12 席替え
「今日は席替えをしたいと思います」
「「「「「やったぁ!!」」」」」
どうも皆さんこんにちは悠人です。聞いていた通り今日は席替えをするらしい。しかも総合の授業中に。まぁする事は特にないから別にいいんだろう。
それに俺としては席端ならどこでもいいんだけどさ。
( ゜д゜)<そんな殺生な…
こんな顔しながら固まってる里奈とマリアを見たら迂闊にそんな発言できないわけなんですよ。
「では早速悠人君くじを引いてね」
あっ順番俺からなんだ。
先生が俺の席までくじが入っている箱を持ってくる。そして俺はくじを引くと、
「1番……廊下側の最前列の1番右の席だね」
引いた後は席に戻りすぐにでも移動出来るように準備をする。何故か小学校は机ごと移動させなきゃいけないから面倒なんだよな。荷物だけでもいいと思うんだけど。
「後今回は席をくっつけますからね〜。最近みんな忘れ物が多いので隣同士でシェアし合ってね〜。大丈夫、悠人君からも許可してもらってるから」
ガタッ!!
マジでッ!? みたいな顔して席を立ち上がる女子達。とりあえず里奈とマリアの2人と話していようと思っていたが、
ゴゴゴ(o言o)ゴゴゴ
こんな様子じゃ話しかけられません。この木下悠人自殺行為は絶対にしないので本を読みます。
そうです、逃げです。
ハハッ! この小説面白いねぇ〜!!(白目)
そう思っていると、女子全員は教卓に集まっていた。
席替えをする時の先生を見る女子達(ある女子生徒2人を除き)の目はまるで神を見る様な感じだったとのちに先生は語る。
クラスの女子誰もがこのチャンスを逃さんとしていた。それもそのはず彼の席と隣になった2人は何と彼と話す機会が多く、そしてその2人は下の名前で呼んでもらえる仲になった。
そしてこの数ヶ月の間に彼の素っ気なく冷たい、人を寄せ付けないイメージは完全に無くなっており、今の彼は明るく笑い、よく喋る様になっていた。
アニメ、ゲーム、小説、ニュース、スポーツ、最近の出来事、カテゴリーが豊富なためそのどれかのネタを持っていれば誰でも彼と話せる。また彼が知らない事を話しても興味を示して聞いてもらえる。
まさに対話のスペシャリスト。
おまけに名前を覚えてもらえるというサプライズ。そして今彼は学校殆どの女子の名前を覚えている。普通では考えられない。
訳を聞くと、
「名前知らなきゃまた話すとき気まずいだろ?」
少女漫画よりも優しいイケメンがそこにいた。
どうして彼は明るくなったのか知りたいが、まぁこっちの方が良いという理由で誰も深く考えることはなかった。
実際はあまりの肉食過ぎる女子達を見て草食系女子を作る事を諦め、吹っ切れて家でのテンションで過ごしているにすぎないのだが。
しかしそんな事はどうでも良い。今重要なのは彼と机をくっつけて隣同士に座れるというもの。逃すわけにはいかない、他と差を作る絶好のチャンスなのだから。
あの2人のように仲良くなり下の名前を呼んでもらえる仲になれるかもしれないのだ。
しかし席の決め方はくじ引き。運勝負である。
だがまずは不正がないか紙を全て出して確認する。先生が作ったのでそんなことはないと思うが万が一そんな事はあってはならない。特に彼の席とくっつける席8番を。
その紙のみを全員で確認。他の紙なんぞ唯のゴミにすぎない。彼と隣同士に座れない席などいらない。全員はそう思った。
そして先生は全員の見ている前で最後に8番をくじの箱に入れる。
確かに不正はない。後は引くだけ。
しかしその前に先生はルールを決めた。
1、席替え後にイジメなどが発生した場合、即座に彼を他クラスに移動するよう手配する
2、隣同士になったからといって彼に迷惑行為を行い過ぎた場合、直ぐ様席替えを行い、席もくっつける事はない(また迷惑行為を行なった者は永遠に彼の席の隣になれない)
3、隣に座る彼にうつつを抜かして成績が下がるなどあってはならないので、全科目のテストを点数常時80点以上を取り続ける。
4、彼と隣となった者が忘れ物を3回した場合席替えを行う
5、このルールを彼に知られてはならない
6、以上を守る者のみこのくじを引くことを許可し、隣同士に座る権利を与える
なるほど妥当である。
全員は納得したが、動かなかった。いや動けないのだ。
クラスの女子の人数は30人。つまり30分の1の確率で当たりを引けるというもの。急がば回れ、残り物には福があると思う者もいれば、早い者勝ち、先手は万手と思う者もいる。
でももし外れたら?
それだけの考えが彼女達の行動を遮る。そもそも引かなければ当たりを引くことが出来ないのだが、引いてもはずれを引く確率が高いのだ。安易に引いて外れを引いたら他の人を有利にさせてしまう。何処にでもある商店街のくじ引きとはわけが違う。
真剣だからこそ決断には時間が必要なのだ。
「もう総合の時間終わっちゃうし、早く引いてね?」
そしてあまりに引かないのでしびれを切らした先生が動く。くじを入れてからかれこれ10分も誰も動かないのでは埒があかない。しかし声掛けしても彼女達は一向に動こうとはしない。
ならば、
「もう悠人君に引かせちゃうけどいい?」
先生は彼女達にくじそのものを引かせなくするという行動に出た。
彼の隣は彼自身の手で決めさせるというもの。
「自分の名前を書いて箱に入れる。それを悠人君に引いてもらう。もう決定事項だから異論は認めないよ」
決められないのなら決めてもらえばいい。全員は納得し、それぞれ名前を書いて箱に入れる。不自然な折り目をつけても無駄、引くのは自分ではない彼なのだから。
「悠人君…もう一度引いてもらえない?」
「うぇ?」
完全に蚊帳の外にいた彼はのんびりとした雰囲気で本を読んでいた。そして急にまたくじを引けと言われ驚いていたが、直ぐに了承しゆっくりと箱の中に手を入れた。
女子達は、私を引いて、私の名前を、今度は私が、と彼の取り出した紙が自分の入れた紙である事をそれぞれ祈っていた。
そして…
「えっ……と、鮫島明日香さん?」
「はい」
………。
「「「「「「悠人君のバカァ!!!」」」」」」
選ばれなかった女子(2人除く)は泣きながら廊下に出て走り去って行った。
そしてこの時彼は思った。
(理不尽にも程がある)
「残念だったね〜」
「まぁ仕方ないですよ。」
2人はお互いに慰め合う。彼の隣になれはしなかったが、その後ろの席に座れれば少なからず話せる。次はそれを狙うだけ。
だが…
「いつになったらみんな戻ってくるのでしょう?」
「さぁ?」
「とりあえずは悠人様と話でもしていましょう」
「そうだね」
そして彼の元に行く。
「席替え、どうすんだよ」
女子達が殆ど走って行ったので席替えは明日に持ち越しだろう。でもまぁ最初にする事は、
「よろしくな鮫島さん」
「よろしく木下君」
隣になるんだから軽く挨拶。珍しく苗字で呼んでくれる人だ。いつも凛としていて頭もいいし運動も出来る凄い人。
「席くらいであんなになるものか?」
「そうね、普通になるわ」
でも泣くことはないだろう。なんか罪悪感に晒されてしまう。昔から女の涙には弱いんだよな。同じクラスの子の名前ど忘れした時涙目になったから、話しかけて来た女子の名前を全員覚えたりしたし。
俺ってやっぱり単純かもしれん。
てか、
「先生、この後どうするんですか?」
「ん〜、もう次は帰りのHRだけだし今日はプリントもないから帰って大丈夫だよ」
「ぶっちゃけ先生はこの状況を予想していました?」
「ドンピシャで当たってたんでビックリした」(*´∀`*)v
この人よく教員免許取れたな。
「悠人様〜」「悠人君」
「里奈、マリアどしたの?」
「いえ、今日は一緒に帰りませんか?」
「おっ別にいいぞ」
「じゃあみんなが帰ってくる前に行こ?」
「そうだな、鮫島さんも一緒にどうだ?」
せっかくだし誘うだけ誘ってみる。多分断られるだろう。
「……」
「鮫島さん?」
「ごめんなさい、やる事があるから」
「そうか…じゃあまた明日」
「ええ…また明日」
「先生さよなら〜」「「さようなら〜」」
「ええ、さよなら〜」
そして教室を出る。
てか誰かと一緒に帰るってのは初めてだな。




