454話 迫害される街
周りを見れば首輪をつけた森族や天族。
特に女性が多く、彼女達は仕事なのだろう水を汲んだり、荷物を運んだりしている。
そのほとんどがまともな服を着ておらず。
外から来たメル達を羨ましそうに見ていた。
当然だ。
いくら奴隷と言っても限度がある。
彼女達のそれは最早布……隠す程度の物でしかない。
「何だ兄ちゃん、獣に服なんざもったいない」
「…………」
リアスは突然話しかけられ、不機嫌そうにそちらを向く。
そこに居たのは太った男だ。
脂ぎった顔でメルを見つめてはあざ笑うかのような態度をとる。
「確かに見てくれは悪くないが、獣だぞ?」
「俺は外から来たんだ……それよりも俺は逆に聞きたいがなんで服をまともに着てないんだ?」
リアスがそう答えると男は納得したかのように何度か頷いた。
そして、リアスへと近づくと……。
「獣だぞ、獣は服を着るか? 着ないだろ? ただあれは人に似てるからな、子供に悪影響がある。だから布をくれてやってるんだ」
そう教えてくれた男。
だが、リアスは正直面白くないと考えていた。
メルも同じだ。
だが、メルは此処ではリアスの奴隷。
下手に動けば仲間達に迷惑をかけてしまう。
それは十分に理解しており、ただ黙って耐えるしかなかった。
でも、こんな国があっても良いの?
だって、奴隷って言ってもこれはやり過ぎだよ!
憤りは感じており、メルは思わず顔を尻尾に感情が現れる。
それに気が付いたリアスはすぐに――。
「宿は何処だ? 俺達はもう休みたいんだ」
そう言うと男は指をさし道を教えてくれた。
だが――。
「しかしよぉ、外から来たってんなら教えておくが、獣は一緒に泊まれないからな」
「…………なんでだ?」
予想外の言葉にリアスは聞き返す。
主人が居り、金を払えば奴隷でも泊まることが出来る。
それが宿だ。
だが。此処では違うという。
何故違うのか? そんな疑問を思い浮かべたリアスだったが……。
「いや、獣だからな? 匂いが部屋につくだろう?」
そう言われてしまい。
メル達は理解した……。
この街では奴隷として扱われているというだけではないと……。
そう、ただの獣……家畜同等だと分かったメル達は……。
「そうか、なら外で寝泊まりをする」
「ああ、その方が良いかもな、それだけ見た目が良い奴隷は外に置いておいたら森族の方は間違いなく明日居なくなってたぞ」
歯並びの悪い歯をむき出しにして「へへへ」と笑った男は手を振りながらその場を去って行く……。
それをじっと見つめていたメルは……。
「本当にこんな街にエスイルが?」
と疑問を思い浮かべた。
暫く歩くと酒場らしき建物を見つけた一行は中へと入ってみる。
客は魔族だけだ。
メル達は睨まれつつ酒場の中を歩くと――。
「待て待て待て!!」
店主らしき男性はメル達の前へと慌てて走って来た。
「なんだよ」
シュレムが不貞腐れた態度で尋ねると彼は困った様にメルとライノへと指を向ける。
「外の看板見てないのか? 動物は入れない!」
動物と聞いてメルは勿論、リアスも首を傾げる。
メル達の扱いは奴隷のはずだ。
いくら獣だのなんだの言われてもそれは変わらない。
だが、彼は溜息をつくと……。
「確かに見た目は人間だ……言葉も喋れる! だが、毛は抜けるし羽だってそうだ! 食べ物を扱ってるうちの中に動物を入れるな!」
「はぁ? そんな事言っても飯はどうするんだよ!!」
事情が事情だ。
メルやライノの事で怒りたいシュレムも流石に我慢しているようだが、この言葉には食いついた。
それもそうだろう。
「そんなもん餌箱に何か入れて置けば良いだろ? 外に皆繋いでる」
「そうか、なら良い」
リアスは苛立ったようにそう言うと酒場の外へと向かっていき、メル達はそれを追いかける。
よくよく見てみると確かに森族や天族達は外に繋がれており……。
料理とはとても言えないような何かを道具も使わず手づかみで口にしていた。
そんな彼らを遠巻きに見ているガラの悪い人々。
恐らくは彼らを盗むつもりなのだろう。
「気持ち悪い街……」
メルは思わず口にしてしまった。
だが、その言葉はその場にいた仲間達は同意をせざるを得ない言葉だ。
いくら魔族が優遇されていてもこれでは扱いがあまりにも違い過ぎる。
「人を人と思わない街か……」
気分が悪い。
リアスはそう言うかのようにため息をつくと……。
「ここだとメル達に危害が加わる可能性もある。恐らくこの様子だとエスイルも街の中に居るというのは無いだろうエルフが憑りついていてもだ」
彼の判断にメル達は頷く……。
確かに彼の言う通りだ……エスイルも見た目は森族であり、この街では迫害をされるだろう。
また、危険な目にも合う事は間違いない。
「なら買い物をして外で野営だね?」
メルはそう言い、仲間達は頷くと早速食材の買い出しへと向かうのだった。




