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93 また染める

 



「リボン、頼むぜ」

「はい、任せて下さい。あっ」

「えっ、ちょっと」

「……冗談です」

「その間は何だぁ、おい」

「マジで大丈夫なので、ご安心を」


 女装の為に、長髪に伸ばしている。

 しかし、何事も限度があり、膝まで伸びてしまった髪の毛を見て流石に切らねばと思った悠人。だが、自身で髪を切るという器用なことは出来ないので、常に誰かに頼んでいる。


 行きつけの美容院に行こうと思っていたが、リボンが「あたし、資格持ってます」の一言で、折角だからお願いする事に。


「後、また染めようと思うんだよ」

「そうですか? 黒色に染め直すんですね」

「いや、白に」

「おや、夜々様の為にですか?」

「期待の眼差しを向けられてしまっては断れないのだ」


 マリアを驚かすだけの為に、わざわざ金髪に染めた。そして、見事驚かすことに成功して満足していた悠人。その後、黒髪に戻す事なく、そのままにしていた。だが、そこに不満を持つ少女がいた。


 それが夜々である。


 次は自分の髪の色にも変えてくれるのではないか。いや、変えて欲しい。ぜひ、一緒の髪の色にして欲しい。しかし、いくら待てども一向に変える気配がなく、ただ時間が過ぎるばかり。


 地毛の黒髪と染めた金髪が混じり合う頃、夜々は痺れを切らして、悠人に誘いをかけた。


 ただでさえ金髪は私生活でもあまり見かけないのに、白に染めた場合、自然にすれ違う人の視線の的になる。よって、男とバレる可能性が高くなってしまうだろうと。


 そんな事を考え、返答に困っている間、小さな瞳に涙が溜まった。男の返答は、はいかイエスのみ。


「あっ、浅野町から出なければ平気だよな?」

「大丈夫ですよ、浅野県内ならどんな姿であってもバレてしまいます」

「あぁ、そうかい。手遅れかい。えっ、範囲広がってる!?」

「ああでも、ちゃんと真夏様には訳を自分からお伝えして下さいね」

「何で?」

「地毛ならともかく、元々黒髪の悠人様がいきなり白くなったらストレスを与え過ぎたと勘違いされますよ?」

「そういうもんか、大丈夫大丈夫」

「さぁ、切り終えましたので、染めますね〜」

「お願いしまーす」

「うわっ、切っても無駄に長いですねぇ」

「無駄、言うな」


 ちなみに、悠人の髪を切る、染めるだけの為に、資格を取ったリボン。女の行動力は凄いのだ。


「暫く待つのも大変だな」

「ほぇぇ、悠人様オールバックも似合いそうですね」

「そうか?」

「はい!」

「おう、ありがとう」


 ラップに頭を巻き付けている悠人を見て、リボンは思ったことを言う。というか、この姿すらレアなのではと思い写真を1枚撮る。


 そうして暫く時間が経ち、真っ白へと着色した髪を見てリボンは「意外と似合う」と感想をこぼした。


「夜々ちゃんに見せなければな」


 早速自撮りをして、夜々に写真を送る。

 直ぐに既読がついたが返信はない。どうしたもんかと悩む悠人。その間にストレートから色々な髪型に変えて、遊び始めるリボン。


 唐突にインターホンが鳴る。

 出迎える前に、ドアが開いた。


「来た」

「うん、いらっしゃい」

「私が1番に見たかった」

「そっかー」

「ゆーと様、カッコいい」

「ありがとう」


 いきなり訪れた夜々。

 目をキラキラと輝かせて、悠人の髪の毛を触る。うっかり「おおー」と声を漏らす夜々に悠人は自然と笑みを浮かべる。最終的には、マフラーの様に首に巻く。


「薬品の匂いとかしないか?」

「大丈夫」

「大丈夫ですよ、無臭の物を用意しましたから。頭皮にも優しいので、禿げる事はないと思います」

(……禿げる、薄くなる)


 将来、禿げたり薄くなるかもしれないという事実に男の背筋が冷えた。これ以上髪の色を染めるの黒に戻す以外にはやめよう。そう心に誓った。





「うわ、禿げるわよ」

「柳田、貴様は的確に痛い所をついてくるな」

「事実を言ったまでよ」

「ほう?」

「いだだだだだっ! 少し乱暴者になったわね。私は悲しいわ」


 褒めるより、悪口が出るのは柳田らしいが、少し気にするようになった男に対して言うことではない。

 そして見よ、乙女の大事な顔にアイアンクローをする男の姿を。少しずつだが女性の扱いを変えてきているのだ。


「というか、髪型は縦ロールなのね」

「真似し……呪われたのさ」

「ほほう、では私の髪型は呪われていると?」

「いえいえ、とても素敵な髪型でありますとも」

「天誅♪」

「ぐぉぉぉぉぉ!!」

「何回目よ」


 いつの間にか後ろに居たマリアに後頭部を掴まれて、力一杯握られる悠人。もう二桁以上も髪の毛をネタにして制裁を加えられているというのに全く懲りていない。というか、懲りる気がない悠人。


「もう悠人様、だから私の髪型は癖っ毛なのです」

「俺は見たぞ! かつて泊まっている時、朝ストレートヘアにしようとしてヘアアイロンした髪の毛が何事もなかったかの様にクルンと巻き戻った縦ロールを!」

「そ、それは……」

「あっ、それ私も思った」

「エリナ様も昔は縦ロールだったらしいです。20歳になる頃には、少しずつ緩み始めて今のストレートになっているらしいですが」

「そっか、遺伝か〜」

「うぅ、私も他の髪型にしてみたいのですが」

「縦ロールじゃないマリアはマリアじゃないと俺は思うのよ」

「縦ロールが私の本体ではありません! なら予言します! 悠人様は将来絶対に禿げます、絶対にツルツルになります!」

「あー、あー、お嬢様おやめ下さい! 不吉な予言は大変よろしくありません!」


 その時、ぶちりっと音が聞こえた。


「……せめて藁人形に詰めといてくれ」

「いや、呪いませんから!」


 そしてマリアは抜けた髪を、その辺のゴミ箱に捨てた。



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