国王激怒する
本日2話目です
既に書かせていただいておりますが、諸般の事情により投稿に間が開きます。
今は、何とか書き上げた物を全て予約投稿させていただいていますので、ある程度の物語まで進んだ物が掲載されています。
よろしくお願い致します。
宰相一行が王都に戻って来るのを心待ちにしていた国王。
だが、宰相が戻ってきてから受けた報告は国王には受け入れられないものだった。
ナタシアが王族を離脱して、キグスタと共に過ごすと大勢の前で宣言したと言うのだ。
眩暈がして思わずふらついてしまったが、何とか持ちこたえる国王。
「それで、グリフィスとは話をしたのか?」
「はっ、グリフィス辺境伯は意図的にナタシア王女の存在を隠蔽していたと判断いたします。もちろんワリムサエの町のギルドマスターも同罪です」
額の皺が増える国王。
「それで、お前達は何をしに行ったんだ?」
その矛先はカンザ一行に向かう。
選抜メンバーから外され、持っている武具は自ら調達したまあまあの武具。
選抜メンバー復帰の条件として、ある程度の戦果を求めた国王だったが、結局何の戦果もなく、カンザがふざけた事を全員の前で喚き散らした事実だけが頭に残っている。
その事実を知られていると知っているカンザは下を向いて黙る。
「もうお前らの顔は見飽きた。とりあえず放り出せ!」
ナタシアから明確な拒絶・・・・・・そう、気持ち悪いとまで言われてしまったカンザは、立ち直れないでいたのだ。意外と心が弱い男だったのだ。
その弱い心を隠すために、虚勢を張り、プライドが高く、他人を見下すことで自分を強く見せていた。
カンザのパーティーメンバーも、カンザの言葉を聞いて信頼関係に亀裂が入っていた。
そう、平民如きと言うあの言葉によって。
良く考えると、カンザはあの極限のダンジョンでの生活でも自分達を使うだけ使い、自分は何もしていなかった。
ひょっとすると、カンザは自分達を仲間ではなく、使い勝手の良い手駒程度にしか考えていないのではないか・・・・・・と。
その考えは大当たりだ!
だが、残念なことに数年かけて染められてしまった一行は、多少の疑念程度では洗脳が解けることは無い。
立ち直れていないカンザ、そして疑念が渦巻いているパーティーメンバー共に反抗することなく王城から放逐された。
そのままトボトボと冒険者ギルドの酒場で食事をとる。
これは、無意識下で動いているようなもので、明確な意志のもとの行動ではない。
やがて食事も終わると、お腹が膨れて栄養が頭に回ったからか、周りの状況が理解できるようになったカンザ一行。
「あいつ等、選抜メンバーの奴らだろ?なんでギルドにいるんだ?」
「いや、選抜メンバーから落ちたらしいぞ」
「あん?いつも最強だって威張り散らしていたあのカンザがか?ざまーねーな」
悔しさでどうにかなりそうだが、ギルドで暴れると冒険者になることはできない。
既に冒険者登録をしている冒険者側に原因がある場合は、冒険者資格が剥奪される。
流石にその程度の事は知っているカンザ一行は、何とか我慢する。
そう、彼らがこれから生活をするには、冒険者として登録してから活動をする必要があるからだ。
カンザは、冒険者として大成し、再び選抜メンバーになる事を誓っていた。
同時刻、未だに国王の怒りが収まらない謁見の間。
カンザ一行を追い出した程度では腹の虫がおさまらないのだ。
自分の意思に真っ向から反抗しているナタシア。
そして、ナタシアについている害虫であるキグスタ。更にはソレッド王国を裏切った<剣神>と<槍神>。
どれも気に入らない。
そして、そのどれも中心にいるのはゴミであるキグスタだ。
「お前達の報告は良く分かった。どうしてくれようか・・・・・・」
「父上、私に名案がございます」
そこに現われたのはナタシアの弟、ドレッド王子だ。
彼は<剣聖>であるフラウに憧れていた。そして、当時は<剣聖>であったファミュにも憧れていた、剣術に魅入られている王族だ。
しかし、フラウは失態続きで幻滅の対象となり、ファミュは王国を裏切った。
憧れの対象がこのような形になると、対象に対する怒りが尋常ではなくなる。
「宰相の話によれば、グリフィス辺境伯もキグスタと言う男を庇いだてしていたと言う事。これは明確な反逆罪に他なりません。あの姉・・・・・・いえ、既に王族を離脱して我らを裏切ったナタシアもまとめて反逆の罪を償わせるのです」
「ドレッドよ、それはグリフィス辺境伯と一戦構えると言う事か?」
抑揚に頷くドレッド王子。
この王子は、憧れがゴミに変わった瞬間の対応が非常に冷たくなる事で有名だ。
今回は、かなり慕っていた実の姉さえも反逆罪を適用する。しかも王族ではない状態でと言っている。つまりは死罪だ。
こう聞いては、国王としても少々悩んでしまう。
あれ程溺愛していたナタシアを死罪にしていいものか・・・・・・と。
キグスタがいる限り、それは無駄な心配なのだが・・・・・・
だが、国王として信賞必罰を曲げてしまっては国が立ち行かない、と、それだけを常に考えている国王は、やむなくドレッドの提言を受け入れる事にした。
「ドレッドの提言を受け入れよう。今この時を持って、グリフィス辺境伯に対して反逆罪を適用し、領地没収、爵位を剥奪する」
国王の決断により、今この時からソレッド王国とグリフィス辺境伯が完全に決別した。
そう遠くない未来に、二つの軍は相まみえる事になるだろう。
ようやく少しだけ落ち着きを取り戻した国王は、謁見の間を後にする。
丁度その頃、カンザ一行は冒険者登録をしてクエストを受注しようとしていた。
もちろんパーティーとして四人で登録している。
しかし、今まで得ていた報酬と比べると雀の涙程度の報酬のクエストしかなく、受付に聞くと、この周辺には高値になる魔獣はいないと言う事だ。
高値の魔獣は最近ワリムサエの町から入荷していると言う余計な情報まで教えてもらったカンザ一行。
ある程度の高ランクの魔獣を狩るため、そして無料の宿泊場所を得るために、改めてナルバ村に向かう事を決意する。
あのナルバ村は、王都からの進軍によって一時的に魔獣がいなくなっているが、時間が経てば元の状態に戻る。危険は伴うが、魔獣取り放題だ。
そして、あの村には既に誰一人として住んでいない。
つまり、空いている家は使いたい放題なのだ。
まともな家がどれほど残っているかは不明だが・・・・・・
王国から支給されていた金は、使いたい放題使っていたので、手持ちが殆どないカンザ一行。
おまけに今回は武器を自腹で購入せざるを得なかったので、少しでも節約するべきところは節約しなくてはならなかったのだ。
残り少ないお金で食料とテントなどを買い、ナルバ村に向かう。
カンザとしては、今度こそ返り咲く第一歩とする意気込みであったのだが、更にパーティーの亀裂を深めることになるとはこの時は思っていなかっただろう。
所詮はお山の大将であるカンザ。
本当に優れていると言えば話術程度で、他は上位スキルを持っている事、貴族出身である事、見せかけの強さ・・・・・・悪魔の討伐経験と言う張りぼての実績しかないのだ。
一度剥がれ始めたメッキは、中々修復することは難しい。




