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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
最終章 運命を乗り越える者達
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453話 ヒューエンスという町

 メル達は街が見えた所で準備を始める。

 物陰に隠れてライノが作るのは首輪だ。

 そう、街には居るための作戦でもある……メル達がリアス達の所有物と示すのだ。


 実際には違うが、安全に街の中に入るためだ。

 エスイルがその街へと向かっている。

 もしくはもうすでにいる事は分かっている。

 だからこそ、メル達は確実に街の中へと入りたかった。


「これでいいわね」


 ライノが作ったのは見た目こそは皮の首輪だ。

 だが、伸縮性があり柔らかいものだった。

 メルはそれを首に着けると、腕輪を取り外す……。


「ぅぅ……違和感」


 不満をすぐに訴えた。

 だが、それでも取ることはせず。


「悪いな、少し我慢してくれ……」


 というリアスの言葉に頷いた。

 ライノも自身が作った首輪を取り付け、なれない感覚に戸惑ていた様だ。

 シュレムは二人の様子を見てやはり複雑そうな表情を浮かべた。


「これでは入れると良いんだけど……」


 メル達森族(フォーレ)、ライノ達天族(パラモネ)魔族(ヒューマ)の国であるヒューエンスにはそのまま入れないだろう。

 だからこその策ではあったのだが……。

 ふとシュレムがきょとんとした表情へと変える。


「そう言えばオレは良いのか?」

「……は? シュレムは魔族だろ?」


 彼女の言葉にリアスは何を言っているんだ? という風な表情を浮かべた。

 しかし、彼女の言葉の意味を知るメルは――。


「大丈夫だよドゥルガさんは魔族になったんだし、シュレムの見た目はちゃんと魔族だから」


 嘗てメルの母と共に旅をしたドゥルガ。

 彼は元々鬼族(オーク)当時はまだ魔物と言われていた種族だ。

 だが、エルフの恩恵により彼は魔族へと生まれ変わった。

 その為、シュレムが自分は鬼族の子と理解しており、また……自分が首輪を用意されていなかった事に疑問を浮かべたのだ。


「おお! そっか、そうだったな!」

「――?」


 だが、そんな事とは知らずリアスは首を傾げ……。

 ライノはシュレムを心配そうに見つめる。

 後で説明をしよう、メルはそう思いつつ、物陰から身を乗り出し大きな街へと目を向ける。

 そこまでは後もう少し。


「あそこにエスイルが……」


 魔族の国ヒューエンス。

 だが、完全に魔族だけという訳ではない事は知っていた。

 何故ならメル達を襲った二人の騎士はメルを迎え入れようとしていたからだ。

 あれが嘘偽りでないならば……。

 恐らくあそこにも他種族の人権はあるだろう。

 だが、それはあくまで特殊な例だ。


「……大丈夫かな?」


 いくらエルフに憑かれているとはいえ、エスイルは森族(フォーレ)の見た目をしている。

 その事を不安に思いつつ、メルは……いや、メル達は……ヒューエンスへと残り少しの道のりを歩き始めた。






 街の門へと辿り着くとメル達は兵士に遮られる。


「止まれ!」


 それは他の街でも見られる街に入る為の審査だろう。

 これで問題ないと判断されれば後は金を払い街に入れるのだが……。


「それはお前らの持ち物か?」


 彼はメルとライノへ目を向けてそう口にした。

 大事な仲間を物扱いさせられ、思わず顔を歪めそうになるリアス。

 だが、此処でそうしてしまえば意味が無い。


「やけに小奇麗だな?」

「外から来た……他の大陸じゃ綺麗にしてないと宿にも泊まれない」


 それは事実だ。

 汚すぎる奴隷を連れている者は宿に泊まれないことがある。

 それを目にしなかったのはメルン地方では奴隷制度が廃止されており、フォーグでは友好国の為、奴隷は居てもその扱いが丁寧なのだ。

 だからこそ、メル達は汚れた奴隷と言うのを目にしたことが無かった。


「なるほどな、この街には?」

「初めてきた、宿を取って数日休みたい」


 彼はあくまで淡々と答えると兵はじっと彼を見つめる。

 そして――。


「良いだろう、金貨3枚だ」

「お、おいおい、高くないか?」


 その金額に狼狽するシュレム。

 だが彼女に目を向けた兵士は首をゆっくりとふった。


「街の中で奴隷が暴れたら面倒だからな……それと、もし奴隷が少しでも変な真似をしたら観光客だろうと処罰対象だ」


 彼はそれだけを言うと手を差し出してくる。

 早く金を出せという事なのだろう。


「分かった……」


 リアスは頷き、財布の中から金貨を取り出すと兵士へと手渡す。

 兵士はそれをまじまじと見つめ、頷くと……。


「いいだろう、通れ」


 と遮っていた道を開けた。

 態度はいつまで経っても上から目線ではあった。

 かそんな彼に外目を向けつつリアス達に置いて行かれないように歩くメル。


「なんだ? 獣……」

「っ! なんでも、ありません……」



 メルはそう答えると慌てて視線を逸らすのだった。



 中に入ると其処は普通の街とは違った。

 首輪をつけた魔族(ヒューマ)以外の種族……。

 彼らは服と言えないだろう物を身にまとい。

 女性でも最早ギリギリ隠せているぐらいの人もいた。

 中には逃げているのだろう必死に走る奴隷がおり、それを取り押さえる人々……。

 まるで動物を躾けるように鞭で叩く男性。

 そして、泣きわめく奴隷達。


 そこにはメル達が見てきた今までの世界とは全く違う世界が広がっていたのだ。

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