458話 森族の使い
目の前まで歩いて来た森族は頭を下げる。
それを見てメルは困惑していた。
「え? あ、あの……」
彼らは困惑するメルを見上げるように顔だけを上げ――。
「メアルリース様でしょうか?」
「ふぇ!?」
突然名前を呼ばれたメルは変な声をあげた。
そんな彼女をまるで守るかのようにリアスは前へと割り込み……。
「なんの用だ?」
と唸るように口にすると……。
「これは失礼しました……貴方はリアス様ですね?」
そう言った男は駆け付けてきたシュレムへと目を向け……。
「そして、シュレム様、ライノ様」
一人一人の名をあげていく……。
そして、最後に再びメルへと目を向けると、微笑み。
「そして、メアルリース様、貴女達をお迎えにあがりました」
深々と頭を下げた。
当然メルは何の事だか分からず困惑し……。
リアス達もまた首を傾げている。
一体、目の前の人達はなんだというのだろうか?
「エルフ様より、使いとしてきましたヴァルと申します……」
「エルフ!?」
メルは驚き思わずその名を口にする。
すると彼は頷き……。
「ええ、エルフ様です……」
「何だってエルフがオレ達に用があるんだよ! 良い方のやつならメルに何かを伝えて消えたんだろ!?」
シュレムは疑っているのだろう、彼らを睨み威嚇するように少し怒った声を出した。
それに対し、リアスは手で制するような動きをすると……。
「何かエスイルを助ける手があるって言うのか?」
彼へと問います。
すると彼は首を横にふり……。
「私はただの使い、捕らわれの神子の事は聞いておりません……ただ……」
彼の続く言葉にメル達は黙って言葉を待つ。
すると彼はゆっくりと口を開き……。
「もう一人のエルフ、それに関する話があると言われていました」
「……そう、なんだ」
メルは考え込むように顎に手を当てると……仲間を見渡します。
彼らはメルと目が合うと頷き、メルもまた頷くと……。
「分かった、連れて行って、でも精霊に色々調べてもらってるから……」
「畏まりました、それでは精霊に村の場所を教えましょう。どうぞ……ついてきてください」
彼はメルの返事に満足そうに頷き、前を歩く……。
メル達は彼の後を歩きはじめた。
「これで何か助ける手掛かりが見つかれば良いが……」
「きっと大丈夫だよ」
メルとリアスは短い会話をし、目の前を歩く森族を見つめる。
丁寧な物腰、そしてその瞳からは敵意などは感じられなかった。
今は信じるしかない。
そう思い彼の後を追う……。
彼は道なき道を進む。
だが、魔物が現れる事も無くメル達は疑問を浮かべた。
「あの……」
「最近は彼らが魔物を討伐しますので……」
そう告げた彼は振り返ると……。
「我々としては恐ろしい反面、驚異の対象が変わっただけとも言えます」
「そ、そうですか……」
そうは言ってもここまで魔物が居ないのは珍しい……。
メルはそう思ったが、彼は嘘を言っているように思えない。
彼の後を更について行くと……彼は森の中へと入り込む……。
「森か……」
リアスは辺りを警戒するように見回し歩き、メル達も同じように警戒していた。
すると前を歩く彼は振り返り。
「ここです……」
と口にした。
だが、そこには家らしいものはない……あるのは太い幹の木々だけだ。
だが、よく見てみると其処には扉らしきものが付いており、その木々が家だという事が分かった。
「ここが、エルフの村?」
メルは村の中心まで案内されて歩いて行く……。
そこには綺麗な泉があった。
「綺麗……」
まるで心が現れるようなその泉にメルは見惚れた。
『『メル!』』
「シレーヌ、それにアリアも…・・早かったね?」
メルへと飛び込んでくるように近づいてきた精霊に声をかけるメル。
二人の精霊は定位置へと戻ると、それを待っていたかのように泉が光りだし……。
その光は人の形へと変わっていく、その姿はメルは何度も見たことのある姿だった。
「エルフ?」
メルがそう口にすると彼女は微笑み頷いた。
『神子よ、よく辿り着いてくれました……』
彼女はゆっくりとした動作でメルの前へと歩み寄り……その手をメルの頬へとあてる。
『さぁ、もう一人の神子を助ける為の力を授けましょう……』
「メル!!」
それを見たシュレムはメルを助けようと駆け寄るが、リアスはそれを止める。
「リアス!! メルが何かされちまうぞ!!」
「まて、エルフは二人いる!! それにどうも様子が違う……危害を加えそうに見えるか?」
リアス達には精霊の声は聞こえない。
だが、エルフの声は聞こえても良いはずだ……。
しかし、他の仲間に聞こえないという事はエルフが精霊語を使っているからだ。
どういった理由で精霊語で話しているのかは分からない。
だが現状では言葉で理解する事が出来ない以上、メルの言葉かその行動で把握するしかないのだ。
「エスイルを助ける為の力をくれるって!」
だからこそメルはそう伝えた。
するとリアス達の表情は明るくなる。
「そうか、それは良かった!!」
「なんだよ、心配させるなよ!!」
だが、具体的にどういった力なのだろうか? メルが疑問に思っていると……。
『ごめんなさい、もう私には人の子に伝える力すら残っていません……そして、これは私にできる最後の罪滅ぼし……』
「…………え?」
エルフが何かを呟いたと思ったメルは振り返るも、何を言っていたのかは分からず。
『では、始めましょう……』
その言葉に唯々メルは頷く事しか出来なかった。




