97 友人さんいらっしゃい II
『話聞けぇぇぇ!!』
「何故、俺だけ辱められるのか」
「とーちゃんは、リアクション兼ボケ担当だからね!」
「わざわざ動画漁って素材収集している私が言うのもなんだけど、叫び声だけで50以上あるから使い勝手良過ぎる」
「それは褒めてるのか?」
「本当にありがたく使わしてもらってやす! 因みに今の映像は全部私が編集したものなの」
「お前、俺がしたさっきの親切返せ!」
番組の続き。
どうやら珍映像を見ている様子。しかも、グラウザーのみで悟とアグリウスのものはない。
ゲスト並びに番組スタッフ、来場のお客は笑い声を上げているが、自分の犯した黒歴史を間近で見させられている奴は居心地が悪かった。
「そろそろ、悟とアグリウスの珍映像出しても良いんじゃないか?」
「いえ、下手に出すと世論がなんと言うか」
「おい司会者君、俺は良くてこいつらダメなのおかしくね?」
「責任問題が!」
「汚ねぇ大人達だなぁ!」
「グラウザー、落ち着いて下さい」
「そうね、少しは心の余裕を持つべきよ」
「貴女達、ここぞとばかりに意気投合してんじゃねぇ」
良い笑顔で、宥めようとする栞とエリナ。
とても出会い頭に口喧嘩していた2人には思えず奴は文句を呟く。
「では、代わりに春妃さんで良いのでは?」
「男性がいるのに、わざわざ女性の黒歴史を晒す必要がありますか?」
「ちょっとくらい良いのでは? 箸休めって感じで」
「箸休めで私の黒歴史晒すの辞めてもらえます?」
「春妃さん、俺今現在進行形で晒されてるんですよ」
「それとこれとは話が別です」
「辛辣」
「そんな春妃に手紙を書き綴るグラウザーの映像です」
「また、晒されるのな。てか、需要が春妃さんしかないんだが」
奴が言う間にも映される手紙を書いている姿。
誤字があったり、納得がいかなかったのか便箋をくしゃくしゃにしてゴミ箱へと投げ込んでいた。
「嬉しかったですよ。……その、あんなにも褒められる事は今までなくて、よく私を見られているんだなぁって。読んでいる私まで恥ずかしかったですが」
「あの、感想言うの辞めてもらっていいですか?」
「未だに、僕に内容見せてもらえないんだけど」
「悟、見るもんじゃねぇし、お前宛のじゃねぇから」
「僕も気になる」
「春妃さんが良いって言ったらいいぞ」
「お母様!」
「春妃さん」
「駄目です♪」
「「!?」」
いつも必死にお願いすれば折れる春妃。
しかし、今回ばかりは断固として拒否。生まれて初めて男性からの手渡しで貰った手紙。しかも、嘘偽りない言葉で記された自身への数々の賞賛。息子とその友人には悪いが自分だけの物にしたかった。
「そろそろ珍映像にも飽きてきましたし、次へ行きましょう」
「司会者君、君はとことん失礼だな」
「貴方ほどではない。ではいきましょう! 次はこちら!」
【皆で答える恋愛相談!】
「俺だけ炙る気満々やんけ」
「別に良いじゃん、とーちゃん!」
「ゆ……とーちゃんの価値観は勉強になる」
「俺、この前配信で似たような事やって重い男って診断されたんだけど? 参考にならんぞ」
「だ、大丈夫だよ、多分」
「ゆ……とーちゃんなら、大丈夫?」
「えぇ、ルナどうだろう?」
「普通に良いと思うわ」
「エリナはどう思う?」
「とても素晴らしいと思うわね」
「栞さんはどうでしょうか?」
「深く愛するなんて素敵ですね」
「春妃さんはどうですか?」
「全く問題なんてありません」
「アドリアナさんはどう思いますか?」
「それは女性冥利につきますね」
「りっちゃんはどうよ?」
「絶対重い方が良い」
「うん、そっか。皆、ちったぁ否定しろ」
「貴方、一体どうして欲しいのよ」
重い男なんてやばいだろうと自分でも思ったし、第三者の目線から見ても痛いだけ。だからこそ、全員に否定して欲しかったのだが、まさかの全員が全肯定してくるので普通に焦った。
忘れることなかれ、ここはあべこべ男女比1:50ワールド。
ぞんざいに扱われることの多い女性達が、大切に扱われてみたいと思うのは必然。それも前世以上に。
故に、重い男は大変需要がある。
「テーマを出しますので、お手元のボードに一言記入をお願いします! それで視聴者が1番関心を持った答えを出した方に詳細を説明をして頂きます。悟君とアグリウス君は、2人で考えて答えてね」
「はーい」
「分かった」
「やっぱり、炙る気満々やんけ」
「グラウザー、無難な答えを言えばいいのよ」
「そっかぁ、そうだな! そうだよね、ルナ。普通の答え言えば関心持たれないよね」
「そ、そうね」
「そこ、どもんな。不安なるやろが」
奴の普通と世の中の普通全く違うというのに、まだ自分を一般人と主張する。
【自分は男なのですが好きな人に告白出来ません。でも、相手に意識されたいので、どう行動したらいいでしょうか?】
「はい」
【さっさと告白しろ】
「だから出来たら苦労しねぇんだよ、骨屑」
「文句言うな。簡単やろが」
「おめぇは出来んのかよ!」
「悟〜!!」
「なぁに〜?」
「大好きでぇす!」
「僕も好きー!」
「僕は?」
「大好きでぇす!」
「ふふふ、僕も」
「そこは女性に告白しろよ!」
悟とアグリウスに指をさし、名前を呼びそれはそれは大きな声で、好意を伝えた。観客席から黄色い声援で埋め尽くしたが、一部は奴に対しムッとした表情で見ていた。
奴は、女性に告白するのは、ムードとか無いので辞めておいた方が良いと判断。春妃であれば、冗談と分かってくれるし、軽く流してくれるだろうなと思ったが、流石に辞めた。
「あぁ、次行きましょう! 悟君とアグリウス君はどうかなぁ?」
「めっちゃ口調変わってて草」
「黙ってろ、骨屑」
「見たか男子共! これがこの女の本性よっ!」
「やっぱり、お前は女の敵だわ!」
「幾多の女性達の告白を振っといて味方と思われているのなら、直ぐにその認識を改めるんだな」
煽り口調がキレッキレな奴。
それを横に置いといて、悟とアグリウスは答えを提示する。
【挨拶をする!】
「へぇ〜、それはどういう事かなぁ?」
「うん、とーちゃんからの受け売りだけどね。目を見て、名前を呼んで、挨拶すれば良いって!」
「悟、自分からが抜けてる」
「あっ、そうだね!」
「おい、骨屑」
「……悟、アグリウス、教えてあげなさい」
「とーちゃん、教えて?」
「ゆ……とーちゃん」
「……教室であっても、職場であっても、複数の人間で過ごす場所において、些細な行為が特別扱いと捉えられる。それは自分と他人の両方を見られるから。じゃあ、分かりやすい例をやるからそれを見て欲しい」
奴は立ち上がり席から少し離れた。
「ここは教室。俺が今からドアを開けて入る。そしたら、皆は俺に向かっておはようと言ってくれ」
「ガラガラガラ」と動作音を口から出したのち、横開きのドアを開ける動作をする。
「「「おはよう!!」」」
「うん、皆おはよう」
ここまでなら普通。
そのまま真っ直ぐ奴は自分の席に歩き、座る。そして、アドリアナへ顔を向けて、
「アドリアナさん、おはよう」
「おはようございます」
「現場からは以上です」
「では、詳しい解説を」
「最初は、俺が皆の挨拶に反応しただけ。アドリアナさんには、俺が自分から会いに行って、アドリアナさんの名前を呼んで、目線を合わせて、挨拶をして、返事を待った。男だもの、自分から挨拶するより、女性からされるのが多い。だから、男から行動した、されたっていうのが大変目に映る。ただ、それだけの話」
「凄い、考えられてますねー」
「デメリットは、その女性がイジメの対象になるくらい」
「前言撤回だ、骨屑」
「当たり前だ。こんな分かりやすい特別扱いしといて、水面下で何も起きないはずもない。いっその事恋人関係になって、見せつけるようにイチャついた方がまず手を出されない」
「へぇ〜」
「男の幸せを第一に考える素晴らしい女性がこの国には多いからね。でも、相談してきた子は無理そうなんで、好きな人がイジメられて弱っていく姿を目を逸らすか、静観していれば良いよ」
「毒吐くの辞めません?」
「そもそも、何でこの場で恋愛相談するんだよ」
生配信ならともかく、何故周りに女性が沢山いる中で、恋愛相談をしているのか全く理解できない。
確かに、来るべき日の覚悟は決めているが、女性と恋人関係になった経験などない。女性と過ごす事が多いという理由だけで何でも答えられると思ったら大間違いである。
「だって、私達の前ですらそう言った話をしないじゃない」
「エリナ、普通に恋愛相談しませんからね?」
「栞さん、分かってらっしゃる」
しかし、奴の引き出しを開けるにはアグリウスと悟では、今のところ不可能であった。だが、現在は大人達の同調圧力によって、心なしか緩くなっている。
「そもそも、グラウザーさん。貴方の好みの女性っているのかしら?」
「いや、アドリアナさん。俺も男ですもの。好きなタイプくらいいますって」
「あら、そうなの? てっきり長く過ごした方と親密になるかと思いましたが、そうではありませんのね」
「そうですね〜、活発な女性も良いと思いますし、でもお淑やかな女性も魅力があります。同年齢の女性も話題が合うので話が進みますし、年上の女性も自分結構消極的なので引っ張ってくれそうですし、年下の女性は守ってあげたくなる衝動に駆られます。あっ綺麗な方も素敵だと思いますし、だからといって可愛い方も嫌いではなく大好きですね」
「つまり、何でも良い?」
「せめて、俺の周りには魅力的な女性が多いっと言ってくれません? てか結局俺が答えてんじゃん!?」
「それで、性格は拘りはなくても、体型とか拘りはあるのかしら?」
「えっ、ルナ。あの、相談は?」
「貴方の心を曝け出しなさい」
「ルナ、俺の恋愛相談になってる!」
「やっぱり、うちの母さんみたいに胸が大きい方が良いの?」
「直球だな、おい!」
「とーちゃん! 年貢の納め時だよ!」
「性癖を言うのに納め時があるのか!?」
期待した眼差しを向けられている。性癖を暴露するのに期待されても困るのだが、ここまで周りに囲まれてしまっていると答えるまで終わらない。
奴の答えとは、
「俺は……」




