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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
最終章 運命を乗り越える者達
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465話 黙秘という選択

天族(パラモネ)ごときが、私に勝てるとでも? くだらない』


 武器を構えたエルフはその場から消え、気が付くとライノ目掛け刃を振り下ろしている。

 リアスはギリギリのところで樹木の剣をナウラメギルではじくが、すぐに水の盾からほとばしる水流に襲われた。

 しかし、それはナトゥーリッターを持つシュレムによって守られる。


『ほう、中々にやっかいだ……』


 駆けてくるメルへと目を向け風の衣から突風を吹かせ、ひるませると樹木の剣をメルへと向けるエルフ。

 そのままメルから倒すつもりなのだろう。

 今、彼女にとっての脅威はエルフの力を持つメルのはずだ。


『ならやはり、一人ずつ……』


 そう言って構えた剣は木々が成長するように伸び始め――。


「させないわよ?」


 それは突然砕けた。


『――な!?』


 彼女は優先すべき順番を見誤ったのだ。

 そう、先程の言葉をただの天族の戯言だと思わなければ違っただろう。

 砕け、塵になっていく自身の剣を見つめ呆然とするエルフはようやく事態を飲み込み新たな武器を生み出そうとした。

 しかし、そのわずかな隙はメルにとっては十分すぎる物だった。


「シレーヌ!!」


 水の精霊の名を呼び、剣を構えたメル。 

 アクアリムからは水がほとばしり、それはやがて刀身を包んでいく――。

 先程、エルフがやろうとした事をしっかりとメルは視ていたのだ。

 だからこそ、それを見たメルはアクアリムでも同じ事が出来ると考えた。


『――ただの人間が!!』


 エルフはそれでも人を侮っているのだろう。

 水の盾を構え、新たな水の精霊の力を使い、メルの水の巨剣をも取り込もうとした……。

 しかし、もうすでに時は遅いのだ。


「――っ!! リアス、ナウラメギルを!!」

「ああ!!」


 本来なら弱点である火の属性の武器を持つリアスの名を呼んだ理由。 

 しかし、それには理由があった。

 水を吸収する性質のある武器を持つシュレムでは駄目なのだ。

 だからこそ、リアスの名を呼びリアスはそれに答えるようにナウラメギルから炎を生み出した。


『なるほど、火で蒸発させる気か? しかし、水蒸気もまだ操れるぞ?』


 そして、エルフの言葉を聞きメルは表情を変えず――。

 ()()()()()()()()姿()()()わっ()()()()へと目を向けた。


「フラニス……ううんイグニス!! そしてアリア、フアル……三人共力を貸して!!」


 炎をあしらったかのような服を身に着けた活発な精霊はナウラメギルへと触れるとその火力を上げる。

 すると水の盾とアクアリムから生まれた水を蒸発させた。

 しかし、同時にナウラメギルの火も消えてしまい……イグニスはつかれたのかくたりとしてしまった。

 メルは心の中で謝りつつシレーヌにアリアとフアルへと目を向ける。

 このままではエルフの言う通り、水蒸気を操られてしまい意味がないのだ。

 彼女達はは部屋の中に冷気の突風を吹かせ、水蒸気を冷やす。

 再び水へと戻ったそれをシレーヌは見逃さずに集め形にしていく……そしてフアルにより氷漬けにされたそれをエルフへと向かってアリアが風で飛ばした。


『なるほど……確かによく考えられている』


 エルフは驚きつつもそう言うとほくそ笑んだ。

 同じく氷の槍を作った彼女は精霊達の作った氷の槍へと当て砕く。

 メル達の策はいとも簡単に防がれた。

 ……かに思われた。

 にやりと笑うエルフはシュレムの持つ盾により殴り飛ばされ、続きナウラメギルを持つリアスにその胸を貫かれた。

 エルフは突然の事に対処すらできなかった。

 しかし……。


『人と同じだと思ったか? 私はとうの昔に人ではなくエルフとなった、心臓などない……何をしても無駄だ……』


 エルフはその胸に剣を突き立てられても血液すら流さない。

 勝てるわけがない。

 誰もがそう思う状況で……メルは問いかけていた。


 どうすればいいの?


 それは己の中に溶けたエルフへの言葉だ。

 答えてくれるわけがない。

 だが、自然と頭に浮かんできたことがあった……。

 まるで自分自身が体験した事の様に思い出したと言ったほうが良いだろう。


 ここは、あのエルフが目覚めた場所――。

 ううん、眠っている場所! そして、それを開けるには……力が足りなかった? そうか……だからは私に自分自身を……。


「心臓が無いわけじゃない! 貴女はエルフじゃないから……」


 そうエルフへと告げた。


「エルフは一人だった、貴女を助ける為にエルフと同等の力を与えただけ……エルフと呼ばれてはいるけど本物じゃない! エルフは貴女の心臓は無いなんて一言も言ってない!! 嘘をつけないから黙ってたんだ!」


 メルはそう言うとエルフの記憶をたどる。

 人間からエルフへと変わった少女。

 その際に彼女から切り離された物……。

 それの在処はメルは知っていた。

 いや、メルが知っていた訳じゃない、たった今知ったのだ。


 彼女さえも知らないその場所は……。


「たった今戦ってるこの場所」


 メルはそう言うと仲間達へと目を向ける。


「お願い皆もう一度武器の力を使って!! 皆の武器が必要なの、此処の部屋の中心に!! 私が……封を解くから」


 そう、エルフが精霊の武具が必要だといった理由。

 それはエルフ本人の記憶のお蔭で理解することが出来た。

 リアス達はメルの言う通り、武器の力を解放しようとする。

 しかし、エルフはメルの考えに意味があると察したのだろう。

 そして、それは自身にとって不利だと思ったのだろう、焦りを見せた……。


「あら、させないわよ?」


 ライノによって彼女の足元が崩されそれは敵わなかった。


『この! ただの弱小種族が!! お前さえ!!』

「そう、アタシさえいなかったらメルちゃん達は倒せたのに? それもうアタシを弱小種族とは呼べないんじゃないかしら?」


 ライノは淡々とそう言うとエルフから決して目を離す事はしなかった。

 彼自身理解している。

 ここで目を離せば自分が殺されてしまうだろうことを……。

 そして、それをだれも望まない事を……。

 だからいつでも身を守れるように彼はエルフから目を離す事はしなかったのだ。

 そして、彼の生んだ隙はメル達にとって封を破るに十分な時間だった。

 部屋の中心へと精霊の力をぶつけると其処には大きな扉が現れる。

 メルはエルフの記憶をたどり……。


「ここに眠るは哀れな人の子、我が願い成就されず……いま、裁きを与える」


 詠唱を唱えると扉はゆっくりと開き、中からは人をかたどった彫像が現れる。

 胸の辺りには心臓をかたどった様な物があり、それはゆっくり、ゆっくりと脈を打っている。

 人のそれより、いやどんな生物のそれよりも遅い脈……。

 それを見て顔を歪めたのはエルフだ。


『なんで? 心臓はもうないはず……いや、待て私は聞いてなかった? でも……なんで私が……? 私はここに居る!』


 エルフとはかけ離れた見た目をしている彫像。

 それは嘗ての彼女の姿なのだろう。

 メルはそう理解しながらもアクアリムを――。


『や、やめ――!!』


 その彫像の心臓へと突き立てた。

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