443話 風と水の連携
「何で風を……?」
リアスはこんな状況でアリアが無駄に風を吹かせた訳ではないと気が付いた。
だが、何故風を吹かせたのか?
そもそも、どうやって力を使っているのかが謎だったが……しかし、それでも風は吹いている。
だからこそ、彼は辺りを見回した。
彼が気が付いたからだろうか? 若干風が強まった気がした。
「この風おかしいぞ……吹いているところとそうじゃないところがある、風の先に何かあるのか?」
リアスはそこまで口にして、目の前にある物に気が付いた。
それは蒼い刃を持つ剣だった。
アクアリム……メルが持つ精霊の武器だ。
「アクアリム……まさか、メルの所に届けろとでも言ってるのか?」
彼は疑問を浮かべながらもその剣を手に取るとメルの元へと走った。
何故風の精霊であるアリアが力を使えたのか?
本来精霊は森族が居なければ力を使えない。
だというのに、その力を使いリアスにアクアリムの事を気が付かせた。
つまり……。
「力は使える? 精霊の道具さえ近くにあれば……!!」
リアスはその可能性にかけるとメルとシュレムの所へと辿り着くと――。
「シレーヌ! これで良いのか!?」
姿を見ることが出来ない水の精霊へと問いかける。
それを見ていた二人の精霊は互いの顔を見合わせると頷き合い。
『リアスが気が付いてくれました! これなら……何とかなりそうですね、行きますよ』
『うん!』
彼女達は互いに声をかけ合う。
すると――海水はまるで生き物のように動きだし……。
「――船が動く! 何かに掴まれ!!」
リアスが叫ぶのが早いのか、それとも海が動き出すのが早いのか誰にもわからなかった。
しかし、海はリアス達の乗る船を動かし始めた。
彼らが乗る船はそれなりの大きさがある。
動かすのにも相当な力が必要だろう。
だが、水の精霊であるシレーヌは普通ではありえない速度で船を動かしたのだ。
「な、なんだ!? 何が起きてる!?」
「安心しろ、仲間だ……仲間が俺達を助けてくれてる」
慌てる船員達にリアスはそう言うとメルを見つめた。
彼女は意識を失ってもなお、彼達を助けてくれたようだ。
何故そう思ったのか、それは単純な理由だった。
精霊は彼女の魔力を使い力を具現化している。
だからこそ、今メルは知らず知らずの内に魔力を失っている訳であり、これは彼女の魔力のお蔭ともいえる。
「あの魔物は!?」
「いまの所は追ってくる気配はない、な……」
リアスの言葉にそう答えたのはシュレムではなく、船員だ。
彼は後ろを覗き込むが、どうやら魔物殻は逃げられたようだ。
「……メル」
一同がほっとしている中、一人シュレムは心配そうにメルを見つめていた。
「手当は早いうちに出来たから、大丈夫よ……後は起きた時に自分で回復することが出来れば問題はないわね」
近づいて来たライノはそう言いながら微笑みながらそう口にした。
その言葉を聞いたシュレムはようやくほっと息をついたのだった。
メルが目を覚ましたのはそれから暫く経ってからだった。
「……っぅ」
身体は痛みとだるさを訴え、目を覚ましたものの身を起こす事は出来なかった。
あれからどうなったのか? メルは疑問に思い、辺りを見回したいのだが、やはり自由は利かない。
「皆……は?」
それでも仲間達の安否を確かめたい。
そう思った彼女は何とか首を動かし辺りを確認する。
自分はどうやら船室の中で寝ていた様だ。
「ここ……確か……」
その部屋は見覚えがあった。
その事から彼女はほっと一息をつく……。
ここは確か、乗ってきた船の部屋だったよね。
じゃぁ、皆は……船は無事だったんだ。
そう、その部屋はメルが乗ってきた船の中だ。
ヒューエンスと言う国の船が似ていないという訳ではないだろうが、家具の位置までぴったり一緒と言う訳にはいかないだろう。
「じゃぁ……」
皆はそれに騎士達は? そう思った所でメルは体の痛みを思い出した。
「ぁっ……」
小さな声で痛みと熱さに耐える少女。
だが、一向に引いてくれることの無いそれに我慢できずに……。
魔法で治そう。
そう考えた。
しかし……彼女は気が付いたのだ。
「魔力が……減ってる?」
そう、その身体のだるさにも覚えがあった。
恐らくこれ以上強力な魔法を使えば気を失ってしまうだろう。
つまり、回復魔法は使えないのだ。
「あ、あれ? でも私……」
船の上で魔法を使って戦うのは気を遣う。
だからこそ強力な魔法は使えなかった……魔力には余力があって当然だ。
だというのにメルの魔力が減っている。
それも身体が不調を訴えるまでには……。
「どういう事……?」
メルはその事に疑問を感じ、また痛みに耐えるしかなくぎゅっと瞼を閉じる。
だが、そんな事で痛みは耐えられるものではない。
やっぱり、気を失っても魔法で……。
ううん、駄目だよね……精霊力も減ってるかもしれない。
何が起きるか分からないのに魔法を使うのは危険だよ……。
魔力が勝手に減った以上、精霊力も怪しい。
そう考えた少女はやはり暫くは痛みに耐えるしかないと諦めるのだった。




