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449話 しょうがの料理

 翌日の食事。

 メルはライノから受け取ったショウガを手に調理室へと立っていた。


「お嬢ちゃん? それで……料理作れるのかい?」

「ええと……」


 メルは料理長に問われ困った様に視線を逸らす。

 消して料理が出来ないというメルではなかったが、初めて使う材料で美味しい物が作れるかは分からなかった。

 すると料理長は笑い。


「分かった分かった! ならその材料を受け取って置こう」

「あ、はい! そうだ、その……見てても良いですか?」

「ああ、いいよ、龍に抱かれる太陽の料理とどう違うか見てみてくれ」


 そう言って料理長は慣れた手つきで料理を始めた。

 メルの手渡したショウガはすりおろさて料理の中へと入れられた。

 そして、料理からは良い匂いが建ち始め……。


「ほう、良い香りだ」


 料理長は感心した声を上げ、味見をする。

 すると――。


「臭みが無い、これは凄いな! まさか薬の材料が料理にも使えるとは!」


 彼は驚きを隠す様子もなくメルの方へと向くと笑みを浮かべ……。


「流石は龍に抱かれた太陽の冒険者だ! 普段からこういったものを?」

「あ、いえ……それはフロム地方の酒場の店主さんに聞いたんです」


 メルは本当は母の発想だとは黙ってそう口にする。

 別に言っても良いのだが、龍に抱かれた太陽では出たことの無い料理だ。

 彼女が初めて口にしたのはブランシュの店での事。

 だからこそ、フロム地方の事を伝えると。


「なるほど、つまり……雪国で重宝される何かがあるのかい?」

「体が温まるそうです」


 正直に伝えると料理長は頷き。

 残ったショウガへと目を向けた。


「それは良いな、海風は冷たい……夜は特に冷えるからな」


 そう言ってぐつぐつと煮込んだ魚へと向き直った。






 そうしてできた料理を料理長とメルは共に机へと運ぶ。

 すると船乗りたちは良い匂いを鼻へと取り込み。


「何かいつもと違うな!」

「ああ、お嬢さんが教えてくれてね、大分味が良くなった」


 そう言うと船乗りたちは料理へとかぶりつく……そして、口の中一杯に魚を入れると……。


「こりゃ美味い!」

「何だ? なんか食べたことの無い味だな!」


 夢中になって食べる船乗りを見てメルもまたテーブルへと着くと……。


「メル、これ美味いぞ! 何処で知ったんだよ!」


 シュレムはそう言いながら魚を口に入れる。


「うまい! うふぁい!」

「こらシュレムちゃん、口の中からにしてから喋りなさい?」


 ライノは行儀の悪い、シュレムを嗜める様にそう言うと、自身もナイフとフォークを魚へと入れ口へと運ぶ。


「本当に美味しいわね、薬の材料としてしか見てなかったけど他にも使える物があるかもしれないわね」

「臭みが無いだけじゃなくて、ほんのりと辛味か? 味付けになるなんてな……」


 仲間達からも絶賛され、メルは少し顔を赤くするのだった。






 食事を終え、メルは甲板の上で海を眺める。

 魔物にも襲われず、平和な海だ……。

 だが、その下にはメルが知らない魔物が潜んでいるかもしれない。

 いや、事実潜んでいる。

 その事をメルは考えつつ、海を見ていた。


「…………」


 その魔物を倒さなければ今後海は安全とは言えない。

 しかし、倒す術はなく。

 また海は広い何処に潜んでいるかなど分からない。


「どうしたら良いんだろう」


 母達ならこんな時どうするのか?

 やはり倒すのではないか?

 そんな事が彼女の頭には浮かんだ。

 だが、それは無理な話だとも彼女は理解していた。

 いくら母達でも海の上では身動きが取れない。

 それでは満足に戦う事も出来ずに船を沈められてしまうだろう。

 だが、それでも母達なら何か方法を考えるはずだ。

 きっとそうだと考えるメルだったが……。


「その方法ってなんだろう?」


 手段までは思い浮かばなかった。





 船は順調に進み大地が見えてきた。

 どうやら船は小さな港町に向かう様だ。


「あれがルーフ?」


 メルは目の前に広がる光景に思わずそう尋ねた。

 すると彼女の疑問に答えたのは船長だ。

 いつの間にか近くに来ていた彼はメルの問いかけに深く頷いた。


「そうだ、あれがルーフ大陸の港だ」


 彼の言葉を聞きメル達は港に立つ人物を見る。

 そこにはやはりルーフの兵士も居る様だ。


「す、素直に乗れるのかな……」


 メルはそんな不安を覚えつつもこの大陸にエスイルがいる。

 助け出して見せると心に誓う。

 そして――。


「エスイルと一緒に精霊を助けないと」


 旅の当初の目的。

 それを再確認するかのように口にするのだった。


「ああ、そうだな、エスイルも精霊も助ける……それが目的だ」


 リアスはそう言うとメルの隣へと立ち、若干面白くなさそうな少女は反対側に立つと……。


「エスイルが優先だ」

「あらあら勿論そうでしょ? ね、メルちゃん」


 そんな彼女を嗜める様にライノがそう口にするのだった。

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