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446話 変わりゆく対応

「ねぇリアス……」


 メルは降ろされた兵士達の事が心配になり、リアスの名を呼ぶ。

 すると彼はメルが何を言いたいのかを察したのだろう。

 首を横に振った。


「あいつらはメルを降ろせと言ったんだ。悪いけど、そんな奴らがメルに何もしないとは言い切れない」

「そ、そうは言っても……」


 やっぱり心配だ。

 メルはそう考えたが、リアスは駄目だと繰り返した。


「……メル、分かってくれ」


 リアスがメルの事を心配してくれているのは分かっていた。

 だからこそ、メルはそれ以上何も言えず……。


「うん……」


 首を縦に振るしかなかった。


「じゃぁ、今日はもう休んでくれ」

「うん」


 メルは消え入りそうな声で、そう言うとベッドに横になり、リアスの顔を見上げた。


「どうした?」

「ルーフの……ヒューエンスの騎士を殺した魔物って……?」


 その質問にリアスは首を振る。


「さっきも言ったが……分からない、見た事も無い魔物だった」


 見た事も無い魔物。

 その言葉を聞くとメルは途端に不安になってしまった。

 何故なら、見た事も無い魔物と言う事は――。


 まさか、まさか……タリムの王の魔物? 日に弱い魔物でも海底なら生き残ってる可能性があるよね?

 でも、あの時は晴れてたし、海面に来たというなら普段から餌を求めてきてたはず……海の中が暗いって言っても近くまで来たら太陽に弱い魔物が活動できるはずがない。

 でも……もしかしたら、もしかしたら……。


 そう、タリムの王が作った魔物。

 キメラと言う合成した魔獣だ。

 それは母の持つソティルの魔法でなければ対処が出来ない。

 それか、祖母ナタリアと母ユーリが編み出した太陽の魔法。

 たった二つしか対処が出来ず。

 また、それを使える人間も限られてしまうのだ。

 

「と、とにかく魔物を倒さないと……」

「とは言っても海の魔物だ。倒すとしても……」


 手が無い。

 彼がその言葉を飲み込んだのが分かった。

 しかし、魔物を放って置く事は出来ない。


「倒した方が良いのは分かってる。だけど、俺達じゃ実力不足だ……メルが精霊の力を使っても倒せるという保証はないし、船を壊されたらそれで終わりだ」


 メルはそれを聞き、黙り込んでしまった。

 確かに海の上ならシレーヌの力を使える。

 だが、リアスの言う通り倒しきれるとは限らない、なによりメルの魔力や精霊力が尽きてしまったら何も出来ない。

 彼の言う通り船が壊され、メル達は敗北するだろう……。


「そうだよね……危険だよね」


 倒すのは無理だ。

 そう思ったメルはせめて母達に手紙を出そうと考えた。


「とにかく、逃げる時はメルの力が必要だ。だから今は――」

「うん、しっかり休んでおくね」


 彼女はそう言いつつもやはり外の様子が気になった。

 かと言って何も出来ない、メルはただただ悲しそうな顔をし……船が出るまでどうにか兵を助けられないか? と考える。

 だが、その対策が思い浮かばず……。

 船は出発し……彼らの故郷ヒューエンスがあるルーフへと向かうのだった……。








 それから船は順調に進む。

 リアスが言う魔物にも遭遇することは無かった。

 しかし、いや……だからこそだろう、メルはあの兵士たちの事が気になったのだ。

 置いて来てしまった兵。

 彼らは無事だろうか? そうは思っても今からでは何も出来ない。

 それに安易に彼らの事を聞く事も出来なかった。

 何故なら、彼らは船の中で評判が悪い。

 恩人を捨てろと言ったことが大きいのだろう……メルには分からない事だったが、どうやらリアス達はメルのお蔭だと言っていた様だ。

 その所為か――。


「おう嬢ちゃん、もう元気なのかい?」

「あ、は……はい」


 メルが船の中を歩くと必ず声をかけられていた。

 それも……。


「あんま無理すんなよ? 嬢ちゃんはどうやら無理をするみたいだからな!」


 と言い豪快に笑う船員。

 彼はひとしきり笑った所でふと何かに気が付き慌て始める。


「っといけねぇ仕事に戻らねぇと!」


 彼は慌ててメルの前から去って行きメルはそれを見送る。

 そう、彼らはメルを見かけると必ず寄ってきて声をかけてくれたのだ。

 仕事よりもメル。

 メルの体調の方が優先事項。

 まるでそう言ってるかのような態度で……。


「何か、変な気分だよ」


 それは嘗てリラーグに居た時の彼女への態度と似ていた。

 しかし、今はちょっと違う事にもメルは気が付いていた。

 それはあくまでメル個人に対しての態度だという事だ。

 母達に対する態度ではない。

 だからこそメルは突っぱねる事も出来ずに困惑してしまった。


「ぅぅ……もう、何でこんな事に」


 人を助ける冒険者。

 それになりたいメルとしては頼られるのは嬉しかった。

 しかし、なんか違う!

 そう思う彼女はがっくりと項垂れ、船の中を歩く。

 するとやはり声をかけられては彼らは仕事へと戻っていく。

 中には……。


「なぁ嬢ちゃんどうだ? 後で一緒に食事とか……」

「あ、あはは……あの、お仕事……」


 なんて言う輩まで現れており、メルは船の人気者にまでなっている。

 いくら精霊が力を使い、助けたと言った所で……それはメルの知らない所で起きた事だ。


 褒められるべきはシレーヌやアリアなのに……。

 なんで、私なの?

 と引きつった笑みを浮かべながら去って行く男の背に手を振ったのだった。

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