ワリムサエに移動する
誤字報告ありがとございます。
荷物も纏め、家も感謝の気持ちを込めて軽く掃除すると、俺達はワリムサエに移動することにした。
何故か女子会なる物を開催していたナタシア、クレース、ファミュは少し落ち込んでいる。
理由はわからないが、体調が悪いとか言う訳ではなさそうなので、触らぬ何とかと言う事で、触れないでおこうと思う。
さりげなくヨハンに聞いても事情は把握していない様だったからね。
気を取り直してヨハンに移動を頼むと、転移であっという間に目的地に辿り着くことができた。
転移先にいる面々が驚かないように、人気のない所に移動するのは基本だ。
もちろん何の荷物も持っていない外部の者が突然この辺りをうろついているのも不自然なので、ナタシアが乗ってきた馬に形だけの荷物を載せている。
そこそこの大きさではあるが、重さは一切ない優れものだ。
流石はヨハン達。
確かにここはポカポカしていて過ごしやすそうだ。
「あ~、懐かしいわね」
「そうだな。もう十年以上も来てないからな」
父さんと母さんも笑顔になっている。
このワリムサエと言う町は、王都を中心としてナルバ村とほぼ真逆の位置にある町らしい。
ナルバ村と同じように辺境と言われる場所ではあるが、この辺りを統治している貴族が素晴らしいのだろう、防壁も整備されて相当賑わっている。
ナルバ村とは比べるまでもない。
これから暫くはここを拠点とするつもりだ。
とは言え今後の行動を決めているわけではないので、長期間留守にすることもあるかもしれないし、ナルバ村のあの家を、一時的な拠点とする事もあるかもしれない。
何れにしても、このワリムサエの町で住む場所とギルドの情報を早急に得る必要がある。
住居については当然必要で、ギルドに関しては、俺達の情報が王都から来ているかどうかの確認。
特にナタシアの情報が来ているのであれば、この町のギルドも使う事ができない事になる。
「父さん、母さん、これからどこに行くかは決まってる?」
「もちろんよ。母さんの育った家があるはずなので、そこに行きましょう。もう何年も誰も住んでいないはずだから、お掃除が大変だと思うけど」
「「「任せてください!!!」」」
おぅ、少し元気がないと思っていたナタシア、クレース、ファミュの女子会娘が突然張り切りだした。
う~ん、何がどうなっているかわからないけど、元気が出たようで何よりだ。
「フフ、ありがとう。頼りにしてるわね」
母さんにそう言われた三人は、更にやる気をみなぎらせている。
いや、事前にその情報を得ていれば直接そこに転移したし、超常の者達が綺麗にしておいてくれていたと思うんだけど・・・・・・母さんはノンビリしているからな。
だが、ファミュとクレースは力加減を間違えないでくれよ!
ドアを拭き掃除して破壊しそうなイメージがある。俺の勝手な想像だけど、大きく間違えてはいないと思うんだ。なんて言ったって戦闘系最上位スキル持ちだからな。
すると、ファミュとクレースからジト~っとした視線を感じたので、気が付かないふりをしておいた。
流石は歴戦の猛者。何やら不穏な気配を察知されてしまったようだ。
気を付けておこう。
「よし、それじゃあ早速行こうか皆!」
俺達は人気の無い裏通りから、賑わっている表通りに移動する。
違和感なく町に溶け込めているまま、母さんの家を目指した。
賑わいの中心からは少し外れるが、かなり大きな家だった。
庭も広いので、ナタシアの連れてきた馬も放し飼いにできそうなのだが、母さんの言っていた通り誰も掃除していないようで、草はボウボウ、家もかなり暗い雰囲気だ。
「「「では早速!」」」
気合十分の女子会組が我先にと敷地に突入して、ファミュとクレースは体力に物を言わせて草むしりや家の壁についている蔦を取っている。
ナタシアは家の中の掃除を始めたようだ。
「我が君、我らの力を使えば一瞬で整備できますが、如何致しましょうか?」
「折角三人がやる気を出してくれてるので、今は・・・・・・そうだな、父さんと母さんがゆっくりできるように部屋一つだけにしてくれるか?」
「承知いたしました。それでは皆様どうぞ」
ヨハンは、まるでこの家に住んでいたかのように迷いなく一つの部屋に俺達を案内する。
部屋に入ると、全てが新品と思わせるほどの家具や照明が設置されていた。
「まあ、ヨハンさん、ありがとうございます」
「助かります、ヨハンさん」
「それではこちらでお寛ぎください」
嬉しい感情は伝わってくるが、相変わらず表情には出さないヨハン。
父さんと母さん、そして俺をフカフカのソファに勧めると、傍にある机につまみ程度の食事と紅茶を準備して壁際に控える。
もちろんこのソファも何らかの術が組み込まれているのだろう。
暖かいし、疲れも無くなっていく気がする。
「父さんと母さん、お疲れ。でも、こんなに大きな家を持ってるなんて知らなかったよ」
「そうだな。キグスタには伝えていなかったからな。う~ん、どうするか。母さんから説明してくれるか?」
「そうね。キグスタ。私はこのワリムサエの前ギルドマスターの娘だったのよ。私のお父さんはとっても強くてね。でも、どんなに強くても絶対無事に帰ってこられる訳じゃないの。魔獣達の群れからこの町を守るために戦って帰ってこなかったわ。その時の行動を領主様から認められて、この家を頂いたのよ」
母さんも悲しい過去を持っているらしい。
その経験があるからか、フラウを受け入れて大切に育てたんだろう。
マズイ、少しイライラしてきた。あんな奴の事は今は考えないようにしよう。
「だからキグスタ、きっと私達はこのギルドでは悪い扱いを受けないと思うわよ」
母さんは、俺達の懸念している事を理解してくれていた。
命を懸けて町を守った前ギルドマスターが治めていたギルド。
その娘一族に対して非道な行いはしないだろうと言う事だ。
でも、フラウ達の件もあるので、念のためヨハンに調査を依頼しておく。
「ヨハン、誰でも良いからギルドの情報を集めてきて」
「承知いたしました。それではギルドの業務に慣れている精霊王を充てましょう」
精霊王と言えば、俺がカンザパーティーにいた時のギルドの受付嬢をしていて、とても優しく対応してくれた人だ。
「お呼びですかヨハン様、キグスタ様!!」
とても嬉しい感情が流れ込んでくる。
「久しぶりですね、ミルハさん。またギルド関連の仕事で申し訳ないですけど、お願いしますね。それと、前のようにキグスタ君でお願いしますよ」
ギルドでは、精霊王のミルハさんは俺の事をキグスタ君と呼んでくれていたんだ。今更、様をつけて呼ばれても・・・・・・距離を感じて悲しくなる。
そんな俺の願いを聞いたミルハさんは、ヨハンを見ている。不敬に当たると懸念して、主神であるヨハンに確認を取っているのだろう。
ヨハンは無言で頷くと、嬉しそうな顔をして俺を呼んでくれた。
「わかりました。これからもギルドでよろしくお願いしますね、キグスタ君。でも、敬語は止めて頂けますか?」
主従の関係を考えているのか、俺の話し方を変えて欲しいようだ。
ナルバ村のギルドでもこんな感じだったと思うんだけど・・・・・・まあいいか。
「わかったよミルハ。早速お願いするよ」
精霊王ともなれば、難なくギルドの職員に潜り込むことができるだろう。
記憶の操作・・・・・・とか?良くわからないけど、前のギルド二つもそんな方法でシレっと職員になったようだから、問題ないでしょ。
超常の者達がする事をいちいち気にしていたら身が持たない。
そう言う物だと割り切っておこう。
感想もありがとうございます。




