462話 修正の歴史
森の中を進むメル達。
だが、やはりその森の中には魔物はいなかった。
「本当に結界があるんじゃないのか?」
どの位歩いたかも分からないがシュレムがそう言った時メルは不安を浮かべる。
このまま辿り着かないのでは? そう考えてしまった。
「いや、前には進んでる」
「何で分かるんだよ?」
しかし、リアスがそれを否定すると当然シュレムは喰いかかる。
するとリアスは遠くに見える川へと指を向けた。
「あの川、さっきは見えなかった……今までもだ。もし結界かなにかがあるなら景色が変わっていく事は珍しい」
そう結界とは幻惑魔法の一つだ。
だから、もし結界が貼ってあるのなら常に景色が変わっていくのはおかしいのだ。
それだけ強力な魔力を持つ物なら出来るだろうが、それこそメルの母ユーリ並みの魔力が必要だろう。
だが、リアスはそのユーリがどの程度の魔力を持っているかを知らない。
「珍しいって事はあるんじゃないか」
「でも、そうするにはユーリママぐらいの魔力が無いと駄目だよ」
だが、その魔法についてはメルの方が詳しいのだ。
当然母ユーリの事も含めてだ。
だからこそ、リアスの話は信憑性があった。
「とにかく進めてはいるみたいだし行ってみましょう」
ライノの言葉に頷いたメル達はリアスを先頭に前へと歩いて行く……。
そしてようやく開けた場所に辿り着いた。
そこに会ったのは石造りの人工的な建物。
エルフの祠と言われる場所だろう。
「あれが、そうなんだ……」
メルははやる気持ちを抑え注意深く観察をする。
どうやら周りに魔物はいないみたいだ。
だが、他にも気になる事があった。
「ここは一体……」
いくつもの杭のような物が撃たれたそこは一体なにに使われていたのだろうか?
そして、祠とは言われているがその祠は大きすぎる。
一体誰が作ったのだろうか?
最近ではない事は確かだった。
苔は生え、所々石が欠けているのだ……。
「行ってみよう……」
だが、その場に待機していても何も変わらない。
メル達は一歩前へと出る。
大きな祠はぽっかりとその入り口を開けており、メル達はランタンに火をつけるとその中へと入っていく……。
中は驚くほどひんやりとしていた。
だが、そんな事は最早些細な事だ。
この先にエスイルが居るかもしれない、彼女達は幼き少年を助ける為に祠の中を進んだ。
そして階段を降り前へと進むとやがて大きな扉へと辿り着いた。
この奥に居るのだろうか?
扉を開け、中へと入ると……。
「なに? これ……」
メルは思わず口にした。
そこに会ったのは古い絵だ。
その絵はまるでエルフが人を殺しているようにも見えた。
一体どういう事なのだろうか? 何も知らなかったらそう思っていただろう。
「これ、まさか……今までの?」
そう、それは今まで何度となく繰り返されて来た修正の歴史だったのだ。
『人間は――』
祠の中に響く凛とした声。
エスイルの声ではない。
女性の声だ……そして、この場に居る女性。
その主を予想しメル達は構えた。
『人間は実に愚かで未完成な種族だ』
彼女はそう言うと、カツンカツンという音と共にメル達に近づいてくる。
「エルフ……!!」
そして、その姿をメル達の目の前に著した。
間違いない、そのエルフは嘗てメル達が対峙したエルフだった。
彼女はメル達が見つめていた壁へと手を当て昔を懐かしむかのような表情を浮かべる。
『どんなに文明を発展させても、結局辿り着く場所は同じだ……何故自ら崩壊を望むのか』
「貴女も元は人間だって聞いた! なのになんで――!」
この世界を壊そうとするの?
メルはそう尋ねようとした。
しかし、その質問は彼女にとって許しがたいものだったのだろう。
メルを睨み――憤りを隠す事無く見せたエルフは叫ぶ。
『私をお前達と同じにするな!!』
「………………」
『分るか? 私は世界の存命の為に殺されかけた! 実の親にだ……自分の身可愛さに助かる保証もなんの確証も無いのに私は命をエルフに差し出せと言われたんだ!! 当時は信じたさ、だがそんな事で世界を救う事は出来なかった』
彼女はそう言うと……。
『その世界は滅びたよ、そして人間は消え、私はエルフになった』
彼女はそう言うと笑みを浮かべている。
悲しくてそれを隠す為ではないのはメル達にはすぐに理解出来た。
「だから今回も同じようにすると言うのか?」
『ああ、そうだ、だが今回はいつもとは違う……世界を存命させるために動く者も居たそれがお前達だ』
だからメル達は助ける。
そう言いたいのだろう、だがメル達はそれを納得する訳にはいかないのだ。
「そんなの駄目だよ、私達は確かに精霊を助ける為に此処まで来た。だけど……自分達だけが生き残りたい訳じゃない!!」
「ああ、そうだな、とにかくお前は早くエスイルを返せよ!!」
メルの言葉に賛同したシュレムは盾を構えエルフを睨む。
するとエルフは溜息をついた。
「そう言えばエスイルちゃんは何処? ここに居るのよね?」
ライノもまた彼女を睨み唸るような声で尋ねた。
『ああ、神子はちゃんと匿ってある……ここにもいる。しかし、少々強情で言う事を聞いてくれないんだ』
彼女は困った様な口ぶりでそう言うとメル達を再びにらみ。
『メルお姉……お前達が助けに来ると信じてる……困ったものだ』
「――っ!!」
その言葉はメルにとって嬉しい言葉だった。
いや、寧ろまだエスイルが戦っていると確信できた。
確かにエルフはメルお姉ちゃんと言いかけたのだ。
エスイルと同化をしているエルフがだ……つまり、彼女はエスイルに引っ張られている。
だからこそ、本人と合わせることを避け、メル達を始末するためにこの場にたった一人で出てきたのだろう。
「そう、だから今度は私達が邪魔になったんだ?」
そして、確信をつく為に彼女はそう問う。
それに対しエルフは何も答えなかった。
「さっき私の事をメルお姉ちゃんって言いかけたよね? このままだとエスイルが勝つんだ。だから、貴女は私達が邪魔になった」
今度は具体的に話す。
すると彼女は皮肉気に笑い……。
『何を勘違いしている。確かに誤算だった……だけど、些細な事私はお前達を何時だって消せる』
そう見下すような視線で言うと彼女はその手に闇色の剣を握るのだった。




