74 プール2
「悠人様! ぜひ、お背中を拝見させて下さいませ!」
「花香、セクハラは許されん」
「何故、何故お隠しになられるのですか!? 悠人様の背中は美の結晶。本日はそれをお披露目する折角の機会というのに、隠すなんて私には理解し難いですわ!」
「元々、この水着はエリナから渡された物だ。逆に言えば、これしか無かった」
「……そうでございましたか」
「うわ、こっわ。花香こっわ」
ハイライトオフになってしまった花香。
悠人は、「じゃあ背中見せるから落ち着け」とは言えず、何もせずその様子を見守ることにした。
でも、試しに頭を撫でてみる。少しハイライトが戻った。
「……花香さん、こっち来てもらえます?」
「ふふふ、これは陰謀。私だけを陥れようとする卑劣な罠……」
「花香さん〜」
見ていられないと優菜が花香を何処かへ連れて行く。悠人はその不審な動きが気になりついて行こうと思ったが辞めた。隠れて何かしている時は、女性だけの方が円滑に進む。男はそれを知ってる。
そして待つこと数分、
「悠人様! 先程は、失礼いたしました! ではご一緒に、ウォータースライダーに参りましょう。もちろん、私は悠人様の後ろですけれど!」
超ご機嫌な花香が物陰から出て来た。
……優菜は凄いなぁ。
それ以上、踏み込まなかった。
ところ変わって、大人組。
彼女達自身泳ぐというより、プールサイドベッドで寛ぐというのが第一。そこでガールズトークに花を咲かせ度々子が遊んでいるのを観察している。
因みに、子ども組はプールでボール遊びをしている。
悠人の生の水着を見るという目的を達したのだから、それ以上は求めない。ポロリ、ぼろんなど求めてはいけない。いや、あの抜けてる悠人だから多分、きっと、maybe。
「ア゛ァ゛ッ!」
「悠人くーんっ!!」
なさそうだな。
「うぁぁ、痛ってえ。ティッシュない?」
「はい、悠人様」
「リボン、ありがとう」
「いえいえ」
鼻血が出たため、プールから上がった悠人。
リボンからティッシュを受け取ると、大人組の輪に入ろうとせず、逆に離れようと動き始めた。
それを敏感に察知したリボン。まぁまぁと悠人を説得し、大人の輪にねじ込む。
「アダルティーな話にはついていけないぞ?」
「最終的には、愚痴の言い合いになるから平気よ〜」
「悠人君、女だけの会話って時折寂しいものがあるの。だから、花を添えないと」
「悠人さん。偶には、大人の会話に混じるのも悪くないですよ?」
「……では、失礼して」
無事悠人の確保に成功した。
女達は悠人に見えないように握り拳を作った。いつもは娘達に連れていかれてしまうので、悠人と過ごせる時間は僅か(真夏、エリナを除く)。この機会を逃さないように、彼女達は、男に話題を振る。
「そういえば〜、最近、里奈が毎日のように家に行ってるけど大丈夫〜? 迷惑じゃない〜?」
「いえ、全く。里奈と過ごす時間は楽しいです。オンラインで対戦も良いですが、やはり隣に座って話しながら対戦をするのが好きですね。でも、俺は里奈よりもプレイスキルが無いのでいつも負けてしまいます。あと、里奈は勝つと必ず俺を煽ってくるんです。でも、その顔が得意げで楽しそうで、見てると自分も笑顔になってるんですよね」
「……ありがとうね」
「いえ、好きで一緒にいるので、感謝するのは俺です」
悠人はプールに背を向けているから見えないだろう。里奈が赤面しながら、体を震わせていることに。
因みに、ガールズはボール遊びをやめ、プールから少し顔を覗かせながら、ずっとこちらの話を聞いている。視線を大人組に向け、次は私の話題を出せと念じる。
レディズは、それを理解しつつも、避ける様に話を振る。
お前ら、お泊まりしたこと忘れとらんよなぁ?
結局、里奈の一人勝ちだった。
「いくつ!」
「23.98」
「……まずまず?」
「はい。まだ、慣れていない様子。ゆっくりいきましょう」
「おけ」
「悪い癖をいくつか見つけました。まずは、それを直します。その後、1km泳ぎなさい」
「分かった」
そういえば、悠人はトレーニングの為に来たんだよね。水着が見れるという甘すぎる誘惑により訪れたが、悠人が本来プールに来た理由を忘れていた。
トレーニングを始める、というエリナの一言にプールに入っていた少女達は、逃げる様にプールから上がった。マリアはどうするか悩んだのち、少し休んでから参加しようと一緒に上がる。
余計な視線もあるが、エリナと悠人を邪魔する者はいない。
邪魔したら地獄に引きずり込まれる。
今も、悪い癖を直そうと悠人の体に触れているが、咎めることはしない。エリナが向けている視線からは下心を感じない。
悠人もエリナの説明を真面目に聞き、癖を直したら、そのまま泳ぎ始めた。
「ねぇ、1kmってえげつなくない?」
「里奈ちゃん。いつも最初は2kmからです。今回が、初めてというので、少ないのです」
「ちょっと待って、最初?」
「1km程度でトレーニングが終わるわけないじゃないですか。ここは普通のプールではありません。様々な機能を兼ね備えてあります。次は、水の流れに抗って泳ぐことになるでしょう」
「リボン、ポリ袋の準備をしておきなさい。いつ嘔吐しても良いように」
「分かりました、奥様!」
その後、彼女達がトレーニングを見ていて思ったことは、
(だから、吐く前提でトレーニングをするやつがあるか!)
しかし、止める者はいない。
我が身大事な女達であった。




