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革命のクレア ~魔人と契約したワガママお嬢様は異世界で無双する~  作者: 平井淳
第一章:ガチクズお嬢様の異世界転生

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12/55

11:革命の始まり

感想をお待ちしております。

 ノーラが倒した魔族の死体から魔石を回収するクレア。昼にガウスが池で発見した青い魔石と似た色をしているが、サイズはこちらの方が圧倒的に大きい。これは高く売れるのではないか。


 森の中で魔族に食われるところだったが、ノーラが現れたことで最悪の事態は免れた。それどころか、魔石まで手に入れることができた。


 不運が続いていたクレアに、ようやく幸運が舞い降りたのだった。


 事態は好転しつつある。魔人の力があれば、この世界の敵どもを圧倒することができるはずだ。

 

 ここからは私のターンだ。逆襲を始めよう。戦に必要なピースは揃った。


 態勢を整え、進軍する。私の行く手を阻む者は問答無用で蹴散らしてやる。


 ノーラに魔族を狩らせて、魔石を集める。集めた魔石を売りさばき、それで得た金を軍資金とする。また、家を買い、武器を揃え、時には金で人を動かす。


 クレアが最も重要視しているのは、財力であった。金の力で物事を優位に進めていくというのが、彼女の作戦なのだった。


 このように、クレアは早くもこの先の展望を思い描いていた。


 まずは今日獲得した魔石を早速換金しよう。一文無しでは何も始まらない。とりあえず食事と宿泊に必要な金を用意するべきだ。


 「森を出たい。だが、どちらに進めばいいのかわからない。出口はわかるか?」

 「あらあら。もしかして、迷子だったのですか?」

 「う、うるさい……! いいから早く案内しろと言っているのだ!」


 クレアは顔を赤らめた。いい年して迷子になってしまったという事実をノーラに指摘され、カッとなった。


 この場合は迷子というより遭難と表現した方が妥当かもしれない。


 ノーラは「仕方ないですね」と言って、クレアをこの森から連れ出すことにした。


 「はい」


 手を差し出すノーラ。


 「……何だその手は?」

 「私の手をしっかりと握っていてください。はぐれてしまうと大変ですから」


 そう言って、ノーラはウインクをした。


 「馬鹿にしているのか! 私は子供じゃないぞ!」


 クレアは十六歳だ。十六歳という年齢は、この世界の基準では成人に該当する。

 迷子にならないように誰かと手をつなぐなんて、彼女のプライドが許さなかった。


 「クレア様が子供であるか否かは関係ありません。私はただ、クレア様の手を握りたいのです」

 「くだらぬことを……」

 「もっと言えば、私はクレア様の全身を触りたいのです! あんなところや、こんなところまで、じっくりと……!」

 「気持ち悪いな……」

 

 ノーラは興奮した様子で、自らの想いを熱く語った。

 とんでもないヤツを引き当ててしまった、とクレアは困惑した。


 どうして、この魔人はこんなにも変態なのだろう。さっきもノーラはクレアを押し倒し、色んなところを弄っていた。あれはスキンシップを超えている。愛情表現どころか、ただの痴漢行為ではないか。


 まさか異世界で魔人にセクハラされるなんて、クレアは全く思いもしなかっただろう。


 「お前は私を何だと思っているのだ?」

 「可愛い女の子だと思っています」

 「んなっ……!」


 何だこの感覚は? なぜ心が落ち着かないのだろう。

 

 他人に「可愛い」と言われることは今まで何度もあった。だが、それは一種の社交辞令のようなものだと思っていた。


 でも、このメイドは……ノーラは屈託のない笑顔でクレアを「可愛い」と形容した。

 お世辞でも美辞麗句でもない。心の底からそう思っているような……。


 「ふん! 馬鹿げている。私はそんな言葉で惑わされるほど甘くはないぞ」

 「そうなのですか」

 「まぁ、でも……」

 「でも?」

 「手ぐらいなら、つないでやっても……いい……」

 「クレア様……!」


 そっぽを向いたまま、照れ臭そうに手を差し出すクレア。

 ノーラはパァッと笑顔になりながら、飛びつくようにしてクレアの手を握るのだった。


 「では行きましょうか」


 ノーラに手を引かれながら、森を抜け出すクレア。

 無念の死を遂げた若きハンターたちを弔うこともできないまま、彼女は次の行動に移るのだった。


 この世界は弱肉強食だ。弱い者から死んでゆく。

 あのハンターたちは力がなかった。抗う術を持っていなかった。だから死んだのである。


 それはクレアも同じだった。彼女もまた無力で弱い存在だった。

 だが、それはノーラに出会う前までの話である。


 今の彼女は違う。断じて無力などではない。

 魔人という強力な武器を手に入れた彼女は、「最強」の名を手にするのだから。


 魔人との契約により、この世界でのクレアの立ち位置は大きく変化してゆく。

 貧民からの出発し、平民そして富豪へと成り上がる。


 それはやがて、革命へとつながるのだった。


 


お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

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