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53 日常的?な話

 


「ゆーとさま、おじゃましにきた」





 休日、暇を持て余していると夜々ちゃんから連絡が来た。曰く、用事を終わらせて帰ろうとしたら俺の家の近くを通るので寄ってもいいかとの事。


 もちろん、俺はOKした。


 それで現在遊びに来たところである。





「悠人様! 私もおりますわ!」





 訂正、花香さんも遊びに来た。

 触れ合い会にて一声掛けたら抱きしめて構わないと言質を取られてしまった。しかも、声を掛けながら抱きしめる為、前と全く変わっていない。







「あらあら、元気なのは宜しいけれど、あまり迷惑をかけないように」





 さらに訂正、栞さんも来た。


 これには俺も驚いた。


「あの栞さん、俺の家何も無いですよ?」



 本当にゲームくらいしか無い。

 大人の貴族の女性が楽しめるものなんて置いてないと思う。

 今は真夏が居るから暇を過ごす事はないだろう。


「貴方が居れば問題ないですよ」


 えっ、そういう問題?


「いつも夜々と花香さんが悠人さんとどうしているのか。保護者として気になっていましたからね」

「特に何もしてませんよ? 俺が馬になったり、一緒に昼寝するくらいです」

「何でもないように異常な事話さなくて結構ですよ」


 そういう事を言われるとは心外ですね。


「あら、どうぞ上がって下さい」


 リビングに居た真夏、いつも通りテレビを見ながらゆっくりしている。



「真夏さん、やはり息子さんは異常ですね」

「はは、いつも通りです。昔は物静かだったんですけどね〜」

「あら、気になりますね。お聞かせくださりませんか?」

「ええ、構いません」



 うん、あっちもあっちで楽しく談笑するだろう。


「ゆーとさま、ゆうなは?」

「寝てるよ」

「なるほど、では今は私が背中を独占できるという事ですね」

「……どうぞ」

「やりましたわ」

「わたしはしょうめん」


 花香さんが背中に抱きつき、夜々ちゃんが俺の膝の上に乗り、寄っかかる。


「それでこれからどうする」

「ん〜、ゆっくりする」

「寝る?」

「ねる」

「じゃあ、毛布持ってくるから離れて」

「いや」

「嫌ですわ」


 はい、分かってました。

 言っても聞かない2人なので、俺は毛布を持ってくるのを諦めて、ゆっくりと横に倒れる。


「さぁ、寝るか」

「ん」

「悠人様、腕枕も所望します」

「どうぞ」


 2人を腕枕し、いざ寝ようと思ったその時、



 俺さっきまで寝てたじゃん。



 というわけで、2人の寝顔を見ている事にした。







「あら、3人とも寝てしまいましたか」

「いえ、悠君は起きているみたいですよ?」


 真夏と栞が悠人に目を向けると、寝ている2人の寝顔を見て頭を撫でていた。すると、寝ているはずの2人は少しだけ頰が持ち上がっていた。


「人の家に上がってからすぐ寝るというのはどうしたものでしょう?」

「いえ、いつも通りです」

「……そうですか」

「慣れてしまえば可愛いものです。新しい娘が出来たみたいですよ」

「あら、良かったじゃないですか。子沢山ですね」


 真夏だからこそ笑っていられるが、普通なら発狂して気絶している事態と栞は思う。

 年齢は10代前半、まだ社会も知らない男の子が他の女性と一緒に寝ているというのは明らかにおかしい。


 まぁ、木下悠人と言えば全て終わってしまうのかも。


「しかし、今思えばよく息子さんを学校に行かせる事を許可しましたね」

「……悠君が久しぶりに私に言ってきた我儘だったんですよ。絶対に危ないと思って反対していたんですが、それでも聞かないで行くと言われて。もしかしたら、家にずっと1人でいるのが嫌だったのかなと今は思います。学校に行くようになってからは悠君は明るくなりましたし、前よりかはあまえてきます」

「まぁ、そのせいで女性関係に悩みが生まれましたけど」

「本当にそうなんですよね。女誑しというわけではないんですが、えっ……と、そう、年下の子を見ているような感じなんですよ。だから、仕方なく我儘をきいている気がします」


 殆どの同級生や上級生にも近所のお姉さんのような人と言われていると真夏は話す。


 ここでお兄さんと言われないのは、そんな都合の良い男の人がいないため。


「あっ、そういえば知ってますか? 悠君、脇腹凄く弱いんですよ」

「このタイミングで話変えますか?」

「これ以上話しても暗くなる気がしまして。それならちょっと可愛い息子の話を聞いてください」

「分かりました。それでどう可愛いんですか?」

「こう悠君の脇腹を人差し指で突くと、ひょ!と体が跳ねるんです」

「貴女、息子さんに好かれたいの?嫌われたいの?」

「何言ってるんですか。もう好かれてます」


 こう自信満々に言ってはいるが、事実なので何も言い返さない栞。正直、羨ましいとさえ思える。


「その後、お返しと言わんばかりに私の脇腹を何回も突いてくるんです」

「私も突けばやり返されますか?」

「諦めて下さい」

「あら、つまらない」



 すると、突然インターホンが鳴る。

 真夏がもしやと思いドアホンを見ると、




『悠人様、近くに寄ったのでお邪魔しに来ました!』




 マリアが居た。そしてその隣にはエリナが。


 実は栞と話している間に、エリナから連絡が来ていた。

 勿論、真夏は断ることなく了承。そして今に至る。


 マリアとエリナは軽く挨拶を交わし、真夏から悠人が2人と寝ている事を聞く。マリアは少し微笑みながら、3人が寝ているリビングへと向かう。


「マリア、何をするつもりなの?」


 エリナが声を掛けると、


「えいえい」


 悠人の頰を2回ほど突いた。

 その行動に大人達は苦笑いを隠せない。そのうち2人は、彼が起きているのを知っているので尚更。


 マリアは何度もそれを繰り返すと、




「かあっ」




 と急に悠人が口を開け、マリアの指を噛まんと迫る。しかし、マリアはそれを分かっていたかのように手を引いて逃れる。

 彼の口は空を噛み、カチンと鳴る。


「悠人様、おはようございます」

「起きてたけどおはよう」


 悠人は少し不機嫌そうに目を細めている。

 マリアは相変わらず、微笑みながら悠人を見る。


「私が来ました」

「いらっしゃい」

「さて、花香さんをどかしますね」


 よいしょ、よいしょと転がして悠人から離そうとするマリア。しかし、花香は転がらない。


「起きてますよね、花香さん?」

「当然ですわ。なーに勝手に引き剥がそうとしているんですの?」

「あら、どいて欲しいからです」

「ふふふ、言いますわね」

「ふふふ、ええそうですとも」


 黒い笑みを浮かべて、互いに笑い合う2人。


「エリナ、まるで私達を見ているようですね」

「そうね、本当によく似て育ちましたね〜」

「いや、止めて下さいよ。2人とも」


 そう談笑する貴族婦人2人、それを見る普通の婦人。



 そして、



(……2人は仲が悪いのだろうか? まぁ、でも楽しそうだしいいか)



 仲良い友人にはちょっかいを出したくなるものと、1人納得し、未だに眠っている幼女を膝の上に乗せてそれを微笑ましく見ている男が居た。




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