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閑話 あれの解説番組

 

「いや〜、早速ですが前回のグラウザーの活躍について、語っていきましょうか」

「まぁ、今回は初の試みですからね。手探り状態ですので、予め申し訳ないと言っておきます」

「そして、忘れてはならないこの方、グラウザー。本日は、よろしくお願いします」

「よろしく頼むぞ」

「あっ、キャラ付けはゲームだけで良いので」

「えっ、そゆこと言う?」

「手遅れなのに、なぁに言ってんだ?」 


 ある一つのチャンネルの月9にて、前回の楽園逃走のハイライトを見ようという番組が始まった。


 楽園逃走は全てのチャンネルの枠を取って生放送していたのに何故と思う者もいるだろう。しかし、一つ問題点が上がってしまったのだ。



【狂走者 グラウザー】



 こいつが視聴者を根こそぎ奪っていくせいで、他の逃走者、ハンターにスポットライトが当たらないことが問題になった。元々、色々な男性が一喜一憂する姿を放送し、独り身である女性の日々の生活の糧にしてもらおうという目的が、馬鹿1人が目立ったせいで変わりつつあったのだ。

 しかし、馬鹿1人のおかげで、番組自体の知名度は世界へと進出、参加者のレベルの上昇は目を見張るものであった。


 だが、それとこれとは話が別。


 本来の目的を残したい政府は、グラウザーのものだけを別の日に放送するということをした。

 事前に告知したところ、リアタイが見たい。グラウザー以外興味無い、と大いに反対されてしまった。


 しかし、これに待ったをかけたのが、グラウザー。


 政府の意図を汲み、高性能カメラを付けたドローンを四方八方に飛ばしての撮影だけでなく、一人称カメラを身に付けて逃げるからと説得。行動履歴を見たいなら番組放送後日、ある動画サイトの政府の公式チャンネルにて、ノーカットでアップ。


 何より、本番組にグラウザー本人が参加するという理由で事を抑えた。


 政府はグラウザーに味方してないが、グラウザーは政府の味方だった。


 そして、望んだ楽園逃走であったが、案の定事案発生。

 グラウザーは、戦闘と逃走、同時にしなければならない状況に陥った。

 かつて、頭部にハイキックされても、微動だにしなかったグラウザー。その戦闘能力が多少明らかになった。



 そして、今放送されている番組の告知に、うってつけのものであった。



「早速、第1ラウンドを見ていきましょう。激しい攻防でしたね」

「拳を避けられ、背負い投げ。しかし、地に背をつくことを防ぎ、アリゲーターの獲物を引きちぎる様な高速回転後に、十字固め」

「はい、ここまででも凄いです」

「それはどうも。十字固めで諦めると思ったが、意外にしぶとかったから焦ったぞ」

「しかし、その後の中段蹴りを腹で受け止めるのは、どういった考えで?」

「理由は単純に、ダメージ軽減とカウンター狙い。腹の頑丈さには、多少自信があってな」

「んで、悪魔の所業の張り手」

「殴らないだけマシだろう?」

「えっ、殴ろうとしてたんですか?」

「カメラあったから。じゃあ逆に聞きますが、いきなり同性に攻撃されて、顔面パンチをしない選択肢をするか?」

「「するわけない」」

「そうゆうことだよ」

「でも、最終的に顎にアッパーかましてるんですよね」

「四つん這い姿は、完全にベイオのリカーでした」

「歩く速度と同じ速度で移動すんの意外と大変だったんだぞ? てか、最終ラウンドの話すんなや」

「「おっと、失礼」」



「では、次第2ラウンド、いきなりの顔面パンチ。痛そうでは済まされないですよね〜」

「いや、マジで痛えのよ。唇切れたし、その傷身内が見るとキレだしたし、大変だった」

「でも倒れた後の立ち上がり方。あれカッコつけましたよね? 幼い娘が真似してたんですよ」

「うん、カッコつけたカッコつけた」

「そして、素早く懐に入り、連続ボディブロー。しかも、これ全部同じ場所狙ってます。おまけに、足を踏んで逃げ場を無くす。転けたら、マウント取って、首掴んで、拳の準備。あっ、私にもそれしてくれません?」

「じゃあ、懐に入って殴るところから」

「すみませんでした」



「そして、最終ラウンド。これはもう1発で終わりましたね。トドメの一撃!」

「誘い込む時、事前にハンターが諦めた後を利用していましたね。戦闘している彼が自分を追っているのも分かっている様子でしたし、運良ければ諦めたハンターに捕まっていることを見越していたのでは?」

「はい、第1、第2で自分が有利な状況で逃げ出したので、相手は奇襲するしかない。また、最初の奇襲で相手は自分の位置を把握していると予想。そして、それは配布されたスマホによるもの。位置と移動速度は分かりますが相手がどんな状態でいるのかは分からない。なので、四つん這い」

「はい、これも娘が真似してました」

「なんか、すまん」

「いえ、可愛いんですよ、こ・れ・が! 見て下さいよ、これ!」

「おや、可愛い。じゃあ、可愛い娘さんの為に、スペアの仮面プレゼントしよう」

「うわぁ、ありがとうございます!」

「あんたら解説しろや」

「「すみませんでした」」



「解説も終わりました。では、新たにこちらをドン!」

「何これ、何の人形? ねえちゃん、趣味悪いよ?」

「知らん! さて、グラウザーグッズ第三弾、首吊りグラウザー人形!」

「うっわ、いらねぇ」

「腕、足は、自由自在の動きを求めた結果、人形単体で立つことはできません。しかし、鑑賞用のスタンド用意しております。また、グラウザーの首に付いている縄、これを引っ張り出すと、『ゔぇあああ!!!』はい、この通り奇声を発します!」

「この声は、ゲームで使われていたやつか」

「お値段は7900円! 受注販売になりますので、お気をつけ下さい」

「いや、これは凄い。いろんなポーズ出来るんじゃないですか?」

「それ一つ貸して」

「えっ? あっ、はい」

「ふん!」

「「ああっ!?」」

「殴って叩きつけても、壊れない。子供が遊ぶ分には、良いものだな」

「いや、踏みつけないで下さい! 踏みつけないで!」

「強度確認は良いので返して下さい」

「はい」

「だからって、首を掴むな、首を!」



 それは、一発撮りだったという。


 奴は、ディレクターに告げた。

 自分から不意に性的な発言してしまうのをつっこむのは良いが、性的な発言を強要しなければ、基本的に何をしても大丈夫、と。


 だから、ディレクターは聞き好き勝手やった。


 なので、グラウザーの扱いを雑にした。


 そして、試しのリハーサルにて、



(あっ、最高。これで良いわ)



 文句無しの出来に、大変満足したそうな。


 この番組を見た、他バラエティ番組のディレクター。我先にと、グラウザーに出演要請するも、全て断られたという。




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