第02話 「正視と近視」
少し長くなりました。後日2つに分けるかもしれません。
パクリネタ多めです。不快に思われた方おられましたらごめんなさい。
「風向きが悪い――。ヒカルさん! 魔物の特徴を教えて下さい!」
さっきまでの柔らかな雰囲気とは違う、覇気すら感じる強い語勢。
その尋常じゃない反応に、俺の緊張も引き上げられる。
「特徴っていっても、何を言えば!? 見て分かるだろ?」
そんな俺の言葉に、一瞬顔を歪めるスファレ。
だが、一つ深呼吸をすると、さっきよりは落ち着いた声で俺に問いかける。
「お願いします……魔物は大きいんですね?」
「ああ、でかい。5メーター位って……分かるか? だいたい森の木の半分位って言ったほうが良いか?」
「っ……そんなに……。ヒカルさん、色は緑ですか茶ですか!?」
「色!? 夕日で良く分からないが……、恐らくは青!」
俺の返事を聞いてスファレの顔は徐々に悲痛な物へと変わっていく。
「オーガ……どうしてこんな所に」
オーガ――スファレは確かにそう言った。RPGでよく見かける、ゴブリンやコボルト、トーロルなどに続く人型の定番魔物だ。
食人鬼と当て字されることも多い凶悪な魔物……俺の認識では、戦闘力皆無の眼鏡士や可愛らしい女の子に勝てる相手では到底無い。
物語冒頭の戦闘ガイダンスにしてはやり過ぎだ!
「あれが、オーガ……あいつらこっちに歩いてくるぞ?」
「ヒカルさん! 逃げます! 走って下さい!」
スファレが俺の腕をつかんで走りだす。
それを見て取った、一番先頭の一回り大きなオーガも走りだした。丸太のような両腕をふり、足に上半身が引かれるよう駆けて来る。その後を追うように、他の2体も走りだす。
「村に近づけば、きっと見張りの方が気付いて冒険者さんが助けに来てくれます!」
村に近づけば助かる。そう言うスファレに手を引かれ、今はとにかく走る。
だが――何度か後ろを確認して俺には確信できていた。
歩幅が圧倒的に違う。
これは……すぐに追いつかれる――。
頭の中、高速で計算される距離と速度式。
あれ? 俺こんなに暗算得意だったっけ? と不思議に思いながらも導き出した答えは『5分後には追いつかれる』だった。
走りだした当初、かなりの距離が有った両者の間隔は、明らかに狭まっている。
「スファレ! ダメだ、絶対に追いつかれる!」
「――ヒカルさんは走って下さい!」
現状を伝えると、スファレの表情が目に見えて曇る。
一瞬の思案の後、立ち止まり、オーガへ向いて両手を掲げるスファレ。
「一体何を!?」
「脅かしてみます! いいから走って! 村に知らせてください!」
脅かす? 一体何をするつもりなんだ?
俺が逃げたらスファレはどうなる?
決まっている、オーガに食われる!
でも、俺がいて何が出来る!? 言われた通り助けを呼んだほうが良いんじゃないか?
立ち止まり、考えが延々ループするなか――。
広大な平原に、スファレの声が響き渡る。
「デメテルリファイン!!」
その瞬間、スファレの纏う空気が変わった。
これは――魔法?
「魔穴を穿て大地の大剣!!」
「ヒッ――!」
思わず声を上げて尻を守ってしまう。
耳から聞こえる呪文とは違う、頭に流れこむ言葉に別次元の恐怖を感じ取ってしまった。
相手がゴブリンならこれは逃げる! 俺でも逃げたい!
「ギガスグレイブ!!」
赤土を纏った岩石の刃が、凄まじい轟音とともに、一瞬で立ち上がった。
オーガのはるか後方に!
「えーー!? 何で当てないの!? もっと! もっと手前だよ!!」
俺の声を聞いたのか、スファレがもう一度詠唱を始める。
「デメテルリファイン!!(中略)ギガスグレイブ!!」
次の瞬間――オーガ達が視界から完全に消えた……。
見上げるほどの岩石が俺達の数メートル前に現れたからだ。つまり――
「今度は手前すぎーー!?」
二撃目も外れたと知り、脱力する体を必死で支えるように、両足で踏ん張るスファレが、振り向きながら力なく口を開く。
「なんで……逃げないんですか! ヒカルさんだけなら助かったかもしれないのに!」
「なんで当てないの!?」
指示を無視した俺の質問に、スファレは悲痛な叫びで答えた。
「だって、見えないんですもん!!」
「……」
見えてなかったんかーーい!!
いや、薄々は気付いていたけども!
――俺のメガネを見る時近づいてきたり。
――魔物の特徴を聞いて来たり。
――匂いで方向を確認する仕草。
――寝転んだ俺を踏みつけた事。
――もしかしたら俺の袖を摘んだのだって……。
――マジックグラスについてやたら詳しいのも頷ける。
でもまさか……まさかこれほどとは……。
スファレは超ド近眼だ!
距離感覚なんか分かるわけがない!
スファレ! 恐ろしい子!
「な、なら! 次は2番目の岩の横に撃てないか!? タイミングは俺が言うから!」
「もぅ……魔力が切れてしまいました……」
「……」
「……」
つんだーーーーーー!!
「だから走ってって言ったのに!」
どどどどうしよう!? もうすぐオーガさん御一行様ご到着されるんじゃないですか!?
とりあえず、落ち着こう、落ち着いて考えよう……。
こんな時、こんな時はどうすればいいんだ!?
「バカヤロウ! 女の子一人置いて逃げれるわけが無いだろう!」
何か口走っちゃったーー! こんな時の定形セリフ口走っちゃったーー!!
「ヒカルさん……」
あ、何かいい雰囲気――。
って足音! オーガすぐそこじゃん! どうする俺! どうする俺のラノベ脳!?
「ここは俺に任せろ!」
格好いいーー! さーすが俺のラノベ脳ーー!!
でーーもそれ死亡フラグーー!?
とか何とか言ってる内にオーガさん到着!
スファレの作った石柱を迂回するように並んでご登場!
先頭はやはりあの一回り大きなやつ!
「グルォォオオ――ウルゥゥルルル!」
オーガの、腹の底からの響きを聞き――
「お、おおおお! おおおおおおおおああああ!」
――焦りか、恐怖か、俺の口から雄叫びが溢れだす!
何か無いか!? 何か有るんじゃないのか!!
カメハ◯派! 荒ぶる鷹のポーズ!!
コマ◯チ!! ヘンーシン!!
ウォッチッチ!! タローー!!
何でも試すが何も起きない。
「ヒカルさ……!!」
迫るオーガの足音にスファレの声がかすむ
神様こんな良い子見捨てるとかあり得ないだろ!
ここで終わりとかおかしいだろ!
なら何か有るんじゃ無いのか!?
有るなら出せよ!!
オーガが迫る、距離はまだ多少有るがその凶悪な表情が見える程の距離だ。
さあ来い!! 来るなら今だろ!!
目覚めろよ!! 俺のコ◯モ!!
燃えろよ!! 俺のこの手!!
お前を信じる俺を信じろー!!
そして、俺が何度目かの荒ぶる鷹をやっている時に変化は起きた。
迫るオーガの動きが徐々に遅くなり……完全に止まった。
「キーータァーーーーァーーーー!!」
どれがきっかけか分からないが、ついに目覚めた真なる力!?
「お困りのようですね?」
「チガッターーーーァーーーー!!」
俺の力じゃなくて、救済だったーーーー!!
ハズカシーー!! でもありがとーーーー!!
「ってか、遅いよ! 死ぬかと思ったよ!!」
半ベソになっていた俺は、文句を言いながらも、内心全力で感謝して、その紳士な声の主を探した。
「いや、日課の途中に急に呼び出されまして――オホッ♪」
その紳士な声のする先は……硬直するスファレの足の間から――あお向けに胴体を出す妖精だった。顔はスッポリとローブの中に収まっている。
まのあたりにする現状に、上がりきっていたテンションが急激に冷めていく。
「え?」
何してんのこの妖精? いや、妖精だよな?
手のひらより少し大きいくらいの、胴体から伸びる透き通った羽。
夏の森林を思わせる、清々しい緑の服。
「ムフッ♪――しかし、私が来たからにはもう安心です――よっこらせっ」
まるで中年男性のように、ローブのすそから顔を出した妖精は、金髪に碧眼、長い睫毛に大きなタレ目、頬と鼻頭を赤く染めた――オッサンだった。
「この世界の案内役を努めます、ルガシコインと申します」
俺の目線まで浮上すると、恭しくお辞儀をする。
どこか記憶に有るなと思ったら、変な◯じさんを金髪にしたらこんな顔になりそうだ!
「――ジで……」
「ん? なんですと?」
「チェンジでーー!!」
「なんでやーー!!」
俺の心からの叫びに、ルガシコインと名乗ったオヤジは変な関西弁で返してきた。
「だっておかしいだろ! どこの異世界にオッサン妖精が案内役のところが有るんだよ!」
「しるかー!! ワシかて好きでオッサンなんちゃうわ!!」
「ならなれよ! 可愛い妖精ちゃんになってくれよ! 俺の夢返せよーー!!」
「なれるならなっとるわーー! なんやねん、神さんにむちゃ言われて急いで来てみたらこの扱い! もう帰らせてもらうわー!」
「帰れーー!!」
顔を真赤にしたルガシコインが「ほなさいなら!」と言いながら、スファレのローブに戻ろうと――
「カケル君! 勇気だーー!!」全力で蹴り飛ばした。
「ブリーーン……グブゲファ!!」オーガに当たって落ちた。
しまった、あまりの衝撃的現実に色々と判断力を失っていた。
どういう原理で時間が止まっているのか分からないが、ここでこの変態を帰してしまっては俺とスファレの命が危ないんだった。
生きて…るよな?
「お前……ええもん持っとるやないかぁ……流石勇者や」
よかった、生きてた。とにかくこの変態が帰るまでにスファレを安全な所に移動させないといけない。
俺は変態を放置してスファレのローブをつかむ。
「せーの……あれ? せーの! グッ……ギギ……」
べつにソンゴ◯ウの物マネをしたいわけではない。押しても、引いてもスファレはびくとも動かないのだ。
「あー、あかん、あかん。この世界で勇者がいくらバチコンかましてもなーんも変わらへんで」
バチコン? それは相手を殴った時とかに使うんじゃないか?
いつ復活したのか、変態は変わらぬ表情(多少ボロボロ)で俺の前に浮いていた。
「おい変態、ならどうしたらいいんだ?」
「あー痛かった……ワシ、なんかめっちゃ腰いたいわー」
腰や首を回しながらこちらにチラッチラッと目線を送ってくる。
つまり、知りたければ態度で示せと言うことなのだろう。
クッ……こいつ……殴りたい!
「さっきは……すまなかった……」
俺はしぶしぶ頭を下げる。
「は? 何いうてるん? すまなかった?」
「……ごめん、なさい」
「申し訳ありませんルガシコイン様やろ!?」
殴った。
「ヘッブァ~!! おま! せめて何かネタ振れや!!」
「すまない、つい反射的に……」
「もうええわ、あーいた……。お前見捨てたらワシも神さんに怒られるからな、今回は特別やぞ!?」
「え?」
「ワシもくらわされるー言うとるんじゃ! あーいた……とにかく、この世界へ来たばっかりの勇者、あー、お前名前は?」
「……白金 光」
「ヒカルやな。そのヒカルにチュートリアル? っていうんをさずけるから心して受けるように!」
呼び捨てかよ……。変態呼びしている俺もたいがいでは有るが。
どうもルガシコインとは調子がくるってしまう。俺の世界の人間を扱い慣れてる……要するにノリが良い。
「ほな早速ー」
俺の返事も聞かずに、ルガシコンは指を鳴らした。
すると、俺の目の前に黒色の板が、ポンッと軽い音と共に現れる。
「おわっ!」
驚いて尻もちをついてしまった。
人の大きさほどもある石版が、突然目の前に現れたのだから仕方ない。
「これが神がお前に授ける〝力〟や」
「……力?」
「そう、この世界を救うための力。この石版に文字が刻んであるやろ?」
ルガシコインと言う通り、石版には日本語で文字が書いてあった。簡単に分類すると【ジョブ】【特性スキル】【特殊スキル】の3つだ。
「あの……ほとんど灰色何だけど?」
ジョブの眼鏡士が白文字で記載され横にLvMAXと書いてある意外、特性スキルが2つ白文字になっているだけだった。
「そりゃお前がなんもしてこんかったからやな、最初から最強はあの神さんにはありえへん」
「ありえへんって……でも、このままじゃ俺たち助から――」
「話は最後まできかんかい! ドアホウ! ええか? 石版の右上や、そこも白文字になっとるやろ? なんて書いてある?」
「えっと……200MG……? なんだこれ?」
俺の返事を聞き、石版のこちら側に回りこみながら、ルガシコインが嬉しそうな顔をする。
「ほぉ~、200ポイントか! あの神さんにしては大盤振る舞いやないか? 事前登録ボーナスでも付いとるんちゃうか?」
「し、知るかよ! 何だよポイントって!? ステ振り式かよ! ボーナスならログボよこせよ!!」
ステ振り方式。MMORPGなどで使われるプレイヤー成長システムだ。おもに、自分の分身となるキャラクターのステータスに、そのポイントを割り振る事で、強化と個性をだすシステムがそうよばれる。
「いや、違うで」
違うのかよ! 違うのに説明しちゃったよ!!
「ジョブ取得方式やな。ステータスなんかどっこも書いとらんやろ? まぁ詳しくは落ち着いてからヘルプみたって」
「ヘルプあるの!?」
「そりゃな、あの神さん、やたら堅物やからな。さて、サクサク進めるで? 石版右下の方みてみ、特殊スキルのいっちゃん上や」
言われるがままに石版に目線を滑らせる。俺はそこに書いてある文字を口に出して読み上げた。
「フォトン・レーザー……100?」
「せやな。それ、ポチッとおしてみ?」
多少の警戒は有ったが、言われるがままにそれを押す。
すると文字が白色に変化したと同時に右上の数字が一気に100減少した。
「お、おい!?」
「えーんや、えーんやって。この子救いたいんやろ? なら何も悩むことあらへん!」
「たしかに……そうだけど」
「ほな、この石版は一旦しもとこか」
そういうと再び指をパチン、石版は光の粒子となって――なぜか俺のショルダーバッグへと吸い込まれた。
「ほなチャッチャカいくでー。はい、これさっきのやつの呪文のメモな」
「呪文!? あれ魔法なのか?」
「当たり前だのクラッカーやで! ここをどこやおもとんねん。愛と勇気と希望の世界やぞ!?」
それ絶対違うだろ! 赤い頭巾の子とか狼な少年とかハゲを気にする弟子少年とかいないだろ!!
「とにかく、ほれ、指、オーガに向けて、ピストルみたいな、分かるやろ? レー〇ガーン!」
ルガシコインが、俺の手をピストルの形にして指先をオーガへと向けさせる。
「もうちょい右やな……あ、あかん他の巻き込む……もちょい下……よし! ええか、その手ーぜぇーーったい! 動かすなよ?」
先頭のオーガの丁度腹辺りで固定される俺の手。微妙な違いが全然分からないがルガシコインにとっては重要なことなのだろう。
「さ、それじゃ詠唱いってみよかー」
「えっ……これ、マジで読み上げるのか!?」
先ほど渡されたメモに目を落とす。
そこには何とも形容しがたい……こっ恥ずかしい呪文が並べられているのだった。中二を変にこじらせている!
「当たり前や! ほら、さっさと始めんかい!」
「うぅ……そ、それは万物を……」
「声が小さい! もっとハッキリ!」
「ええい! それは! 万物を貫く!」
「ヤケクソちゃうんやぞ!? この子救うためやろーが! 気持ち入れて読まんかい!」
言っている事は真面目だが、ルガシコインの表情はしゅうしニヤニヤ顔だ。
くそ! 絶対嫌がらせだろこれ!! えーーい! 旅の恥はかき捨てだ!
俺は、一度目を閉じ、大きく深呼吸をしてから眼前のオーガを見据える。
こいつらを倒さなきゃ俺達は終わりだ、そう心中で反復し、倒す、という強い意思を持って呪文を詠唱した。
「それは――万物を貫く槍
何者にも妨げられず、何者にも染まらない」
俺の指先に小さな光が、クルクルと円を描くように集まってゆく。
「捧げるは潔癖にして不滅の意思
求むるは無双にして虚心の覚悟」
肥大化する光。行き場の決まっていない光の渦は俺の肩幅をゆうに超える。
「故にただ笑う――慈愛に、純潔に、残虐に白
我が呼び声に応え闇を切り裂け!
フォトン・レーザー!!」
俺の指先に集まった光が、束となって夕暮れの草原を両断した。
先頭のオーガに当たったかと思うと、直ぐに貫通したのか、その後方が明るくなる。
「お、おい! こっからどうしたら!!」
「動くな言うとるやろ!! まだレーザー出とるんや!」
今も進行形で俺の指から射出され続けているのだそうだ。
「ええか? 今から時間の流れをを元に戻す。そんで光が消えるまで、ぜーーったいに指動かすなよ!? 動かしてもええが、そん時は被害が広がるだけやからな!」
「被害ってなんだよ! このレーザーどこまで届いてるんだ!?」
「ほんなもん、どこまでもや。どーこーまーでーも!」
「どこまでもって……」
まさか宇宙まで行くとか言わない……よな?
「ほな、これにてチュートリアルを終わります、勇者よ、良い旅路をお祈り致しております、願わくば貴方が無事に世界を救えますように」
下手な関西弁をやめ、恭しくお辞儀したルガシコインが再び指をならし――煙の様に姿を消した。
「ちょっ――!」
チョット待て、どうやって世界を救うんだ、と言おうとした俺の声は、オーガを貫通するポウッ、もしくわパウッとかに似た破裂音でかき消されてしまった。
音とほぼ同時に、正面からくる強烈な熱風。
指を動かさないように必死に踏ん張る。
そして、直ぐに眩い光が掻き消え、目に残るのはその光が確かに有ったと、俺の網膜が主張する残像と、どこまでも続くオーガの大穴。
俺の指先から放たれたフォトン・レーザーはオーガ3体を見事に貫通し、遥か遠くの山肌にまで大穴を開けていた。穴がどこまで続くのか俺の視力では確認することが出来ない。
オーガが断末魔の雄叫びを上げながら、光の粒子となって消えていく。
あー、死体は残らないのか……などと薄ぼんやりと考えてしまう。
「ヒ……ヒカルさん。いまのは一体?」
強度近視のスファレとっては、目の前が光ったと思ったらオーガが消えていったようにしか分からなかったことだろう。
俺も、どうやって説明したら良いのか分からない。
「あーー……ははは! 眼鏡士って凄いだろ!?」
凄い適当な事を言ってごまかしておく。
「――はい!」
眼鏡士専用の魔法か何かだと勝手に納得してくれたのか、凄いキラキラした瞳で見つめてくれる。
そんな目で見ないで! 後悔の念に押しつぶされそう!
目の前のオーガが完全に消えたその時。突如俺の頭のなかでファンファーレが鳴り響く。
【パパパパッ、パッパッパー レベルが1上がった 体力が上がった】
「お、レベルアップの概念も有るのかこの世界」
【パパパパッ、パッパッパー レベルが1上がった 体力が上がった】
俺の呟きを拾ったスファレが応えてくれる。
「あ、レベルアップおめでとうございます!」
【パパパパッ、パッパッパー レベルが1上がった 体力が上がった】
「ああ、ありがとう。何か凄い現実味なくなってくるなー」
【パパパパッ、パッパッパー レベルが1上がった 体力が上がった】
【パパパパッ、パッパッパー レベルが1上がった 体力が上がった】
って……。
【パパパパッ、パッパッパー レベルが1上がった 体力が上がった】
いつまで上がんだよ!
◆正視
水晶体が無調節状態の時、無限遠からの光が網膜に焦点を結ぶもの。
両目とも正視の人は結構少なかったりします。
成長の過程でも変化しますし、左右同じ度数になることも希な為です。
自身が正視だと思っている方の大半は遠視の場合が多いです。
◆近視
無限遠からの光が網膜の前で焦点を結ぶもの。
勉強のし過ぎ、老眼になりにくいなど、様々な迷信を生み出した目です。




