カンザ一行、雲行きが怪しくなる(1)
今日の2話目です
あのダンジョンの攻略を途中で中止し、緊急脱出を行ったカンザ一行。
攻略済みのダンジョンの中層程度で身の危険を感じるようになったのは、カンザのパーティーにキグスタがいなくなったからだ。その事実を知るすべはないが。
超常の存在によって制圧されているダンジョン。
その中にいる魔獣達には自我は無いが、キグスタに対しての攻撃は無意識下で力を抑えられているうえに、自我のある魔獣はキグスタから離れるように逃亡していたのだ。
そんな雑魚と言っても良い魔獣としか対峙してこなかったカンザ一行。
自分達のレベルと今までの戦歴が大きくかけ離れているのに気が付いていない。
だが、カンザにしてみれば敵が強くなったのは”悪魔の王”による魔獣の活性化のせい、そして慣れない武具のせい、最後に自分たちが疲れているからだ。
今彼らが手にしている聖武具と言う名の玩具は、以前使っていた聖武具よりもかなり性能が良くなっている。
つまり、武具のせいにするのは大間違いであり、他の選抜メンバーがその聖武具を見たら、その性能は破格だと言ってくる事は間違いないだろう。
「俺はこんな所で足踏みをしていい人材じゃない。たかだか魔獣が活性化したからと言って、あんな中途半端な場所で撤退するなどありえない」
自室に戻っているカンザは、一人で呟いている。
あの場では何事もない様に振舞っていたが、プライドの塊であるカンザには”撤退”と言う言葉が重くのしかかる。
「最近は不運続きだ。俺の未来の妃になるはずのナタシアは失踪するわ、クレースとファミュは裏切るわ、聖武具は壊れるわ・・・・・・」
しばし考え込むカンザ。
何とかこの状況を打破して自らが最強となり、何れは国王までにはなれないまでも、準ずる位置にまでは上り詰めてやると言う野心がある。
「そうか、ひょっとしたら・・・・・・いや、そうに違いない。やはり俺にはあの平民共がふさわしくないのだ。あいつらのせいで高貴な存在であるこの俺が真の力を引き出せないんだ。そうと決まれば・・・・・・どうするか。あの王も聖武具を平民共に渡してしまっているしな・・・・・・」
常に自分が正しく、何かあれば他人のせいと言う考えを持つカンザ。
どうにかフラウ達から聖武具を没収した上で、自分と新たにパーティーを組むメンバーの選定方法を考える。
そこまで都合の良い方法は無いのだが、順序を追って作戦を進めることにした。
カンザの考えはこうだ。
先ずは、今回の魔獣の活性化について国王に報告し、人族の戦力底上げを行う必要があると進言する。
遠くに遠征中のパーティーは除くが、近くにいるパーティーを王都に招集し、パーティー単位で戦わせて現時点の戦力を確認すると共に、戦力の底上げを図る。
その最中に、そこそこの地位があり戦力を持っているメンバーを引き抜く。
もちろん男は不要だ。
カンザパーティーは、平民のみを戦闘に参加させ、負けた時に罰として聖武具を没収する。
と言う物だ。
浅はかではあるのだが、早速国王に一人で進言しに行くカンザ。
当然魔獣の活性化を強調して国王の不安を煽ってから、最高の解決策だと言わんばかりに浅はかな案を説明する。
こうして、本当に悪魔の王が人族に害を与えているとしたならば、決してそんな余裕があるはずのない不思議な大会が王都で開催される事が決定した。
「お前ら、今回のパーティーでの戦いには俺は参加しない。国王陛下から護衛を頼まれているからな。だが、何れ来るであろう悪魔の王の襲来に備えて、他のパーティーとの戦闘を通じて戦力を上げるんだ。優勝することは当たり前、苦戦する事もあってはならない。わかってるな?」
「なんだ、カンザは参加しないんだ。残念」
国王の護衛と言っているカンザだが、実際は自分の力を抑制しているような平民と行動を共にするのが嫌なのだ。
もちろん、力を抑制しているなどと言う事実はない。
「ある意味ハンデ戦か。でも俺達なら問題ないだろ?」
「そうですよ。カンザはゆっくりと観戦していてください」
ホールとリルーナも自信満々だ。
このカンザの浅はかな考えを発端として行われる大会から、カンザ一行の名声は急降下していくことになる。
まさに自分で自分の首を絞めまくっているのだ。
ある意味暢気な大会が開催される運びとなり、近隣にいる選抜メンバー達は王都に緊急招集された。
当然全ての面々が上位スキル持ちだ。
近隣にいるメンバーと限定したこと、そして緊急招集であった事もあり、上位スキルの力に物を言わせて、対象のメンバーは全員が即日王都に帰還した。
王城の大広間で、国王が沈痛な面持ちでカンザから得た情報を選抜メンバーに説明する。
そう、悪魔の王顕現による魔獣の活性化だ。
その話を聞いた選抜メンバー達は、怪訝な表情をする。
彼等にしてみれば、魔獣の強さに変化はないのだ。
だが、国王が話しているのだから、自分達が知らない場所で徐々に魔獣の力が上がっているのだろうと納得した。
そこで辺りを確認すると、見知った顔もいるが、どんなスキルを持っているかもわからない選抜メンバーもいるため、彼等との戦闘は、またとない絶好の修練の場だ。
自ずと、使命感のある選抜メンバーの面々の力が入っていく。
「パーティーの連携を確認すると共に、自らにない力を得るために全力を尽くせ。優勝者に対する報償は、パーティーメンバー各自に虹金貨一枚だ」
国王の示した報償に静まり返る大広間。
それはそうだ。パーティーの一人一人に虹金貨をくれると言っているのだ。
虹金貨・・・・・・この世界に存在する最高の貨幣であり、一枚あれば何代も遊んで暮らせるほどの価値がある。
そんな物を十枚キグスタの両親に請求しようとしたのだが・・・・・・
静寂の後、パーティー単位で本気の戦略を練り始めた選抜メンバー達。
ざわつく大広間だが、国王は既に伝えるべき事は伝えた・・・・・・と既に退出している。
続いてカンザが壇上に上がる。
カンザを見て訝しむ面々もいたが、カンザは気にせず話す。
カンザは最強の選抜メンバーパーティーのリーダーとしてかなりの面々に認知されているが、滲み出る性格の悪さを知っている一部の者からは相当嫌われている。
そんな中カンザは、見える範囲で自分にふさわしい容姿の者がいないかはチェックしている。
「この大会を開催するように進言したカンザだ。実際に魔獣共の戦力が大幅に上がっている事実を確認した。このままでは人族は悪魔の王に飲まれる。それを何としても防ぐためにこの大会を開催する。各人の健闘を祈る」
まるで王族のような口ぶりに呆れる選抜メンバーだが、虹金貨と言う報酬につられているために直接文句を言う者達はいなかった。
その後すぐに王城にある近衛騎士達の鍛錬場に移動した面々。
すぐさま近衛騎士達の手配した道具によって抽選が行われ、戦闘を開始することになった。
もちろんカンザを除いたカンザパーティーもこの場にいる。
カンザは国王の後ろに控えているが、カンザパーティーが優勝した場合には、自分にも報酬を渡すようにちゃっかりと国王と交渉済みなのだ。
そうして、パーティー総数としては22組の面々がトーナメント方式で戦うことになった。
本来は総当たりにして、多数との戦闘経験を積ませる方が目的を達成しやすいのだが、そんな時間のかかる戦いを見たくないカンザの一声でトーナメント方式となった。
カンザの目的は、平民に替わる自分のパーティーメンバーの選定なのだから・・・・・・
ついでになんとかして虹金貨も貰うつもりだ。
もう少しで、
伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す。異母兄よ、国王よ、そして防壁に守られている貴族の連中よ、最早お前達は赤の他人だ。自分の身は自分で守れよ!!
https://book1.adouzi.eu.org/n7913gs/
完結の予定です。
こちらもよろしくお願いします。




