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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
最終章 運命を乗り越える者達
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459話 犠牲と目的

「ちょ、ちょっと待って!」


 迫るエルフにメルは慌ててそう答えた。

 すると首を傾げるエルフ。

 だが、取りあえずは止まってくれたようだ。


『どうしたのですか?』

「どうしたのって言われても何をする気?」


 何をされるのか全く分からない。 

 それではメルが不安がるのは当然だろう。

 しかし、それは人間の感性であり、エルフである彼女はそれが分からなかった。


『説明が必要ですか? 先程力を与えると……』


 困惑するエルフに対しメルもまた戸惑う。

 自分がおかしいのだろうか?

 そう思いつつ仲間の方へと目を向けると……。


「どうした? メル」


 リアスは少し不安そうな表情でメルの元へと近づいて来た。


「力をくれるって言うんだけどどういう風な物なのか分からないの」


 メルがそう答えると彼はエルフの方へと目を向ける。

 その瞳にはやはり不安があり……。

 それを見たエルフは溜息をついた。


『分かりました。では説明しましょう』


 ようやく彼女が何をしようとしているのかを口開く。

 それは驚くべき事だった……。


 エルフはメルの中へと入り込み、そしてメルは力を得るというのだ。

 だが、それではエスイルを支配するエルフと何も変わらない。

 メルはそう思い。


「私達を騙したの?」


 とエルフに問う。

 するとエルフは首を横に振った。


『いいえ、貴女は既に闇と命以外の精霊を従えました。そこに私の力を加えるだけです。意識は貴女のまま』


 その言葉を聞くとメルはほっとしたが、すぐに疑問を浮かべた。

 意識が自分のままだとしたら、彼女の中に入ったエルフはどうなるというのだろうか?

 メルはそれを問うと、彼女はゆっくりと瞼を閉じた。


『いずれ、消えるでしょう』

「へ……?」


 それは予想していた事でもある。

 だが、はっきりとそう告げられるとは思わなかったのだ。

 だからこそメルは戸惑い……もう一度問う。


「じゃぁ、事が済んだら離れるんだね? それはどうやって……」

『それは無理でしょう』


 帰ってきた言葉は彼女の予想とは違うものだった。

 交わる事は出来る。

 だが、離れる事は出来ない。

 メルはそうと知り……。


「じゃ、じゃぁ私はどうすればいいの?」

『貴女は何も変わりませんよ、今まで通りです』


 そんなの違う!

 メルは思わず叫びそうになった。

 エルフはこの世界の神とも言っても良い、そのエルフがメルと同化をする。

 それは許される事ではないはずだ。

 メルは案内をしてくれた村人へと目を向けると彼はゆっくりと目を逸らした。


「知ってたの?」

「ええ……」


 彼は否定する事無く、メルは困惑する。


「どうしたんだ、メル? 何でそんな顔をしているんだ?」


 だが、肝心の話は仲間達には聞こえない。

 メルはその一つ一つを丁寧に説明をした。

 すると言葉を失う仲間達。

 それもそうだろう……。


「じゃぁ、エルフの代わりは誰がするんだ?」


 何気なくつぶやかれた言葉にメル達は黙り込む。


「まさか、メルが……?」


 そう言われてメルはハッとする。

 確かにエルフと同化し、力を得るのであればエルフと同じではないか?

 そう考えたからだ。

 だが、エルフは首を横にふり……。


『貴女は貴女のまま……精霊になる訳ではありません』


 なら尚更気になるのは……。


「この世界はエルフが居なくなるって事?」


 そう、これから戦うのもエルフだ。

 だが、エルフを倒す為にエルフをメルが取り込んでしまえば当然この世界に居るエルフは居なくなってしまうだろう。


『そう、なりますね』

「そんなの!!」


 神を失った世界はどうなってしまうのだろうか?

 メルはそう思い彼女へと詰め寄りますが――。


『そのための神子(貴女)達なのですよ……』

「え?」


 メルはその言葉を聞き、どういう事かと考え込んだ。


『貴女達神子は精霊に活力を与える者……精霊の命を司る者……もう、私の役割などこの世界にはなかったのです……ただ、最後の役割として貴女達人間の為に……』


 彼女は遠くを見るような目をし……ゆっくりとメル達へとその視線を向けた。


『さぁ……メアルリース……貴女は貴女のなすべき事の為にこの力を受け取ってください』

「……そんな」


 メルは迷った。

 だが、拒否をする権利は無いとでも言うのだろうか?

 エルフはそれ以上、何も説明をすることなく……メルの中に溶けるように消えていくのだった。


「なんだ、なんだよ今の……」


 シュレムはそれを見て呆然としていた。

 リアスもだ……。


 ライノもまた、メルを心配し近づく……。

 ただ一人、メルだけは自分の内側にある暖かい何かを感じ取り、涙を流した。

 彼女の思い出が流れ込んでくるわけではない。

 ただただ、自分の目的のため精霊であるエルフを犠牲にした。

 その事が辛かったのだ。

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