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444話 船長達とヒューエンスの兵

 メルが起きてからどのぐらい経っただろう?

 それほど時間は経っていないように感じた。

 だが、同時に長い時間を苦しんでいるようにも感じた。


 ただ傷が痛いだけではない船の揺れが辛いのだ。

 衝撃で痛みが増しているようにも思えてしまった。

 メルが永遠にも思える時間を耐えていると……。


「っ! メルちゃん!!」


 ライノがノックも無しに入って来た。

 彼はどうやらメルの様子を確認しに来たようだ。

 慌てて鞄から薬を取り出すとメルへと飲ませる。


「けほっ!? けほ」


 だが、上手く呑み込めず彼女はむせてしまった。

 苦いのだ……。

 今まで飲んできたどんな薬よりも苦く、とろみがあり口の中へといつまでも味が残るため飲みづらかった。


「痛み止めよ、頑張って……」


 ライノはそう口にし、メルも懸命に薬を飲む。

 だが、やはりむせてしまいようやく飲めたのはほんの少しだけだった。

 それでもある程度は効果が望めるのかライノはほっとした様子を見せる。


「……皆……は?」


 メルは騎士に襲われた所までしか覚えていなかった。

 だからこそ仲間達が気になったのだ。


「大丈夫よ……ただ……」


 彼の言葉にメルは不安を覚える……それは当然だ。

 何かあったのだろうか?

 彼の言葉を待つと――。


「良く分からない魔物に襲われてね? その、精霊が助けてくれたみたいなんだけど……」

「精霊、が……?」


 ありえない! とは彼女には言えなかった。

 嘗て同じような事があったからだ。

 それはフロム地方での事だった。


 あの時、私とエスイルは……。


 その時の事を思い出し、もしかしたら同じ事が起きたのでは? と考えた彼女は取りあえずほっとした。

 どうやら仲間達は無事なようだ。


「けどね、ヒューエンスの兵士もこっちに残ってて……今、面倒な事になってるのよ」

「……え?」


 メルは目を丸め彼の話に耳を傾けた。








「話を聞かない奴らだな!!」


 メルとライノが話しているのと同時刻。

 苛立った声をあげたのは船の船長だった。


「話を聞かないのはどちらだ! あの様な獣を放置すればまた魔物に襲われる!! 奴らは獣を狙うんだ!」

「その証拠があるってのか!! あの子のお蔭で俺達は命があるようなもんなんだぞ!!」


 船長がそう叫ぶとヒューエンスの兵は黙り込んだ。

 彼らは証拠が出せない様だ。

 しかし、引くつもりはない様で……。


「即刻あの犬と鳥を海に捨てろ!!」

「人の仲間を動物みたいに言うなよ……動物だったとしても捨てろなんてそんな事を言うな!!」


 彼らの発言に対し明らかな怒りを覚えたリアスは低い声でそう口にした。

 リアスの怒りは最もだ。

 そう頷くのは船乗り達。

 だが、ヒューエンスの兵士達は考えを変える事は無かった。


「なら、我々が実力を持って降ろす!」


 彼らの発言に船長は堪らずテーブルへと拳を叩きつけた。


「うちの客をどうするって? お前ら、誰のおかげでこの船に乗れてると思ってる!」


 とうとう我慢が出来なくなったのだろう、兵士達の方へと近づいた船長。

 対し兵士達は――。


「客? 客だと……!? あの様な獣が客なのか? 家畜を運んでいるのか? 貴様らはその為にヒューエンスに行くのか?」


 この言葉に対して苛立ちを見せたのは勿論リアスとシュレムの二人だった。

 だが、此処で怒っても話が進む事は無い。

 リアスは自分を落ち着かせるように深呼吸をした。

 そして――。


「なら、適当な島でお前らが降りろ……俺達はこの船の客だ。だが、お前らは違うだろ?」

「そうか、では港につき次第金を払おう、それなら客だ」


 リアスの言葉に対し、そう返してくるのは一人の兵。

 聞く耳を持たないとはこの事だった。


「もう良い! お前らの払う金なんか要らん!! 話は終わりだ。客人の部屋に警護を付けろ。こいつらは客で恩人の言う通り、適当な島で降ろす」

「何!? 我々は誇りある魔族(ヒューマ)の――」


 彼らは講義をしたが、最早船長達は話を聞くつもりなどなかった。

 確かに彼らを見殺しにする訳にもいかず乗せてはいる。

 だが、客ではない。

 それは事実であり、また……。


「この船が救われたのはこいつらのお蔭だ。いわば俺達の命の恩人、その仲間を降ろせと言われて降ろすような屑にはならねぇよ」


 彼はそう言うと葉巻を吸い始めた。

 兵士達は納得がいかない様子ではあったが、最早話は通じない。

 そう思ったのだろう……。


「後悔、するなよ……我々に対する侮辱にな

「ああ、恩人を見捨てたなんて後悔はしないような選択をしたつもりだ」


 彼らの言葉に対し、そう言うと船員達も頷き。


「だな、子供を降ろすなんてできっこねぇや」

「ああ、そんなに一緒に居るのが嫌なら泳いでいけばいいんだよ」

「そりゃぁいい! ああ、でもあの魔物だけににゃきーつけろよ?」


 と口にし、豪快に笑う。

 そんな彼らを見てリアス達はほっと息をついた。

 どうやら彼らにはメルを見捨てるという選択肢はない。

 当然と言えば当然なのだが、恐れられている国に対し反発をしてくれるのか?

 そこは心配だった。

 だが、彼らの心配はどうやら杞憂だったようだ。

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