ」

「どうして……?」


 少しの沈黙の後、お父様の声がドア越しに聞こえる。


「我が家はもうだめだ。諦めなさい。わしは近いうちに爵位を返還しようと考えておる」

「そんな……」

「その代わりにグレイにお前を託すことにする」

「え? それってどういう……」

「グレイと結婚しなさい。そして庶民として暮らすのだ」

「何を言い出すんですかお父様! グレイにこれ以上迷惑は掛けられません! もうお父様が何と言おうと私は諦めません! 私一人でも以前の生活を取り戻してみせます!」

「待ちなさい……!」

 

 引き留める声が聞こえたが、私は振り切って自室へと戻った。

 ベッドに腰掛けながら考える。

 グレイと結婚しろだなんて、お父様は一体何を考えているんだろう。それに、爵位を返還するだなんて……。

 お父様の考えが理解できない。あんな事を言われた手前、つい啖呵を切ってしまったが、本当に以前の生活を取り戻せるんだろうか……?

 ついついいつものため息を漏らしてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ