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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
最終章 運命を乗り越える者達
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464話 神を名乗る者

 精霊オプスがこの場に居ない。

 その理由は何故か……いや、簡単だろう。

 エスイルはこの国に居るはずだ……そして、そのせいで危険な目に遭うかもしれない。

 それはエルフにとって望ましい事ではないはずだ。

 そして、精霊オプスはエスイルを守るために必要でもあるはず……なら、何故いないのか?


「……討伐隊! ヒューエンスに向かわせたの!?」


 メルは思いついた街の名を口にする。

 あの街は目の前のエルフにとって忌むべき街だろう。

 何故なら森族(フォーレ)の人権を無視し、エスイルを討伐するために部隊を編成しているという噂がある街だからだ。


「ちょっと待て! そうだとして、どうやって向かうんだよ!! 街が襲われるならいくらあんなくそみたいな街でも放っておくわけにはいかないだろ!?」


 シュレムが叫びメルへと向き直る。

 そう、確かに彼女の言う通りだ。

 ヒューエンスに向かうとしたらエスイルは諦めるしかない。

 いや、その前にエルフに背を向けて無事ですむだろうか?

 無理だろう……。


『どうした? 行かないのか? 結局街は見捨てるのか?』


 そして、エルフはまるで挑発をするかのようにメル達にそう告げる。


『このままでは街は……滅びる。いずれ世界もだ……だが、行けばお前たちのエスイルは居なくなる。さぁ、どちらを選ぶ?』


 答えなど無い選択。

 どちらも選ばなければならないのだ。

 しかし、時間が無い。

 どうすればいい? メル達は迷いを見せる……かに思われた。

 いや、実際以前なら確実にその迷いを見せていただろう。

 だが――。


「そんなの決まってるよ」


 メルはしっかりと前を見据えアクアリムを構える。

 そして、エルフへとその切先を向け告げた。


「エスイルを助けて急いでドラゴン退治する……私達がやるべきことはこれだけ」


 ここまで来たのだ。

 エスイルを置いて行く訳にはいかない。

 だが、あのドラゴンも放置できない。

 そして、迷っている時間はない。

 更には此処を去ればエルフはエスイルを確実に手に入れようとするだろう。

 ならばもう手段は決まっていたのだ。


「そうだな、それしかない」


 ニヤリと笑みを浮かべたリアスもまた彼女の案に乗り、ライノとシュレムも納得したようだった。


『なに?』


 僅かでも隙を見せる。

 そう思っていた彼女は戸惑う事になる。

 しかし、メル達はそんな事はどうでも良いとばかりにエルフに向かって駆け始めた。


『何故だ!? 何故そう簡単に答えを出せる!?』

「そんなの決まってるからだよ!!」


 エルフが焦り振り上げた剣。

 それが振り下ろされた時、シュレムはナトゥーリッターを構えそれを防ぎ叫んだ。


「メルが決めたんだ! だったら迷ってる方が時間の無駄だ!!」


 彼女の言葉に対しリアスは呆れたような声を出すとナウラメギルに焔を灯し斬りかかる。


「そうだな、こっちではもう答えは出てた……。なのにそれを聞かれてもな……」


 そう言いながら、振りぬかれた刃はエルフに届くことなく容易く避けられてしまった。


「それがそんなに不思議かしら?」


 が……エルフが避けた先、そこにはすでにライノが罠を仕掛けていた。

 拘束されるエルフは戸惑うもライノへと目を向け手を伸ばす。

 するとその手からは樹木が現れライノを襲うが、それはメルの水の刃で切り裂き防ぐ事が出来た。


『チッ!!』


 エルフは苛立ちを隠す事無く、メル達を睨む。

 するとリアスはそんな彼女を見て笑った。


「エルフと言うには性格が悪いな?」

「だな! いくら女好きのオレでもこいつは興味が無い!!」

「じ、自覚はあったのね……」


 戦いの最中だというのに緊張のかけらもない仲間にメルは感謝していた。

 自分一人や他の人と一緒だったらここまで頼もしいとは思えなかっただろう。

 だが、彼らは信頼できる。

 信頼できるからこそ余裕があるのだ……。

 そう……彼女達はこの旅を通して来てそれを手に入れた。


「エルフ……私達は本気だよ……剣を収めてドラゴンを消して!」


 メルは剣を構えたまま前へと出てエルフへと戦いをやめるように言う。

 しかし、相手はこの世界の神と言っても良いエルフだ。

 創造主たるエルフはメルの身体に取り込まれたと言っても、目の前に居る彼女もまたエルフなのだ。


『私はエルフだぞ? 最早あれはもう居ない、なら私が神だ……それは分かっているのだろうな?』


 にやりと笑うエルフは樹木の剣を作り出すとそれを握る。

 すると見たことのない精霊が現れ――。


『貴様についた精霊はもう使えん、なら新しいのを作れば良い……そして、アクアリム……水の剣ではこの剣には勝てんぞ?』


 この世界には属性と言うものがある。

 火は水に弱く、水は地に弱く、地は風に弱い。

 だからこそ、水の属性を持つアクアリムでは地の属性を持つ樹木の剣には勝てないという事なのだろう。

 しかし、それはこの世界にする誰もが知っている事だ。


「なら俺が戦うさ……」


 リアスは火の属性を持つナウラメギルを構えメルの前に立つ。

 するとエルフは笑い声をあげ……今度は水の盾を作り出した。

 ならばとシュレムもまた前に出るが今度は風の衣をまとう……。


「そんな……アーティファクトって簡単に作れるものなの?」


 呆然とするメル達。

 それもそうだろう……。

 今エルフが身に着けている武具それはたった今作られた物だろう。

 つまり、必要とあれば彼女は今の装備を捨て新たな装備を得ることが出来る。

 人では決して真似できない事だ。


「まるで錬金術ね……」


 そう思っていた。

 だが……ライノの言葉でメル達ははっとする。

 錬金術は物質を糧とし、別の物質を作り出す魔法だ。

 ならばライノのそれならば対抗出来るのでは? と考えたが……すぐにがっくりと項垂れた。

 何故なら彼は錬金術があまり得意ではない。

 だから作り出せる物も簡単なものか一度見たことがある物ぐらいだ。

 未知の物を作り出せるほど彼は優れた錬金術は使えないのだ。


「どうやって……戦えば」


 エルフは一向に仕掛けてこない。

 向こうから攻めてこないのは敢えて攻めさせてどんな手も通じないと諦めさせるためだろう。

 そう思ってしまったメルは攻める事も出来なくなってしまった。

 しかし――。


「焦らないで……アタシに任せて、突破口を開くわ」


 そう思っていた矢先、ライノは微笑みそんな事を口にした。


「え?」

「錬金術を使って奴の装備を剥ぐわ……錬金術で作るのは苦手だからくず鉄ぐらいにしかならないでしょうけど、崩すのは得意なのよ?」


 ライノはそう言うとメガネを直し袖をめくる。


「さぁ、神様? 覚悟は良いかしら?」


 戦う事が苦手だという天族の青年はエルフへとむけ一歩前へと足を踏み出した。

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