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445話 罵声

 揺れる船の中、メルはベッドの上で窓の外を見ていた。

 すると、精霊であるシレーヌとアリアが彼女の傍へと寄ってくる。


「どうしたの?」


 心配そうにメルの顔を覗き込む彼女達。

 メルはそんな彼女達に目を向け、首を傾げた。

 するとメルの声を聞いてほっとしたのか彼女達は笑みを浮かべた。


「ねぇ、なんで魔法を使えないの?」


 メルの言葉の意味は魔力が減っている事が気になったのだろう。

 その事を尋ねるとシレーヌは申し訳なさそうに呟く。


『メルの魔力を使って、その……船を動かしたんです』


 正直に伝えられたその言葉にメルは頷き、納得をした。

 彼女達の力が使われたのなら、自分の魔力が減っているのは当然だ。

 また、体調不良とかでない事に彼女はほっとしたのだ。


「そっか、そういう事なら良いんだ、ありがとう」


 二人へとそう伝えたメルはほっと息をついた。

 まだ痛みはある。

 だが、ライノの薬のお蔭で大分我慢が出来るようになった。

 しかし、薬は薬。

 いずれは効果が切れるだろう。

 メルはそう思い、すぐに魔法で回復したい所だったが……。


 まだ魔力は足りなさそう……。

 もう少し寝ておいた方が良いかな?


 と考え、ベッドに横になった。


 疲れていた事もあるのだろう、彼女はすぐにまどろみの中へと誘われ……ゆっくりと眠りにつくのだった。





 それから暫くして、彼女は目を覚ます。

 傷口がずきんずきんと鈍痛を訴え始めたのだ。

 メルはすぐに魔力がどの程度回復したかを探り……。


「我が友の傷を癒せ、活力を与えたまえ……ヒーリング……」


 と何とか魔法を唱える。

 そして自身へとその暖かな光を向け傷を癒した。

 その魔法は奇跡としか言えない魔法だ。

 今までなかった傷を癒す魔法。

 それにより彼女の傷はどんどんと塞がっていき……。


「ふぅ……」


 痛みが感じない程度の所までは傷は収まった。

 取りあえずメルはほっとし、伸びをする。

 すると船の速度がゆっくりになっている事に気が付いた。


 もうルーフに着いたのだろうか?

 メルは疑問に思いつつ窓の外へと目を向けた。

 だが、メルから見える景色は街並みなどはない。


 港じゃないのかな?


 疑問に思った彼女はベッドから抜け出し、何処に着いたのかを窓から確かめた。


「小さな島?」


 小さなと言ってもそれなりの大きさだ。

 鳥は木の実をついばみんでおり、奥には何かの動物らしきものも見えた。

 なんでこんな所に停まったのだろう?

 彼女が疑問に思っていると、どうやら船から降りる人が居る様だ。


 一体誰が、こんな所に?


 メルは当然の疑問を浮かべ、降りる人達を窓から覗き見る。

 すると……。


「ルーフの兵士?」


 彼らの姿は見間違えるはずがなかった。

 メルが気を失う前まで戦っていたからだ。

 何故この船に乗っているのかは分からないが何があったのだろうと察したメルはふと疑問を思い浮かべる。


 そう言えばあの女性の騎士が居ない。

 その事に気が付いたメルは首を傾げた……すると窓から見つめるメルに気が付いた一人の兵士が声をあげた。


「獣が目覚めている!! このままではこの船も沈むぞ!!」


 獣とは確認するまでもなくメルの事を指すのは理解出来た。

 だが、船が沈むというのは分からなかった。


 でも、この船も、って事は……相手の船は沈んだの? それなら、助けたのは納得できる、けど……。

 なんで騎士が居ないんだろう?


「ルク様を殺した獣め!!」

「殺し?」


 当然メルには心当たりはなかった。

 事実殺しても居ないのだから当然だ。


「どういう、こと……?」

「あの後魔物が出たんだ……」


 聞きなれた声にメルは振り向く……。

 そこにはメルの様子を見てほっとする少年が居た。

 彼はメルへと近づくと窓から離すように手を引く……。


 メルは突然繋がれた手にびくりと反応し、顔を真っ赤にしつつも振り払う事はせず。

 彼に惹かれるままベッドの上へと座る。


「ま、魔物?」

「ああ……騎士はソイツに喰われた。船も沈んだ……俺達はシレーヌ達が助けてくれたんだ……多分、メルの魔力を使って、さ……」


 彼の話を聞き、メルはようやく合点がいった。

 何故自分の魔力が減っていたのか? 何故ルーフの騎士が居たのか?

 それらのすべてが繋がったのだ。

 確かに精霊達が力を使えばメルの魔力は減る。

 だが、メル自身ではないためどの程度使ったら危ないかは判断していても、加減は難しいだろう。

 だから起きた時に魔力が少なかったのだと彼女は考えた。

 しかし、気になるのは――。


「その魔物って?」

「見た事も無い魔物だった……あれは一体なんなんだろうな」


 そう聞かれてもメルはその時、気を失っていた。

 答える事は出来ず困るのだが、彼の言葉から相当の魔物だと考えもした。


「それで、あの人達は?」

「メル達を降ろせってな、俺達は当然だが、船長達が怒って孤島に降ろすことになった……」


 降ろせと言われた事、獣と言われた事に衝撃を受けつつ、メルは窓の外へと目を向ける。

 今の位置からでは何も見えなかった。

 だが、狼の森族の血を引くメルには彼らの訴えだけは嫌でも聞こえたのだった。

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