執事のヨハン(3)
まだまだまだ続きます。
あるダンジョンを攻略した我が君一行は別の町に移動し、その町にあるダンジョンの攻略にかかるようです。
当然いつものようにダンジョンを制覇、そして精霊王もこの町のギルドの受付として潜り込ませました。
どんな時でも必死に、全力で行動する我が君に心を打たれつつ、あの連中に上位スキルを与えてしまったことを激しく後悔しました。
今更スキルの剥奪はできません。
しかし、どんなに訓練しても上位スキルになれないようにすることはできます。
そんな中、最も許し難い裏切り行為を平然と行い、更には我が君をこき下ろすあの連中に対する怒りが抑えきれず、そしてどんなに必死に努力しても認めてもらえなかった我が君の心を想い、胸が張り裂けそうになりました。
ここで我らは決断したのです。
今この場で我らの姿をお見せして、我が君にも決して裏切ることのない、そして絶対の忠誠を誓う配下がいると知っていただこう……と。
このダンジョンの最下層には、下級の悪魔を配置しておきました。
あの悪魔程度では、スライムの防御に傷一つつけることはできないのですが、そんな事を知るわけもない我が君は死を覚悟されてしまったようです。
裏切られ絶望し、そして死を覚悟する。そんな状態に我が君を置いておくわけにはいきません。
悪魔に我らの存在を説明させ、顕現する事をお許しいただきました。
我が君、ここから。ここから我が君の今までの努力が実る時です。
まさに時は満ちたのです。
ある程度の状況を把握された我が君。
当然裏切りと言う最低の行為を行った者達への復讐も容易です。ですが、あの下賤な連中は放っておけと仰る。
とても我慢できるような事ではありませんが、我が君の命令は絶対です。
悔しさを表に出さないようにして、我が君の前から一旦下がります。
私は我が君の執事としての任務がありますのでお傍に控えておりますが、他の面々は、あの下賤な連中の動向を直接探るためにダンジョンの上層階に向かいました。
そんな事をしなくても、状態など手に取るようにわかるのですが……
と思ったら、あの連中……アクトの作った武具を破壊し始めたのです。
良くやった!と褒めてやりたい。
人族としては、あの程度の武具でもかなりの戦力増強になるようで、聖武具と呼ばれております。
不壊、不滅と呼ばれているようですが、彼らが踏むだけで容易に破壊することができます。所詮はその程度でしか作りこんでいないのです。
後日、彼らが我が君に誤って踏んずけて彼らの武具を壊してしまったと報告していました。
我が君も優れた洞察力をお持ちですので、本当のところは直ぐに気が付いたのでしょう。
ですが、彼らが我が君を想い取った行動であることもまた理解されているので、苦笑いするだけで何もお咎めはありませんでした。
そして、あの連中は新しい聖武具を受け取るために王都に向かっていますが、その道中に我が君のご実家があります。
そこであろうことか御両親に対してあの嘘の報告をしたのです。
王都に向かう前にギルドで報告した、あの嘘の報告です。
当然御両親は気落ちしてしまい、このまま王都で同じような報告をすると、最悪処罰の対象になりかねません。
冷静沈着をモットーとしているこの私でも焦りを隠すことができませんでした。
これは即対策を取らなくてはなりません。
先ずはありのままを我が君にご報告するかどうか……
そこから神々で話をしましたが、やはり我が君には事実をお伝えすべきであるとの結論になったのです。
もちろん我が君に一番近くにいる権利を持っている私が適任です。
我が君に、あの連中が嘘の報告をギルドでした事、そして御両親に対しても同じような事をして、今現在は王都に向かっている事。
最後に、このまま王都で同じ報告がなされると、場合によっては処罰対象になってしまう事を伝えました。
我が君はとても悲しいお顔をされてしまいました。
信じていた仲間の為に必死で毎日これまで努力をしたにもかかわらず、最悪の形で裏切られ、更には御両親にまで悪意のある行いをしているのです。
特にフラウとか言う妹として生活してきた者は、御両親に大恩があるはずです。
それを……ふぅ~、いけません。
このままですとこの星を怒りで破壊してしまいそうです。
落ち着きましょう。
すると、我が君は私にこう問いかけられたのです。
「ヨハン、父さんと母さんをどうにか守れないか?」
我らと直接お会いしてから、我が君と行動を共にしてお世話をさせて頂けているおかげか、随分と打ち解けて頂けたのだけは僥倖でした。
「もちろん可能でございます。我らにお命じ下されば全力を持ってお守りいたします」
「いや、直接だと色々問題が出るかもしれない。相手がどんな攻撃や嫌がらせをしてくるかわからないが、確実に人族としての対応をしておきたいんだ。ヨハン達だと力の加減や村の常識とかはわからないでしょ?」
痛いところを突かれました。
人族としてと言う事であれば、ギルドに潜り込ませていた精霊王で何とかなったかもしれませんが、村の常識と言われてしまうと中々対応が難しいのです。
そうすると、方法は一つですな。
「それでは我が君。御両親には我らよりスキルを付与させて頂ければ問題ないのではないでしょうか」
「そうか、そうだな。父さんが今持っているのは<剣術>、母さんは<魔術>だ。安全のためにはもう少し上位のスキルを与えておきたい」
「お任せください。今までお持ちのスキルを上げる方がご本人も慣れているでしょうから、<剣神>と<魔神>を付与させていただきます。早速行いますか?」
「いや、これから直接俺が状況を説明しておきたい。なんて言ったって俺は死んだことになってるんだろ?安心させてあげたいんだ。それにあいつらはもう村にはいないんだよな?」
「もちろんでございます。それでは早速向かいましょうか?」
と、我が君は御両親の元にすぐに向かわれることにしたのです。
当然私も同行させて頂いておりますが、死神のアクトだけは念のために王都に向っている連中を監視しています。
他の神々はダンジョン最下層でお留守番です。
あまり大勢で向かってもご迷惑でしょうから。
とても不満そうな顔をしていましたが、そこは主神である私の特権と言う事で納得していただくしかありませんな。フフフ。
「それではまいりましょう」
我が君を転移でご実家の前までお連れしました。
「これが……転移か。凄い。凄いの一言だ」
本当に驚かれており、更には褒めて頂けてしまいました。
恐縮です。
「それでは御両親は中におられます。どうぞ」
気配でお二人が家の中にいることは把握済みなので、入室を促します。
コンコンコン……
緊張気味に扉を叩くキグスタ様。
御両親が万が一キグスタ様の話を信じてくれない場合を考えているのでしょうか?
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