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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
4章 犠牲者は追手に
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60話 林を抜けて

 林の中を進むメル達は恐ろしいほど順調にリシェスへと近づく……

 その事に不安を感じていたメルだったが、果たして彼女の不安は杞憂なのか?

 それとも――

 馬車での旅は順調に進み、早四日。

 林の中を進んでいた馬車は今、草原を走っていた。


「曇ってきたな……でも、もうすぐ、リシェスだし、雨が降る前には着けそうだ」

「は、はい!」


 メルはカルロスの言葉に緊張をしつつも答える。

 それもそうだろう、少し前まではドリアード達に周りを警戒してもらうことが出来た。

 だが、今はそれも意味が無く……


「な、何で私だけ……」


 メルはエスイルと共に馬車の中で座っていた。

 他の仲間はと言うと外で警戒しているのだが……


「だ、大丈夫かな? 変身(トランス)とか透明化(クリアトランス)は一部の人しか……でも、もしかしたら」

「メ、メルお姉ちゃん、落ち着いて?」


 メルが馬車の中でおろおろとしているとその様子を見てエスイルはそう告げる。

 弟にまで気を遣わせてしまった、そう思ったのだろうか、耳と尻尾を垂らした彼女は溜息をつき、外へと目を移した。

 そこには先ほどまで彼女達が通っていた林がどんどん遠くなっていく光景が広がっており……


「ん?」


 彼女は違和感に気が付いた。


「どうしたの? お姉ちゃん?」

「いや、えっとね? あれ?」


 何故か景色が歪んだ気がしたのだ。

 目の疲れだろうか? メルはそんな事を思いつつも先ほど歪んだ場所を睨み――


「シルフ、あそこ何か居る?」


 相棒である小さな少女へと声を掛けた。

 彼女はメルの頭の上に乗っかると――


『ん? んー……』


 っとどうやら考えている様で……


『なんだろう、何か、確かに居る……けど見えないね、メルが前に使った魔法?』

「それは無いよ……だってあれは姿を消す魔法、元はどうだったか分からないけど……少なくともユーリママが作り直したのは完全に見えないよ……歪むなんて弱点はない」


 だが、メルの見間違えではなく、シルフもそこに何かが居る事を感じた。


「何が来るの? お姉ちゃん」

「大丈夫、こっちに来て……」


 その事に不安を感じつつ、メルはエスイルを抱き寄せようとすると――羽の羽ばたく音が聞こえ慌てて振り返る。


「鳥?」


 そこには鳥が一匹、どうやら馬車の中へと紛れ込んできたのだろう……

 そう、思いたかったメルだが、それがぐにゃりと身体を変え始めたのに気が付くと――


「――っ!! 我らに天かける翼を! エアリアルムーブ!!」


 咄嗟にエスイルを抱えると魔法を唱え――馬車の中から飛び出る。


「メル!?」


 外に居るリアス達は驚き彼女を見上げ――


「中に何か……誰か居る! 外にも見えにくいけど……追われてる!!」


 彼女がそう叫ぶと馬車の中からは一人のフードを深く被った女性が現れ、その瞳を歪ませると――

 メルを睨み、口元を動かした。


 ――――魔法!?


 その事に気が付いた彼女だったが、対策しようにも間に合わず……

 仲間達も馬車の中へと今駆け寄ろうとしている最中――


「ディ・スペル」


 それを良しとしたのだろう、女は最後の言葉だけをやけに大きく口にすると、ナイフを一つメルの方へと投げる。


「――きゃぁああ!?」

「うわぁぁああ!?」


 魔法による浮力を失った彼女とエスイルは当然地へと向け落ちて行き――


「ぁああ――ぐぅっ!?」


 投げられたナイフを避ける事は叶わず、メルの身体に突き刺さった。


「――なっ!?」

「お、おい!? 何が起こってる!! ひぃ!?」

「…………」


 経った一瞬、少女はそれだけの時間で地へと落ち、赤い血を流す……


「メルお姉ちゃん?」

「メル……?」


 呆然とするシュレムと姉を起こそうとするエスイルは状況が飲み込めてないのだろう……

 そんな彼女達をあざ笑うかのようにゆっくりとした動作で馬車から降りた女性は顔を歪ませ――


「これで厄介な奴は消えたわけだ、さてと――」

「――――っ!! ライノ! メルの傷を!! シュレム! ぼさっとしてるなそいつを押さえろ!!」


 リアスは動かぬ仲間達を見て、現実へと戻ってきたのだろうか? そう叫ぶ――が……


「黙ってなよ…………リアス」


 女性はやはりゆったりとした動作でフードを取り払う……その素顔は彼と何処か雰囲気が似た幼い少女。


「っ!! ライノ――急げぇええええ!!」


 彼女の顔を見て絶叫に近い声を上げるリアス――だが――


「だから、うるさいって……それよりもライノってこっち?」


 いつの間にか少女はライノの方へと近づいていて……手には小ぶりのナイフを持ち――


「…………」


 徐にそれを振るうと、辺りには金属同士が当たる音が鳴り響いた。


「ふぅん……」

「……っ」


 その音はリアスの針を彼女のナイフが弾き落とした音――

 リアスは攻撃を防がれたからだろうか、顔を歪ませ少女を睨む。

 だが、少女は可愛らしい笑みを浮かべると――


「あんたさ、落ちこぼれなんだから、わたしに敵うと思ってるの? っていうか、何かのアクセサリーだっけ? それ渡してくれたら見逃してあげるよ」


 ライノの首筋にナイフを当て……そう告げる。


「……あ、あら……随分積極的ね?」

「うわぁ、気持ち悪い男なのに何その喋り方」


 いつもであれば、その発言に怒っていただろうライノは引きつった笑みを浮かべたまま固まり――

 少女は抵抗できないと確信を得たのだろう……リアスへと告げる。


「ねぇ……早くしてよ。わたし次の仕事に行きたいの、もっと、もっと……人を沢山殺しても怒られない仕事に……」

「そんなんだから、師匠に見限られるんだろ……リリア……」


 リアスはそう口にしつつ、鞄へと手を伸ばす……

 だが、その言葉が気にくわなかったのだろう、少女は顔を歪ませた。


「ぁあ? あんなクソ婆しらないよ? あんたこそ弱っちぃ癖にいきがって……その結果――」

「お、おい……メル? メル!!」


 そして、憤りを言葉で表せているとふとシュレムの声が響く、彼女はその声を聞き――


「ハハ、アハハハハハハハハ、その子はもう駄目だよ? 使い物になんない! だって一番危険だって言われたから一番初めに私が狙ったんだもん、でも……その割には弱かったね」


 高笑いをしそう告げる、リリアと言う少女に対し、リアスは口角を上げた。

 彼女の言葉が嘘だと気が付いたからだ……


「どうだかな……」

「……はぁ? どうだかって何がよ!」

「ならなんでライノを止める? 死んだなら天族(パラモネ)を気にしなくても平気だろ? 恐らくメルはナイフが当たる前に身体を逸らした……致命傷には至ってない」


 辺りに響くのはリアスの声――だが、その事実を知るのは恐らくは本人達だけだろう……

 彼が言うのはあくまで予想なのだから、しかし……


「お前は腕が良いからな、毒を使わない……だけどそれじゃ、一撃で急所を狙い、確実に殺せなきゃ……意味が無いんだよ、前のメルだったらそれでも十分だったはずだけどな」

「は、はん……なら、あそこに倒れてるのはどう説明する?」

「図星だな、声が震え始めた……それとやっぱりお前は見限られて当然だな」


 呆れた顔を浮かべ溜息をつくリアスはゆっくりとした動作で鞄から新たな針を取り出し――


「っ!! こいつがどうなっても!!」

「殺しを楽しむのは勿論、暗殺するなら姿を見せるのは良くないな、後、観察力も足りない……」


 ニヤリとほくそ笑んだ。

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