謁見の間
まだまだまだ続きます。
謁見の間での茶番劇はもう少し続くようだ。
カンザ一行へ聖武具を新たに与えること、そして俺の父さん母さんに賠償を命じる所までは理解したが、まだ何かあるのか。
「キグスタの家に賠償を行わせるとして……虹金貨10枚程度の賠償となるのだが、払うことなどできないだろうな」
「虹金貨10枚だと?ふざけんな!玩具が壊れたくらいで何言ってるんだ」
思わず叫んでしまうが、ヨハンの結界があるので声はこいつらには届かない。
それに、普通の人にとってみればあれは聖武具であり玩具ではないのだが。
「我が君、どうか落ち着いてください」
「あ、ああ。ゴメン」
この世界の貨幣は、鉄貨<銅貨<銀貨<金貨<白金貨<虹金貨 と価値が高くなる。
普通の人ならば、白金貨すら一生お目にかかることがないくらいだ。
というか、俺も見た事がないのでその程度の知識しかない。
その上の価値のある虹金貨。それも10枚。当然一生かかっても払うことなんてできるわけがない。
「国王陛下のおっしゃる通りです。我らは道中にナルバ村に立ち寄りましたが、あの村全ての村民が全財産を差し出しても精々金貨が数十枚でしょう」
カンザが俺の村をこき下ろしている。
だんだんと自分自身の怒りのボルテージが上がってきているのがわかる。
「だが、ここで何も罰がないと今後に差し障る。信賞必罰だ。となると……フラウには悪いが、お前の両親は奴隷になってもらうしかなくなるな」
「いえ、血が繋がっているわけではありませんし、キグスタの迷惑行為の責任を取るのは仕方がない事かと思います」
散々世話になった父さん母さんを平気で売り渡したフラウ。
それに、おれは聖武具を持ち逃げしたりなどしていない。
間接的には俺のせいで破壊されたのは事実だが……
震える拳を精神力で強引に押さえつけ、何とか平静さを保っている。
俺はこの後ナタシア王女の所に姿を現して、ある程度の事実を話そうかと思っていた。
ただ、事実を話して俺の無事を知らせるだけで、国王やこの国、そしてカンザ一行には今この場で直接何かすると言ったことはするつもりはなかったのだが、ここまでされて何もなしと言う事にはいかない。
あの愚王が言ったように、信賞必罰だ。
「ヨハン、俺が裏切られていた時に運んでいたあの大荷物……ただの岩だが、この場に落とせるか?」
「もちろん可能でございます。我が君」
「だが、床が抜けない程度に頼む。あいつらに俺が運んでいた石だと分かって貰わないと困るからな」
「承知いたしました。それと申し訳ございません。一つご報告しなくてはならない件がございます。アクトですが、先程までここにいたのですが、あまりにも我が君に対する不敬が過ぎると怒り心頭で、この王城にある玩具を破壊しに行ってしまいました」
俺と同じく、アクトも相当怒ってくれているようだ。
本来ヨハンであればアクトを止めることは可能だったはずだが、敢て見逃したのだろう。
もちろんヨハンからも怒りの感情は<統べる者>を通して流れ込んでくるが、さすがは執事。表情ではその怒りを察することは一切できない。
「戻ってきたようです」
「主君、某が以前作った玩具の出来が納得できなかったので、破棄してきたでござる」
ヨハンのセリフが終わるかどうかのタイミングで、アクトがスラスラと武具の破壊を完了したことを伝えてくる。
俺に気を遣わせないような言い回しをしてくれている所も、本当にありがたい。
「気を遣ってくれてありがとう。アクト」
「勿体ないお言葉でござる」
この程度でかなり喜んでくれるのだから、本当にありがたい。
そして、とても頼りになる仲間だ。
「では我が君、あの岩を出現させます。四つ全て同時に出してよろしいですか?」
「それで頼むよ」
すると、謁見の間の丁度中央付近……カンザ一行が跪いている辺りに突然巨大な荷物が現れた。
ドーン……ドーン……ドーン……ドーン……
かなりの音と揺れが四回続くと、国王の背後に控えていた騎士達は国王の前へ出て臨戦態勢を取っている。
しかし、その場に現れたのはただの荷物。
カンザ一行以外は不思議そうな顔をしているが、カンザ一行はこの荷物が何なのかわかっているようで、真っ青な顔をしている。
「一体なんだ。あの中身は何なのか……調べてみろ」
国王の命令により、魔導士らしきものが安全を確認しつつ中身を確認する事になった。
「国王陛下……これは、四つ共全てただの岩でございます」
「岩だと?なぜその様な物がこの場に急に現れるのだ。何の意味がある!」
「お待ちください……岩に何か掘ってあります。これは……ホルハン採掘場のマークです。ただの岩になぜ採掘場のマークがあるのか分かりませんが、管理人に聞けば何かわかるかもしれません」
俺も知らなかったが、あの荷物の中身の岩は採掘場から持ってきたらしい。
あれだけ巨大で、大きさを均一にできるほどの岩などは採掘場が最も簡単に手に入れることができるのは理解できる。
普通、貴重な原石が出る採掘場から得た原石自体に採掘場のマークを入れることは良くある。
品質の担保や、採掘量の管理などの為だ。
だが、ただの岩にそんな事をする必要はない。
しかし、その情報を聞いたカンザ一行の顔色はさらに悪くなり、震えているようだ。
「ヨハン、あいつら何に対して震えているか分かるか?」
「はい。あの岩を作らせたのがあの一行であると明らかになるからです」
ヨハンが得た情報によれば、鉱山の職人は何の価値もない岩を加工することなどはない。
巨大な岩であった場合、破棄する場所がないので粉砕する場合はあるらしいが。
そんな職人に対して、ギリギリ持ち運べる位の大きさの岩を四つ作るように依頼したようだ。
訝しんだ職人が、何かあった時の為にカンザ一行には無断で採掘場のマークを入れたらしい。
これはもう少しこの場にいればもっと面白い事になるかもしれない。
カンザは基本的に人を見下す。
もちろん自分よりも上の人間、そう、例えばこの場にいる愚王や宰相等には丁寧に接するが、心の中では見下しているのでなないだろうか。
そんな唯我独尊男が冷や汗をかいて右往左往している様を見るのが楽しくなってきている。
頼むぞカンザ。もう少し楽しませてくれよ!!
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