20:ローラントの闇
感想をお待ちしております。
ローラントの屋敷には地下室が存在する。だが、そこは普段から立ち入り禁止となっていた。地下室に続く階段の扉は固く施錠されており、その鍵は主人である彼が肌身離さず持っている。
地下室には何があるのか。そこがどんな空間なのか。ローラント以外の人間は誰も知らないのだった。
深夜零時。ローラントは一人、地下室へとやって来た。ここは夏場であっても、昼夜を問わず冷気が漂う肌寒い場所であった。
「おう、まだちゃんと生きてるよなぁ?」
暗い地下室の空間に向かって呼び掛けるローラント。
手に持っていた松明の炎で、その先を照らす。
すると、そこには一人の少女がいた。
「うっ……。ご主人様、どうかお許しください。もう、楽に……させてください……」
レーネだ。なんと彼女は地下室で監禁されていたのだ。
彼女は鉄の手錠で両手首を拘束され、鎖で繋がれた首輪を嵌めている状態だった。
服がところどころ破れている。そして、腕や太もも、背中にはいくつもの痣ができていた。
レーネはかなり衰弱しており、意識が薄れかけている。顔は青白く、血の気がない。
監禁されてから二日間、彼女は食事どころか水すらも与えられていなかった。
「へへへ……。あと少しで楽になれるぞ。出荷の時間だ。俺の商売に協力してもらうぜ」
ローラントは弱り切ったレーネの顎をクイっと上げ、彼女の目を見ながらニヤリと笑う。
まるで悪魔だ。人間じゃない。
レーネはローラントの闇を見せられていた。
レーネを地下室へ連れ込み、監禁したのは紛れもなくローラントその人である。そして、彼はそこで彼女に拷問を行っていた。
その目的は、レーネが泣き叫ぶ姿が見るためである。
ローラントの性癖は歪んでいた。異常だった。
彼は少女に暴行を加え、その反応を見て楽しむという残虐な趣味を持っていたのだ。
レーネ以外にも、これまでに何人もの少女が彼に監禁され、拷問を受けてきた。
ローラントは少女たちを召使いとして屋敷で働かせ、時期が来ると一人ずつ順番に地下室へと連れ込み、虐待を繰り返してきたのである。
そして、一昨日の夜。ついにレーネがその標的になる番を迎えたのだった。
監禁初日。レーネはまだ体力が残っていた。ローラントから乱暴されるたびに悲鳴を上げるほどの「元気」があった。
大粒の涙を流しながら「やめてください」と許しを請う彼女の泣き顔を見ながら、ローラントは悦に浸っていた。鞭で体を打ち、指の爪を剥ぎ、火で熱した鉄の棒を肌に押し付けるなど、様々な手法でレーネをいたぶっていた。
しかし、同時に彼は飽きっぽい性格でもあった。少女の反応をある程度楽しむと、そこで拷問をやめてしまうのである。
では、拷問を受けた後の少女たちはどうなってしまったのか。
拷問し終えると、ローラントは少女を殺害し、その死体を屋敷の裏庭に埋めていた。だが次第に、普通に殺すだけではもったいない。もっと他に楽しめる方法はないか、と考えるようになった。
そして、ローラントはさらなる残虐な「遊び」を思いついたのだった。
「お前にはこれから魔族の餌になってもらう。ひひひ! お前は一体、どんな食われ方をするんだろうなぁ! せいぜい楽しませてくれよ」
レーネから鎖を外すローラント。彼女を地下室から出し、魔族が住む森へ馬車で運ぶことにしたのだ。
彼が考えた新しい殺し方。それは、少女を魔族に食わせるということであった。
魔族の中には、人間……特に少女の肉を好む個体がいる。
ローラントは拷問し終えた少女を魔族に提供し、その見返りとして魔石を受け取るという闇の取引を始めたのである。
魔石ハンティングを始めたばかりの彼が、どうして大量の魔石を入手することができるのか。その答えは、彼が魔族から魔石を直接譲り受けていたからであった。
金のためなら、どんなことでもする。たとえ非人道的で無残なやり方であっても……。
それがローラント・ザックスという男だ。
「さぁ、立て。早く行くぞ」
ローラントがレーネの腕を掴み、引きずり始めたその時だった。
「レーネさん!」
エリーが地下室にやって来たのである。
ローラントを問い詰めるために、彼のもとへ向かっていたエリー。屋敷中を探し回っても彼の姿は見つからなかった。だが、たまたま地下室へ続く階段の扉が開いているのを発見したため、まさかと思い、そこを探してみることにした。すると、彼女の予感は的中した。
「エ、エリー……。来ちゃだめ……」
「酷い……! どうしてこんなことに……」
ボロボロになったレーネの姿を見て、衝撃を受ける。
その痛ましさは見ていられないほどだった。早く手当てをしなければならない。
「おい。ここは俺以外の人間は立ち入り禁止だって言ったよなぁ? 何勝手に入って来てるんだテメェ!」
ローラントは怒りを露わにした。見られてはいけないところを見られてしまった。
だが、何も慌てる必要はない、とすぐに冷静になるのだった。
(まぁいい。この女もついでに食わせてしまうか……)
目撃者がいるなら、口封じをすればいい。そうすれば問題はないのだ。
「よくもこんなことを! 許せないわ!」
「けっ。何調子こいたこと言ってんだ。黙ってろ!」
ローラントは足元に転がっていた拷問用の鉄パイプを拾い、それでエリーの頭部を強打した。
「うっ!」
殴られた衝撃でエリーは気を失い、その場に倒れこむ。
「エリー!」
レーネが声を上げる。
ああ、なんてことだ。この子まで危険に晒されるなんて。
レーネは最悪の展開に絶望するのだった。
目を覚まして暴れることがないよう、エリーを縄で縛るローラント。
ついでにレーネも眠らせることにした。薬物をしみこませたハンカチで彼女の口元を押える。
レーネはガクンと意識を失った。
これで運びやすくなった。
あとは魔族と約束している場所へ二人を連れて行くだけだ。
二人の少女を抱えて馬車に乗り込むローラント。
彼は森へ向かい始めた。
意識の無いエリーとレーネは、ただひたすらに死を待つのみだった。
お読みいただきありがとうございます。
感想をお待ちしております。




